同等婚の原則が崩れたイギリス王室──イギリス王室がウイリアム王子の結婚を発表(2010年11月18日)
イギリスの皇太子公邸クレランスハウスが、チャールズ皇太子に次ぐ王位継承順位第2位のウイリアム王子が来年結婚すると発表しました。
http://www.princeofwales.gov.uk/newsandgallery/news/his_royal_highness_prince_william_of_wales_and_miss_catherin_77816924.html
まずは心からお祝いを申し上げたいと思います。
このロイヤル・カップルの門出に水を差すわけではないのですが、以前から指摘しているように、この結婚はイギリス王室の歴史に大転換点をもたらすことになります。
すなわち、イギリス王室が固持してきた父母の同等婚と王朝の交替という王位継承に関する二大原則です。
イギリス王位は王族同士の婚姻により、父系によって継承され、男子が不在の場合は女王の継承を経て、女王の王配(配偶者)側に王朝が交替するという大原則です。
たとえば、20世紀初頭、ヴィクトリア女王のあと長男のエドワード7世が即位しましたが、同時にハノーヴァー朝は幕を閉じ、女王の王配であるアルバート公にちなんで、ハノーヴァー=サクス・コバータ・ゴータ朝に交替しています。
いまから70年前、「王冠を賭けた恋」がイギリス王室を揺るがしました。エドワード8世はアメリカ人シンプソン夫人との結婚を選びました。しかし同夫人は王統に属する血筋ではありません。国王は王位を断念せざるを得ませんでした。父母の同等婚という原則が守れないからでしょう。
さて、ウィリアム王子の結婚相手は一般家庭の生まれです。70年前と異なり、王位継承問題をめぐる議論がわき起こっているとは伝えられません。歴史と伝統あるイギリス王室が同等婚原則を失った最大の要因は、内外の王族から妃を迎えることが難しいという現実論がまさったことでしょうか。