借金5000万で売上6000万の会社の保証人になった二代目社長のV字回復ストーリー④
2011年、父が創業した『有限会社齋藤アルケン工業』を継ぎました。
今現在では創業時の内装業を基盤としつつ3つの介護事業も展開しています。ただ、ここに至るまでの長くつらい期間が私にはあります。事業の傾きを何とかしようと必死でした。
そんな話しを、これまで何回かに分けてお伝えしています。
今回は、齋藤アルケン工業に喜ばしい転機が訪れたところからを書き綴ります。
同級生の母親が連れてきてくれた、転機
介護事業をスタートして3年目のこと、売り上げも無かった私に転機が訪れます。
ケアマネジャーの資格と介護経験の両方を併せ持つ同級生の母親が『職場を定年退職するので、一緒に仕事をしましょう』と、声を掛けてくださいました。
そのことを、経理を担う母親にも相談しましたが互いの気持ちは同じでした。現状を変えるには今と同じことをやっていても何も変わらないと思い、『これでダメなら』といった、状況を変えていくための最後の願掛けのような気持ちが私達親子の中にはあったんです。そして、大きな賭けではありましたが、新たに従業員となってくれる方々に向けての給与(人件費)の借入をしました。
これを機に、私と母親で福祉用具レンタル事業を行うことにし、同級生の母親・縁あったもう一人で居宅介護支援事業を開設。それは、2012年のことでした。縁あった方とは、同級生の母親が信頼を寄せる方となります。
ここからです。介護事業の売り上げが徐々に増え始め、状況が一変し始めます。
事業所名は母親が『歩歩笑み(ほほえみ)ライフ』と、名付けました。ここには、一歩一歩と歩みながら微笑みを生み出したいという意味が込められています。
介護事業をするにあたって大切になってくる信用を、ケアマネジャーの経験を持つ同級生の母親が『仕事』という形で引き込んでくれたように思います。
『人の役に立ちたい』を実現するときが来た
事業が回復する中で、過去に私自身の中に芽生えていた『人の役に立ちたい』といった気持ちを現実する心の余裕も生まれ始めます。
まずは、地域住民の方々の様々な困りごとを解消したいと考えました。
介護無料相談所
まず最初に立ち上げたのが、地元スーパーでの介護無料相談所です。
地域に根差すスーパーに協力を依頼し、買い物のついでに気軽に立ち寄れる窓口を設けました。相談時間も、年金支給日と合わせたり通いやすい時間などを考慮しました。
相談内容も介護のことだけに留まらないようにしました。高齢者の暮らしの中で直面する困り事相談は、何でも受けるようにしていました。
買い物弱者支援事業
買い物弱者支援事業もスタートしました。
これは、中山間地域に住む高齢者宅に食品を届ける試みです。過疎化が著しい島根県で、食料品を購入するために高額なタクシー代を払ってスーパーに行く利用者の声を何とかしたいと思ってスタートしました。
置き薬と同じ仕組みを利用し、利用者宅に商品かごを設置し消費した分だけを清算します。福祉用具のメンテナンス訪問のついでに行い、働く側の負担も軽減しました。
リユース食器のレンタル事業
リユース食器のレンタル事業として環境問題にも取り組みました。
イベント時などに大量発生する使い捨て紙皿。ここでのゴミ問題を何とかしたいと、食器の貸し出しを始めました。その背景には、SDGsの目標に少しでも貢献したい思いがあり、プラスティックゴミ削減を意識した取組みとしました。
社会全体が、SDGsの取り組みに貢献しようとする中で『リユース食器のレンタル事業』が、催事や災害避難所といった場での活用の広まりを見せるようになりました。
介護施設向け調理済み食品販売
2017年には、介護施設向け調理済み食品販売もスタートしました。
これは、介護業界の慢性的な人手不足問題を少しでも何とかしたいと始めた取り組みです。
介護事業を行う中で、介護職員の人件費を今以上に下げることができない事業所も多いはずです。そこで『介護事業所における厨房職員の人手不足』と『介護施設の安定的な食事提供』に注目し、人手不足の問題を少しでも解消できればと考えました。
調理済み食材を使用することで、少ない職員でも食事を簡単に提供することが可能となります。この取り組みは、後に大きな広まりを見せることとなります。
浜田水産高校との共同開発「サバカレーパン」
地元の高校生と「サバカレーパン」を開発し商品化しました。
サバカレーパンとは、ここ浜田港で水揚げされたサバの缶詰を使ったパンです。商品の企画提案してくれたのは、浜田水産高校の生徒さんたち。
マンネリ化してしまいがちな介護施設のメニューとして開発しました。商品開発に至った経緯や想いについてはまた別の機会に改めてお伝えしたいと思いますが、高校生と共同企画をした背景にはこれからの社会へと羽ばたく高校生に、様々なチャレンジを経験してほしいと考えたのがひとつの理由です。
高校生たちのアイディアで誕生した「サバカレーパン」ですが、これを作るのは地元の障害者就労支援事業所「プチマタン」の方々です。福祉作業所に作業を依頼することで、障害を抱える方々の仕事を生み出すことにも繋がります。
地域の課題や問題は、地域の人達のアイディアと地域の資源を使って解決し、それが地域の活力に繋がればいいなと考えました。今後もこうした取り組みに関わり続けたいと考えます。そこには『みんなで一緒に幸せになりたい』と言う想いがあり、そうしたゴールに少しでも貢献することが出来でば幸いです。
人の役に立ちたかった
上述した活動だけに留まりませんが、出来ることは何でもしました。
苦労した時期が長かったために、仕事があることが嬉しかったです。それに、どうにか人の役に立ちたい気持ちを形にしたいと考えました。
地道な活動が人々の信頼にも繋がっていきました。また、それによって行政や病院からも声がかかるようになっていきました。
そして、新たな事業承継の話しが私の元へ舞い込むようになりました。
続は次回に。
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