「重い問題を乗り越えようとする物語」について。
前からちょくちょく書いているが、自分はカクヨムで美里さんというかたの作品が好きで、興味がありそうな話はフォローして読んでいる。
先日、連載していた「青い夜」が完結した。
この話は、この話単体としてみると(大変申し訳ないが)そこまで面白く感じなかった。
ただ美里さんのこれまでの作品を読んできた自分には感動があった。
「話が前に進んだ!」と思ったのだ。
美里さんの話は同じ元型から派生した話を設定を変えて繰り返していると思っているため、ひとつの作品として読んでいる。(あくまで自分がそういう読み方をしているだけで、ご本人はそんなことは考えていないと思う)
この記事は自分が「青い夜」をどう読んだか、そして読み取ったことから何を考えたか、そこから自分が「ひとつの作品」として見ている一連の作品が何を描いていると思っているかを書きたい。
*かなり突っ込んだ内容の感想なので、途中から有料枠で区切っています。
読み始めた当初、「青い春」の主人公であるタツキに、魅力を感じられなかった。
これがとても引っかかった。
「禁猟区」の主人公の海里がそうであったように、美里さんが本気で(?)このタイプを描いたらその色気は確実に読み手に伝わる。
最後まで読んで、この話は「主人公のタツキが、美形でモテる設定に関わらず、読み手(自分)がまったくその魅力を感じ取れないこと」に最大のポイントがある、と気付いた。
結論から言うと「青い夜」の真の主人公は、タツキではなく「タツキの本命」の清水である。
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