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皇位の「男系男子」継承は「基本的人権の侵害」ではない──国連の女子差別撤廃委員会に「皇室典範改正勧告」の削除を要求した日本政府の「あとの祭り」


昨年10月末、国連の女子差別撤廃委員会は日本政府に対して、男系主義を採る皇室典範の改正を勧告した。最終見解は「皇統に属する男系男子だけに皇位を継承させることは、(女性差別撤廃条約の)第1条および第2条と両立せず、条約の目標と目的に反する」と断定している〈https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/report_241030_e.pdf〉。

委員会の最終見解

すでに書いたように、今回、委員会が事前質問票を示したのは、2020年3月のことである。「女性に対する差別の定義及び法的枠組み」に関する質問事項で、まるで木に竹を接ぐかのように、突然、「皇室典範」に矛先を向け、「皇室典範に関し、現在、女性皇族には皇位継承が認められないとする規定が含まれているが、女性が皇位を継承することを可能とするために締約国がとろうとしている手続の詳細を提供されたい」と問いただした〈https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/report_9_j.pdf〉。

内閣府HPから
〈https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/report_9_j.pdf〉

これに対して日本政府は、2021年9月の報告で、「皇位継承のあり方は国家の基本に関わる事項である。委員会が皇室典範について取りあげることは適当ではない」と反論していた〈https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/report_9_j.pdf〉。

同上

けれども、委員会は最終見解で、「委員会の権限の範囲外であるとする締約国の立場に留意する」としつつ、「皇位継承における男女平等を保障するため」の法改正を執拗に要求したのである。

昨年10月の委員会の審議には、日本政府代表団(岡田恵子代表団長)の約30名に宮内庁職員も加わっているという。審議の冒頭には、奥田団長による30分間のステートメントが行われたが、「皇室典範」への言及はなかった。そして、最終見解で皇室典範改正が要求されたのである。

日本政府としては忸怩たるものがあったに相違ない。それかあらぬか、政府は昨年12月に、最終見解に対する「日本の意見」を内閣府のサイトで公表した。皇位継承問題一点にテーマを絞り、「皇位継承資格は基本的人権に含まれない。男系男子に限定されていても、基本的人権の侵害に当たらない」と強く反論し、関係する記述の「削除」を要求している〈https://www.gender.go.jp/international/int_kaigi/int_teppai/pdf/report_241220_j.pdf〉。

内閣府HP

当然の対応といえるが、あとの祭りである。


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