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「しばらくはこのままで」──政府の「皇室制度」改革に幕を引いた天皇誕生日会見 1(2017年09月28日)

(画像は平成24年の誕生日会見に臨まれた陛下。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)

あとがきにかえて



 天皇陛下は平成24年12月23日、79歳の誕生日をお迎えになり、霊元天皇(78歳)を超え、昭和天皇(87歳)、後水尾天皇(84歳)、陽成天皇(80歳)に次ぐ、単独歴代4位の御長寿となられました(現在は歴代3位。今年29年暮れのお誕生日で84歳になられ、来春には後水尾天皇を抜いて、歴代2位となられます)。


▽1 「しばらくはこのままで」



 陛下はお誕生日を前にして、12月19日、記者会見に臨まれ、御公務ご負担軽減問題について、

「今のところしばらくはこのままでいきたいと考えています。私が病気になったときには、昨年(23年)のように皇太子と秋篠宮が代わりを務めてくれますから、その点は何も心配はなく、心強く思っています」

 と語られました。

会見での質問とご回答


 宮内記者会は、

(1)来年80歳となられるのを機に、一層のご負担軽減が必要であるという指摘があること

(2)一定の年齢に達すれば、国事行為に専念するか、あるいは国事行為と最小限の公的行為だけなさっていただき、それ以外は皇族方が分担するという考え方を取り入れるべきという意見が出ていること

 の2点を指摘し、

「現行制度のままでは陛下のご活動をお支えする皇族方が減ってしまう現状の下で、今後の御公務に関する皇族方との役割分担についてどのようにお考えでしょうか?」

 と質問したのでした。

 これに対して、陛下は、天皇の公務には国事行為のほかに、全国植樹祭や日本学士院授賞式に出席されというような象徴的行為があるとする一般的な考え方を示されたうえで、

(1)昭和天皇が80歳を超えても続けられたこと

(2)負担軽減は、公的行事については、公平の原則に十分に配慮する必要があること

 を指摘されたあと、上記のように毅然と語られたのでした。記者会の質問への回答であると同時に、「皇室の御活動」の安定的維持、御公務ご負担軽減策を名目にして皇室制度改革を進める政府にやんわりと抵抗される、陛下の強い意思表示のように思われました。

 メディアの報道は、私とは少し違いますが、やはり陛下のご意思を伝えていました。

 たとえば朝日新聞は、北野隆一、島康彦両記者連名の署名記事で、

「穏やかだが、確固とした『宣言』」

 とリポートしました。

宮内庁はここ数年、ご負担軽減を図ってきたが、健康不安は残っている。羽毛田信吾・前宮内庁長官は退任会見で、

「陛下は『活動あっての象徴天皇』との信念で臨んでおられ、お務めを選別して減らすことは難しい」

 と語っていた──というのです。

 つまり、朝日の記事では、陛下は御健康に関する不安を振り切って、御公務に励もうとされている。その背景には、「御活動」こそ「象徴天皇」の本質とする「信念」がうかがえる、というのです。

 こうした御健康より御公務を優先される陛下の姿勢に対して、風岡典之・現宮内庁長官は、

「陛下の健康維持は国民の願いであり、宮内庁として何より優先すべき課題。皇室医務主管や侍医長ら医師との連携をとっていく」

 と話していると記事は伝えています。

御活動」第一主義的な解説には同意できませんが、それはともかく、陛下のお言葉と報道から浮かび上がってくるのは、つぎの4点です。

(1)御公務と御健康問題をめぐって、陛下と宮内庁当局者との意見の相違、あるいは対立の構図があるように見えること

(2)宮内庁当局による、いびつなご負担軽減策にひとまず小休止が打たれそうなこと

(3)したがって、ご負担軽減を表向きの目的とした、女系継承容認=「女性宮家」創設論にもひとまず終止符が打たれたこと

(4)一方で、平成の祭祀簡略化は現状のまま維持されること

 いわゆる「女性宮家」創設が「陛下のご意思」などと伝えていた報道は、何だったのでしょうか?


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