でっち上げられる「ご心労の原因」──「急性病変」がねじ曲げられ、既成事実のように質問が突きつけられる皇太子殿下のお誕生日会見。答えられないお立場なのに(2009年02月24日)
(画像は会見に臨まれる殿下。宮内庁HPから拝借しました。ありがとうございます)
▽1 気の重い誕生日会見
皇太子殿下のお誕生日会見が行われました。
先日は尻切れトンボのベトナム訪問会見が行われたばかり。それから半月後の会見も、相変わらず気の重い会見です。誕生日というのは誰にとっても楽しい日のはずなのに、です。
第1問はここ一年の回顧、第2問は陛下の御不例関連、第3問は妃殿下の療養に関すること、というように代わり映えのしない5つの質問および関連質問が続いています。
第2問は例の羽毛田信吾長官の所見についてのご感想が求められています。陛下のご心労、ご心痛の原因を「皇統の問題」などと理解し、また、殿下の「新しいご公務」について「具体的な提案」を「お待ちしている」と述べた所見の内容について、さらに所見そのものについて、どうお考えか、と回答を求めています。
▽2 急性病変のはずなのに
これに対して、殿下は、陛下のご健勝を祈っていること、ご心労の削減を願い、そのための努力を惜しまないこと、を表明されるとともに、新しいご公務に関するお考えについて詳しく述べられています。
前にも指摘しましたが、昨年の陛下の御不例は、医師団の説明によれば、急性の病変で、原因となる心身のストレスから発症まで早ければ数時間、遅ければ1、2カ月、とされていました。
ところが何を思ったのか、長官の所見は、愚かにも「ここ何年かにわたり」と述べ、あたかも「皇統の問題」などがストレスの原因であるかのように会見で説明し、メディアはこれを皇位継承問題での心労が原因だと所見を述べた、と単純化して報道したのでした。
急性病変の原因が「何年かにわたる」ものでないことは明らかですが、長官もメディアも事実をねじ曲げて説明し、今度の会見では、もはや急性病変であることが忘れられたかのような質問が殿下に突きつけられています。
「事実」ではないことが「事実」としてでっち上げられていく、という典型のように見えます。
▽3 答えられないお立場
賢明なことに、殿下はご心痛と皇統問題との関係について何も答えられませんでしたが、記者は黙ってはいません。関連質問で、皇統問題についてどうお考えか、とふたたび迫り、「発言を控えるべきであると思う」とお答えになると、さらに記者は「当事者として率直なお気持ちを」と食い下がっています。
女性天皇・女系継承容認を含む皇統問題についてのお考えを、どうしても直接引き出したい、というのがメディアの考えなのでしょう。「具体的な考えは示さなかった」などと、ある新聞は批判的に伝えています。
けれども、前提に誤りのある質問に、まともに答えるわけにはいかないでしょう。
まともに答えれば、御不例の原因が皇統問題にあると認めたことになりかねないし、皇統問題原因説に殿下が疑問を投げかければ、臣下である長官を窮地に追い込むことになります。争わずに受け入れるという天皇の帝王学からすれば、お立場上、つらいことですが、いずれの選択も困難です。
本来なら、宮内庁側がこのような質問を最初から拒否すべきなのです。ところが、あろうことか、ほかならぬ宮内官僚のトップが誤解のタネを振りまいているのですから、何をか言わんや、です。
陛下の御不例以来、投げかけられている問題の核心は、続いて記者が投げかけている、天皇のご公務、皇太子のご公務のあり方をどう考えるのか、にほかなりません。しかし長くなりましたので、次回、あらためて考えたいと思います。