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件数では明らかに増えている陛下の「ご公務」──宮内庁が公表する「ご日程」に際だった縮減が見られない「ご負担軽減」の言行不一致(2009年05月12日)

(画像は宮内庁HP)

 共同通信の報道によると、東京・元赤坂の迎賓館は改修工事が終了したあとも、海外からの賓客を歓迎する行事に使われることはなく、歓迎行事は今後も皇居宮殿の東庭(とうてい)で行われるようです。

 理由は両陛下のご負担の軽減とされています。
http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009050701001033.html

 そのこともあってか、今度は東庭の全面改修が5年計画で始まるようです。

東京新聞の記事によると、昭和43年に完成した宮殿に付属する東庭は広さが約1万4千平米。50×100センチの由良石が敷き詰められていますが、経年劣化で痛みが目立つのだそうです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009050302000053.html

「皇居の顔」ともいうべき東庭の改修も必要なことでしょうが、拙著『天皇の祈りはなぜ簡略化されたか』でも言及した、急務であるはずの陛下のご負担軽減が本当に実現されているのかといえば、疑わしいといわざるを得ません。このメルマガで何度か指摘してきたように、件数では明らかにご公務は増えています。

▽1 過去5年間の1~4月期ご公務件数


 なぜそのようにいえるのか、といえば、ほかならぬ宮内庁がインターネット上で公表している「ご日程」を見れば、ご公務の件数が減っているようにはまったく見えないからです。

 ご承知の通り、昨年(平成20年)暮れの陛下の御不例を受けて、1月29日、宮内庁は、「拝謁の回数、日程を縮減する」などとするご負担軽減について発表しました。それから3カ月が過ぎましたが、ご公務の件数は決して減っていません。

〈https://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokomu-h21-0129.html〉

 宮内庁のホームページには、「天皇皇后両陛下のご日程」が、皇太子殿下、秋篠宮殿下のご日程とあわせて、平成元年からすべて掲載されています。
http://www.kunaicho.go.jp/activity/gonittei/01/gonittei01.html

 したがってご公務の件数を単純に数え上げれば、ご負担が軽減されたかどうかは簡単に知ることができます。

 試みに過去5年間について、1月から4月まで、それぞれ件数を数えると、以下のようになります。

     17年   18年   19年   20年   21年
1月   45    36    41    49    55
2月   31    34    41    33    34
3月   49    55    53    55    61
4月   62    59    50    59    72

▽2 3月期のみ中身を比較検討すると


 誰の目にも明らかなように、2月期をのぞけば、宮内庁が公表しているご公務の件数は減るどころか、逆に増えています。とくに4月期は過去にないほどの水準にまで件数が増えています。

 これでは鳴り物入りで発表したご負担軽減がまやかしだと批判されても仕方がないことになります。

 とはいえ、結論を急ぐのは慎みたいと思います。もう少し中身を検証してみましょう。

 宮内庁は「ご公務など」を3つのカテゴリーでとらえています。(1)「宮中のご公務など」、(2)「行幸啓など(国内のお出まし)」、(3)「国際親善」の3つです。

(1)については、さらに「新年祝賀」「天皇誕生日・一般参賀」「親任式」など、(3)は「国賓のご接遇」「公賓のご接遇」などに分類されています。

 それぞれについて、見直しが実現されているのかどうかですが、これが疑わしいのです。

 すべてを精査することはできませんので、ここ3年について、3月期のみを比較検討してみると、以下のようなデータを得ることができます。

 あらかじめ申し添えますが、以下の数値は精緻なものではありません。というのも宮内庁が示している分類は便宜的なものだからです。たとえば「ご会見」と「午餐」がオーバーラップすることもあり、また「宮中でのご公務」が同時に「国際親善」になり得ますから、件数の合計と先述したご公務の件数と一致しません。どうぞご理解ください。

▽3 「拝謁・お茶」に変化なし


                19年  20年  21年
(1)宮中でのご公務など
ご執務             9    10   12
新年祝賀・一般参賀       0    0    0
天皇誕生日参賀         0    0    0
首相などの親任式        0    0    0
大臣など認証官の任命式     2    0    2
大綬賞などの勲章親授式     0    0    0
新任外国大使の信任状捧呈式   2    3    3
海外賓客のご会見・ご引見    9    7    4
功労者など拝謁・お茶・ご会釈  15   26   25
海外賓客・要人との午餐・晩餐  4    2    1
春秋2回の園遊会        0    0    0
宮中祭祀            2    4    1
その他             4    1    3

(2)行幸啓など
行幸啓など           2    3    2

(3)国際親善
国賓のご接遇          7    0    0
公賓のご接遇          0    1    0
公式実務訪問客のご接遇     0    2    0
信任状捧呈式          1    3    3
ご会見・ご引見         8    7    5
ご親書・ご親電         0    0    0
在日外交団の接遇        1    1    3
赴任・帰朝大使の拝謁      1    0    2
外国ご訪問           0    0    0

 以上から、傾向として指摘できるのは、宮内庁のご負担軽減の方針とは裏腹に、少なくともご日程の件数について、際だった縮減が見られないことです。わずかに海外からの賓客のご会見などに減少傾向が見られるものの、国内の功労者の拝謁・お茶などは宮内庁の「縮減」方針にもかかわらず、変化が見られません。

 それなら何がどう変わらないのか、というと、意外な現実があるのですが、それは次号で掘り下げることにします。

 陛下の御不例は医師の診断では心身のストレスが原因といわれましたが、宮内庁は肉体的なご負担ばかりを軽減するような方針を立てました。けれども実際には、その方針すらまったく実現されていません。

 次号で言及する実態を見れば、その言行不一致ぶりがより明らかになるでしょう。


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