見出し画像

【ゲーム考え事】ガチ・カジュアル(競技・非競技)の分離のためのゲーム設計

 筆者の経験・技量・考察不足から、誤った情報を含んでしまっている可能性があります。誤りや不足している情報、ご意見等がありましたら、筆者のTwitterアカウントにご連絡いただければ幸いです。

 以下の文章は全て個人的な見解です。権利者の方々による指摘や、個人的な気付きによって、予告なく変更・削除する可能性があります。


前提

  • 対戦型ゲームにおいて、競技・非競技プレイヤーを以下の記事によるような考えで定義した場合、それらを分離した方がよい、という前提に基づき、それに対して、どのようなアプローチがあるか、という話がメイン。

  • 競技的に極端に寄って、プロシーンを盛り上げることを最重要視したゲームや、非競技的に極端に寄って、ほとんど技量の上達の幅がないようなゲームも存在する。
    これらのように、明確に片方に寄ることが決まっているゲームでは、そもそも本記事のような内容は必要がないと言える。
    そうではない、両者の側面を取り扱うことにしているゲームの話になる。

  • 筆者はあまり運営型のゲームを好まず、限られたタイトルのみをプレイしているし、競技シーンとなるとさらに疎い。
    そのような知見による記事なので、いつもの記事よりも特に網羅性が低いと思われるが、何かのきっかけになれば幸いだ。



概論

 仮に上述した前の記事が正しいと仮定した場合、いくつかの検討事案があると言える。まず、その検討はどのようなものになるのかを考え、その後にそれぞれに関して検討を試みたい。

 主に狭義のゲームを対象とし、特に運営型の対戦ゲームについて考える。これは、これらのゲームがそもそも、競技性が高くなる傾向にある一方で非競技プレイヤーにも人気が出やすく、競技プレイヤーと非競技プレイヤーの交雑が発生しやすい、と考えているからだ。


 これらの対策には大きく分けて、ゲーム運営上の仕組みと、ゲームデザイン上の仕組みに分けられると考えている。

 つまり、ゲームを発売した後に行う施策と、ゲームを開発中に行う施策と考えてもよいかもしれない。

 運営上の問題点としては、競技・非競技プレイヤーが本来はそれぞれの分離された場でマッチングされるべきなのに、それが混じってしまうことであり、どういう状況だとそれが発生しやすいのか、どうすれば解決できるのかというようなことを主に取り上げる。

 デザイン上の問題点としては、そもそも、対戦型ゲームは競技的になりやすいので、すべてのゲーム(試合)が競技的になってしまい、結果として、非競技プレイヤーの居場所がなくなったり、競技プレイヤーと混じり合いやすくなる、というような前提に立ち、如何にして、ゲームデザインによってゲームの過度な競技化を防ぐか、という話を、次の記事にて考える予定だ。

 本記事では、前者であるゲーム運営上における分離の競技・非競技の分離の仕方について考えることにする。


 また、ここでは単にゲーム構造の関係上、このような運営の仕方であれば、そのようなことが発生しやすいだろう、ということだけを単純に示す。実際には、ゲーム運営にはマネタイズの問題が大きく関わることになるし、その方向性によって、ゲーム運営の仕方も大きく変わらざるを得ない。

 ただ、本記事では、そこまでの範囲は扱わず、あくまでゲーム上の設計として、競技・非競技プレイヤーを分離するにはどうすべきかを考える。



事例

競技・非競技プレイにおける報酬の差

 全体として、特に競技側に報酬が用意されていることが多い。

 競技モードによる勝敗でランクが決まり、シーズンが終わる時にランクに応じて報酬がもらえたり、そもそも、個々のゲームの勝敗自体に利益があったり、公式の大会で上位に入賞すれば、報酬がもらえることもある。

 『勝利』『上達』に報酬系が用意されている場合、それは競技プレイに対する報酬であると考えることができる。

 公式が直接的に用意していなくても、たとえば、販売店のイベントや市井の大会などで、勝利に紐づく報酬が用意されていることも多い。

 非競技勢であったとしても、それがあるために、競技的な環境(たとえば、ランクマッチなど)を選んでしまうことも多いだろう。

 なにせ、カジュアルマッチでは何の報酬も得られず、ランクマッチでは報酬が得られるとしたら、(もちろん、全体の報酬系の設計にはよるが)勝率が低くとも、ランクマッチの方が少しでも得をすることになる。

 また、このようなシーズンランクマッチがあり、それによる報酬が大きい場合には、それを得たいと思うプレイヤーが多くなるはずであり、そのゲームの攻略においても、そのような情報が多くなる。

 結果として、非競技の場所として用意された場所も、競技勢による準備の場所のように機能する可能性がある。


 解決策としては、競技における報酬を少なくすることだろう。

 大会などは、そもそも、競技性の高いプレイヤーが集まりやすいので、大きな問題にはならないが、長期に運営されるゲームで、日々の小さなゲームにまで上記のような報酬を与えてしまうと、このような交雑が起こりやすいのではないかと考えている。

 競技ゲームに報酬を用意するにしても、競技性の高いイベントに限定し、日々のイベントやゲームには勝敗に寄らない報酬を用意すべきだろう。

 ゲームの勝利数に比例して報酬を渡すのではなく、プレイ回数で渡すような形や、勝敗は関係なく、単に抽選を行って、それによる報酬にするようなやり方が考えられる。

 たとえば、「フォートナイト」では、ランクマッチが導入されているものの、それによって得られる報酬は少ない。それよりも、シーズンパスにおける報酬がゲームのメインとなっており、これは経験値のようなもので得られるものであり、カジュアルマッチで十分に得られることができ、非競技プレイヤーが報酬を目当てにランクマッチをプレイする必要性はほぼない。(もちろん、シーズンパスにおける課金がメインという課金体系の影響もある)

 このような場合、非競技プレイヤーはわざわざ競技的なモードを選ぶことはなく、非競技モードのままだろう。

 競技プレイヤーにとっては、競技モードにおけるランクが可視化され、それが上昇するというだけでも十分な報酬として機能すると考えているので、それをゲームから強い報酬を日々与える必要はなく、競技的なイベントなどで短期的に与えるだけでも十分なプレイヤーが多いのではないか。



競技モードへの動線

 どの程度、競技モードが主軸になるように設計されているのか、というような点も、競技プレイヤーと非競技プレイヤーの交雑に関連すると感じる。

 たとえば、チュートリアルが終わってしまえば、すぐに競技モード(たとえばランクマッチなど)にアクセスすることができ、なんなら、デフォルトの状態がそれになっていれば、そのモードをメインにするプレイヤーは多くなるはずだ。

 前述したようなシーズンランク制を導入しているようなゲームで、ランクが目立つところに表記されているような形でも、競技モードが主軸であることが強調されるだろう。

 こうすると、やはり、非競技マッチでも、競技マッチの影響が強くなってしまい、非競技モードは競技モードの練習のようにしようされることが多くなってしまうと考えられる。

 解決策としては、競技マッチへの動線をわかりにくくすることだろう。

 たとえば、特定の条件を満たさなければ解放できないようにしているゲームは多いが、それがチュートリアルのような簡単なものではなく、一定のゲームプレイ期間が必要なものもある。

 また、単純に、競技モードをオンにする場所がわかりにくいようなところにあり、基本的にゲームを開始した時には、常に非競技モードになるような形にするようなやり方もあるだろう。

 競技プレイヤーは、ゲームに対する『上達』を求めているので、必然的にそのゲームをよく調べることになるため、競技モードへの動線は細くしても見つけることができるだろう。住み分けが成立しやすくなると考えられる。

 あるいは、そもそも競技モードの選択をプレイヤーができないようにするというやり方もあるだろう。

 競技プレイヤーは、『上達』を旨としているのであって、その戦績は高くなることが予想される。プレイ傾向や戦績から、プレイヤーの分離をゲーム側で行い、適切に配置するようなやり方もありかもしれない。

 ただ、そのようなアルゴリズムが悪用されてしまう可能性もあるし、プレイヤーがその意思を反映できないという点で問題になり得る。



ゲーム内資源による交雑

 経験値による解放要素があるとか、カード資産があるとか、つまり、ゲーム内資源がある場合、それによって、競技・非競技のプレイが妨げられる場合、希望とは異なるモードでプレイせざるを得ないことがあるだろう。

 たとえば、ゲーム内でプレイ回数や勝利回数に紐づいた要素でキャラクターや装備品などの解放要素がある場合、その競技的な環境で太刀打ちできるような状況になるまで、非競技モードで経験値を貯めようとするような状態が考えられる。この場合、競技プレイヤーは(ゲーム内資源がないために)最も競技的な状態ではなく、非競技プレイヤーとの差も小さいものではあるだろうが、嗜好性が異なるプレイヤーが交雑した状態ではある。

 また、逆に、カジュアルプレイの方がゲーム内資源を必要とする場合も多いと筆者は考えている。

 たとえば、デジタルカードゲーム(DCG)の場合、カジュアルなデッキを遊ぼうとする方が、レアリティの高いカードの必要な枚数が多かったりして、競技的なデッキよりも組むのが難しい、というようなことが考えられるだろう。また、競技プレイヤーは、その『上達』のために、一つのデッキを使い続けるようなことも多い(特に環境が変化していない状況では)と考えられるが、非競技プレイヤーは他の部分に目的があり、それが分散していることもあるため、様々なデッキを使用したり、あるいは、デッキのカードの調整自体に手間がかかる、ということもある。競技デッキの場合、ある程度の最適解はネットなどで公開されていることがほとんどだが、非競技デッキの場合、一から築き上げなければならないことも多く、その試行錯誤の過程で多くのカード資源が必要になる可能性は高い。

 そうなると、本当は非競技プレイがしたいが、その目的のデッキが構築できないため、構築可能である競技デッキを使い、報酬を得るためにランクマッチを行うというような状況が考えられる。

 これはゲーム構造や、競技性における報酬、ゲーム内資産に対する課金体系などにも強く関連する。

 そのため、一概に対策を示すことは、他の事例よりも難しいが、なるべくゲーム内資源に関係なくモードを選択できるようにしたり、ゲーム経験や勝利数などが少ないとしても、非競技プレイを十分にできるような設計が求められるように思う。



ルールの変更

 これは半分ゲームデザイン上の問題ではあるのだが、競技モードと非競技モードでゲームルールが同じであるということ自体が、本質的には競技プレイヤーと非競技プレイヤーが交雑しやすいとも考えている。

 この次の記事では非競技化を目指すゲームデザインの話をするが、本来的には競技性を明確化するデザインと、競技性ではなく、様々な幅を強調するデザインは異なっていることが多い。

 その両者をまったく同じルールで運用してしまうと、競技プレイヤーが非競技モードで練習を行ったり、非競技プレイヤーが競技モードにする(たとえば、上述した報酬を求めるなどして)可能性も上がるだろう。

 それぞれが、それぞれの望みを強めるようなルールに、モードによって分離されている場合、それぞれが適した場所でプレイする可能性が高まると考えている。


 たとえば、「スプラトゥーン」シリーズの場合、ランクマッチはガチ○○というようないくつかのルールが採用されており、コアな操作は同じだが、ゲームルールはより競技性の高いものが採用されている。

 さらに、名称にもガチ(ここでいうガチも、やはり、競技性が高いという意味で使用されている)というものを使うことによって、それなりに覚悟したプレイヤーがプレイするものであることが強調できている。

 「マジック:ザ・ギャザリング」でも、フォーマットによりデッキ構築やゲームルールに小さな変更があり、たとえば、スタンダードはより競技性が高いフォーマット(もちろん、予算などの都合で非競技プレイがしやすい側面もあるので一概には言えないが、特に競技シーンの場合)で、統率者戦は競技性が低いフォーマットである、というような住み分けができている。

 デッキ構築やゲームルールが異なり、前者では弱いが後者では強いというようなカードも存在するため、このようなゲームルールの差異は、カードの需要喚起や供給の仕方などにも影響を与えている。



結言

 本記事では、ゲーム運営における設計によって、競技プレイヤーと非競技プレイヤーが、交雑してしまう可能性が高くなることについて考え、それを緩和するためには、どのような設計にすべきかを考えた。

 実際には、ゲーム運営には、様々な関係性があり、この分離だけを第一義にして設計することはほぼ不可能であると考えられるが、何らかのきっかけになれば幸いだ。

いいなと思ったら応援しよう!