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人が消える風景

2024年9月、「二十四節気 白露」を過ぎても、日中の気温が35度を超える日がでてきましたね。「残暑」という言葉ではなく「酷暑」という響きが体感される日が続いています。

わたしが住んでいる街の駅。
駅前には、普段は多くの人が行き交うにぎやかな通りがあります。
そこには1年を通して、人々の行き交う姿と息遣いがあります。深夜でもちらりほらりと人の歩いている姿が見られ、足音も聞こえます。めったに通りが無人になることはありませんでした。

でも今年の夏。わたしにとって、見たこともない風景に初めて出会いました。

厳しい陽ざしが通りの路面にかかっている時、誰一人、人影がまったくなくなりました。人の気配や息遣いも聞こえない、無人と無音の世界でした。その風景を見た瞬間、軽い立ちくらみのようなめまいを感じました。軽いショックを受けたという感じでしょうか。
「カッ」と風景を強烈に照す陽ざし、湿気を含んだねっとりとした蒸された空気、命の危険を感じてしまうほどの熱気でした。
また、いつもは聞こえているはずの蝉たちの鳴き声もなく、人の気配も感じられませんでした。まったくの無音です。静寂ではなく無音でした。ある意味、異様な風景でした。

この非日常的な違和感のなかで、わたしの心の中にこれと似たような「風景の記憶」が浮かんできました。

それは、季節がまったく逆の「真冬」の風景です。
音もなく雪が降り続いているなか、いつもは賑やかな通りには人影がいっさいなく、青白い街灯が月明かりのように路面を照らしている。人の歩く音や息遣い、気配も感じられない。あまりの静けさで「キーン」と耳の奥が痛くなるような無音の世界。

心の中に、その雪国の風景が。
現実の目の前には、酷暑のなかの無音の世界が広がっている。
現実と妄想が重なり合う不思議な時間でした。

なにげない日常。
五感で感じる世界には、まだまだ出会っていない世界が隠されているのかもしれないですね。

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