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ますます増える陛下のご公務ご日程──ご負担軽減策にもかかわらず。宮内官僚たちの言行不一致(2009年07月07日)

(画像は平成14年のポーランド・ハンガリーご訪問を前に、会見に臨まれる陛下。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)


 年若い友人が興味深い話を聞かせてくれました。

 友人は政治にまったく関心のないノンポリですが、お母さんはバリバリの共産党議員です。そのお母さんが、陛下のご公務問題について、きびしく批判しているというのです。

 てっきりいつもの天皇批判かと思ったら、そうではありませんでした。高齢で、しかもガンの手術も受けられた。それでも仕事が増えている。そんな非常識なことがあるか、と官僚たちを批判しているのです。

 まったくその通りです。イデオロギーの問題ではなく、これは常識の問題なのです。ところが、現実は、といえば、昨年(平成20年)末のご不例から半年が過ぎたいま、陛下のご公務の日程は、国民の知らぬ間に、ますます増えています。

▽1 軽減策に反して前年比1割増加


 というわけで、宮内庁のホームページに先月末までの「天皇皇后両陛下のご日程」が発表されましたので、いつものようにご公務軽減について、検証してみることにします。

 もういわずもがなですが、当メルマガの問題関心は、宮内庁が今年1月、陛下のご高齢・ご健康に配慮して、御公務および宮中祭祀に関して調整・見直しを図る、と発表したのち、その方針が実際、守られているのかどうか、です。

 本メルマガの調べでは、2月以降、宮内庁自身がネット上で公表している陛下のご公務のご日程件数は減るどころか、増えていますが、6月はどうだったでしょうか。

 以下は、先月だけでなく、過去3年間について、1~6月期のご公務ご日程件数を単純に足し算し、まとめたものです。

    19年  20年  21年
1月  41   49   55
2月  41   33   34
3月  53   55   61
4月  50   59   72
5月  39   51   52
6月  40   45   52
小計  264  292  326

 見てお分かりのように、5月には伸び率がいったん抑制されたのですが、6月にはふたたび件数の増加が目立つようになりました。宮内庁のご負担軽減策にもかかわらず、少なくとも件数において、全体では前年比でほぼ1割ずつ増えています。

▽2 なお続く官僚の言行不一致


 いつものように中身を見てみます。宮内庁によるご公務の分類に準拠して、6月期のご公務、とくに「宮中のご公務など」「行幸啓など」について比較すると、以下のようになります。「国際親善」は省きました。

                 19年 20年 21年
[1]宮中のご公務など      36  48  50
1─1ご執務など         9   8   10
1─2新年祝賀の儀・新年一般参賀 0   0   0
1─3天皇誕生日祝賀・一般参賀  0   0   0
1─4首相・最高裁長官の親任式  0   0   0
1─5大臣ほか認証官の任命式   2   1   0
1─6大綬賞などの親授式     0   0   0
1─7新任外国大使の信任状捧呈式 0   1   2
1─8元首会見・その他ご引見   3   8   2
1─9国内功労者の拝謁お茶ご会釈 16  24  33
1─10海外賓客の午餐・晩餐   2   3   0
1─11春秋2回の園遊会     0   0   0
1─12宮中祭祀         3   3   3
1─13その他(稲作など)    1   0   0

[2]行幸啓など         6   4   6
2─1都内の式典ご臨席      3   2   2
2─2式典ご臨席の地方行幸啓   1   1   1
2─3その他の都内お出まし    1   1   3
2─4その他の地方行幸啓     0   0   0
2─5地方ご静養         1   0   0

 これまでと同様、宮内庁が「拝謁の回数、日程を縮減する」などと意識して削減したはずの拝謁が大幅に増えていることが分かります。官僚たちの言行不一致は続いています。

▽3 海外ご訪問に付随して増えるご公務


 いったい何が増えているのか。皆さんご自身がホームページでご確認いただければ、と思いますが、外国ご訪問を前にしたご進講・ご説明、随員たちの拝謁・お茶などが目につきます。6月には福井で全国植樹祭がありましたが、石川、福井両県の知事らのご挨拶も重なりました。都内のお出ましも増えました。

 一方、ご負担軽減の標的にされている祭祀はどうでしょうか。同様に過去3年間について比較してみます。

    19年  20年  21年
1月  8    7    4
2月  4    3    2
3月  2    4    1
4月  2    3    3
5月  4    1    1
6月  3    3    3
小計  23   21   14

 6月についてはご負担軽減の標的にされなかったのか、というと、そうではありません。1日の旬祭(しゅんさい)のお出ましは、今年はありませんでした。それでも総件数が減っていないのは、カナダ、ハワイ公式ご訪問を前にして、先帝の御陵に参拝されているため、表面化しなかっただけです。

 天皇第一のお務めである祭祀が狙い撃ちにされる状況は変わりません。

 ご負担軽減といいながら、ご公務の日程件数は増え、半月におよぶ外国ご訪問が実施されるのは矛盾以外の何ものでもありません。しかも海外行幸に付随して、さらにご公務が増えています。以前から申し上げているように、急務であるご負担の軽減には抜本的な対策がどうしても必要です。

▽4 7年前の皇后陛下の言葉


 ある民族派団体の月刊誌が巻頭言で、関係当局の深思猛省を促しています。皇后陛下の14年のポーランド・ハンガリーご訪問(7月6日~7月20日)を前にした記者会見の言葉を引用し、大胆な軽減策の検討を訴えています。

 この年の5月に、日程の一部を控えられるほど長引く風邪を召された天皇陛下でしたが、7月の海外ご訪問は強行されました。皇后陛下は会見でこう仰ったのでした。

平成14年6月20日、ポーランド・ハンガリーご訪問に際しての記者会見から@宮内庁HP〈https://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gaikoku/gaikoku-h14-easterneurope.html〉

「(今上陛下が)年をお加えになる中、お仕事は減っておりませんので、これからは陛下のお疲れに皆して注意し、適当なご静養をとっていただくことが大切と思います。
 陛下のお仕事は、他の者が代わって差し上げるということのできないものが多く、周囲も交代でお供をいたしますので、連日にわたる陛下のお仕事の総量を、ともすれば見失いがちになります。
 陛下のお仕事の性質上、私もすべての時におそばにあるということはできませんが、陛下のお仕事の量や連続性をおそばにいて体験し、せめて陛下のお疲れの度合いをお察しできるようでありたいと思っております」

 6月29日に金沢一郎皇室医務主管が発表したところによれば、昨年末来の今上陛下の不整脈はいまも散発的に見られ、ご体調次第では今回のご訪問の日程が変更を余儀なくされる可能性もある、と伝えられます。

宮内庁HPから〈https://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/kohyo/gokenko-h21-0629.html〉

 ご負担軽減は急務のはずですが、側近たちはまるで聞く耳を持たぬかのようです。


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