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盧武鉉大統領談話、何のための強硬姿勢か(2006年04月25日)



 今朝の朝日新聞に載った韓国前大統領のインタビューについてブログを書き上げたところへ、今度は現大統領の談話のニュースが飛び込んできました。きのうから予告されていたことですが、内容はじつに強烈でした。


◇まるで宣戦布告

 たとえば日本経済新聞は、竹島の領有権問題で「けっして妥協できない」と主張し、「日本が誤りを正すまで国家的な力量と外交的な資源をすべて動員する」と強調した、と伝えています。まるで宣戦布告です。

 実際の談話の全文(日本語)は、韓国・聯合ニュースのネット版に載っています。
 http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?NEws_id=200604250942491

 これによると、談話は「独島(竹島)はわれわれの領土です」で始まり、日本の近代史をきびしく批判し、「いま日本が独島に対する権利を主張するのは、帝国主義侵略戦争による占領地の権利、ひいては過去の植民地領土権を主張するものです」「犯罪の歴史に対する正当性を主張する行為です」と決めつけています。

 さらに「いま政府は独島問題に対する対応方針を全面再検討します」「物理的挑発には強力かつ断固として対応します」「どれだけ費用と犠牲が伴っても、けっしてあきらめたり妥協できる問題ではない」と述べ、日本に対しては、「これ以上、新たな謝罪を要求しません。すでに行った謝罪にあった行動を要求するだけです」「歴史の真実と人類社会の良心の前に、正直で謙虚になることを望むものです」と呼びかけています。

◇強硬発言が運の尽き

 読んでいてため息が出ますが、どうしてこんなに強硬なのでしょう。そんなに強硬姿勢を貫きたいなら、なぜ韓国は先日の次官級会談で妥協の道を選んだのでしょうか。矛盾しています。

 日本政府内には「竹島問題での日本への対応について、国内で批判がある。弱腰を見せられないため」という見方もあるようですが、そういうことなのでしょうか。

 今回の海洋調査をめぐる日韓外交について、Brain News Networkが鋭い分析をしているのでご紹介します。
 http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_genre=17&news_cd=H20021023183

 これによると、韓国政府が「拿捕も辞さない」という強硬発言をしたのが運の尽きだったと指摘されています。丸腰の日本の調査船に対して、韓国は武装した韓国警備艇18隻を配備しました。もし日本が調査を強行し、韓国が拿捕すれば、韓国民は溜飲を下げ、大統領の支持率は確実に上昇します。しかし国際的立場は逆に失墜するでしょう。国民受けをねらったリップサービスをしたばかりに、外交交渉では防戦にまわらざるを得なかったというのです。

 とすれば、今日の大統領談話は、大言壮語の失敗に懲りずに、失敗を糊塗するために、さらなる大言壮語を重ねたということでしょうか。

◇意外に冷静な民衆

 そういえば、5年前、歴史教科書問題をきっかけに日韓が抜き差しならない状況になったときも、やはり当時の金大中大統領が完全なレイムダック状態にあり、政策に行き詰まった焦りが、当初は対日関係重視の「新外交」を推進していた大統領を「反日」に豹変させたといわれます。

 しかしこのとき意外に冷静だったのは韓国の民衆で、ソウルの街ではどこへ行っても、人気歌手のポジションが韓国語でうたう尾崎豊の「アイ・ラブ・ユー」が流れ、そのCDはヒットチャートのトップを走り続けていたのです。日本が大好きな韓国の民衆は、政治家やマスコミの「反日」大合唱をけっこう醒めた目で眺めています。

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