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40中14名が感染しクラスターになった介護施設を経営している私が伝えること③

2022年3月、島根県江津市にあるサービス付き高齢者住宅施設『よろこぼう屋』で、新型コロナウイルスのクラスターが発生しました。ここは、私が運営をする介護事業所。

そのときの記録を、全6回に分けて書き綴っています。

今回は第3回。一人の職員の新型コロナウイルス感染が発覚してからクラスターとなるまでの経過や、その間のよろこぼう屋の暮らしについて。

最初の3日間で、陽性者が12人

当時は介護事業所内で感染者が出た場合、感染者発覚後から1週間以上に渡り新たな感染者が出なければ自粛解除となっていました。ただ、よろこぼう屋では、3月13日の陽性者の発覚を皮切りに次から次へと感染者が続出し瞬く間にクラスターとなりました。

2022年3月13日(日)

3月13日、一人の職員が朝から発熱。
PCR検査によって、新型コロナウイルス感染が発覚。

2022年3月14日(月)

翌3月14日、保健所の指示で入居者28人と濃厚接触者となる職員7名を検査。すると、入居者4名と職員1名の計5名の陽性を確認。

2022年3月15日(火)

翌3月15日、全職員を検査したところ職員3名が陽性。同時に、前日14日の検査結果がどちらとも言えなかった入居者の方を再検査したところ陽性を確認。この日だけでも新たに4名の陽性者が出ました。

僅か3日で計12人が陽性者となりました。

2022年3月20日(日)

3月20日、また新たに一人の入居者による陽性を確認。

2022年3月22日(火)

3月22日、続いて一人の職員による陽性を確認。

2022年3月24日(木)

3月24日、一昨日に新型コロナウイルスに感染した職員の濃厚接触者となる者のPCR検査を行ったところ、一人の入居者による陽性を確認。

終わりが見えない中、よろこぼう屋の全員が落胆を重ねました。ただこのとき『きっと、4月の初めには通常の日々が戻ってくるね』と、みんなで話していたました。

2022年4月1日(金)

4月1日、施設内で最後の新型コロナウイルス感染者が出てから1週間経過。PCR検査にて、全員の陰性が確認できれば通常の日々が戻ってくるはずでした。

『これで検査して全員が陰性だったら通常の生活に戻れる』と話していた矢先、PCR検査にてまた新たに一人の入居者による陽性が発覚します。

『なぜ、まだ感染者がでるのだろう』と不思議に思いながら、感染対策を継続し、4月中旬にやっとよろこぼう屋の新型コロナウイルスのクラスターは終了となりました。

前回の記事でもお伝えしていますが、私達は入居者・職員共に3回目のワクチン接種を終えていました。ワクチン接種をしていてもこのようなクラスターは起こったのです。良い方に考えれば、ワクチン接種をしていたから軽症ですんだのかもしれません。未だその答えはわかりませんが、ただ大変だったことには変わりありません。

完全な隔離が難しい、サービス付き高齢者住宅施設

正直なところ、よろこぼう屋のようなサービス付き高齢者住宅で、感染対策(隔離)を完全に行うことは難しいのが現実です。

『なぜ?』と思われる方もいるかもしれませんが、見守りが必要な利用者の方に自室に帰って一人で食事を摂ってもらうことはリスクが高すぎます。また一人で食事を摂れる方にとっても、長時間にわたる自室での過ごしや非日常と言う空気感が不穏を呼び起こすことも考えられます。

また、徘徊する利用者も多く自室で自主的に過ごしていただくということが難しい現状です。

さらに付言するならば、現在多くの介護事業所では人手不足が問題となっています。介護業界だけではありません。少子高齢化による影響で働く世代が減り、社会全体が働き手不足と言えるでしょう。よろこぼう屋でも、現実的な問題として対応するだけの職員の人手が潤っているとは言えませんでした。

このような様々な要因によって、部屋での隔離に踏み込めない現実がありました。

よろこぼう屋も、隔離に踏み込む決意に至った

上述した背景もあり、13日のスタッフの感染が確認された当日と翌日の朝は入居者全員で食堂で食事を摂ってもらっていました。まだそのときは、新たな感染者もおらず、利用者の方々のリスクを考慮するとそれが介護事業所内で出来る最善策でした。

しかし時間を追うごとに、PCR検査によって入居者・職員の感染が次々と分かります。

そこからは、『職員の人数』や『利用者の方々に自室に戻ってもらうことのリスク』の狭間で職員みんなが頭を抱えました。

このままだと『これ以上感染者が増えてしまった際に、より人手がかかって業務が回らなくなってしまう』と、職員誰もが理解しているからより悩みが深くなります。

介護事業所としての対応に迷っていたときに『リスクはあるけれど、利用者さんには部屋に戻ってもらおう』と言い出したのは、一人の若い職員。その提案に全員が賛同しました。

もちろんその際も、部屋に帰ってもらうリスクは誰もが理解していて、職員達には不安がなかったとは言えません。

ただ、よろこぼう屋内での一早いクラスター終息を願い、これ以上の感染者を出さないために優先しました。※どうしても見守りが必要な方が数名に至っては、食堂で食べてもらいました。

新たな体制を組みなおした、よろこぼう屋。
コロナクラスターの終息を誰もが願いました。
ただ、ここからも大変でした。

続は、次回に。


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齋藤憲嗣
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