案の定、前提が違う!! 池上彰先生の「女性宮家」創設賛成論は「天皇=特別公務員」(令和6年8月30日)
池上彰先生の「皇位継承」論を検証しています。前回の続きです。
◇1 なぜいま「不安定性」が強調されることになったのか?
池上先生はまず、皇位継承に関する現下の課題は何かを問います。
そして、現在の皇位継承制度において、将来的に皇位を継承する人物がいなくなる可能性を指摘します。2019年5月1日以降、皇位継承権を持つのは秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまの3人のみで、男系の男子しか継承できないため、女性や女系の男子には権利がない。このため、悠仁さまが結婚し、男の子をもうけることが唯一の解決策となり、そうでなければ皇位継承者がいなくなるリスクがある。したがって、皇位継承の安定性を確保するための制度見直しが求められているというわけです。
まさに政府・宮内庁の論理で、一見、話の筋が通っているように見えますが、違います。第一、皇位継承が安定的でないのはいまに始まったことではありません。ほかならぬ女帝・女系継承容認のパイオニアたちが、有史以来、「綱渡り」だったと解説しています。
それでも男系主義は今日まで続いてきたのです。つまり、政府・宮内庁も、池上先生も、不安定性を強調しすぎなのです。それならなぜ、いまさら不安定性が強調されるようになったのか、そこがポイントです。
前にも申し上げましたが、明治の憲法草案起草当時、女帝認否は「火急の件」でした。明治天皇に皇男子はひとりもおられませんでした。案の定、女帝容認論が盛り上がりましたが、結局、明治人は女帝・女系継承を否認しました。明治の日本人は合理主義的で、現実主義的でもありました。それでも女系は認められませんでした。池上先生はなぜだとお考えでしょうか? よく考えるべきではありませんか?
それともう1点、「悠仁親王に男子が誕生することが唯一の解決策」と断定するのはいかがなものでしょうか? 今上陛下に男子が誕生する可能性はまったくゼロだと言い切れるのでしょうか? 実際、一時期、秋篠宮文仁親王の次の世代が不在だと喧伝されましたが、悠仁親王が誕生されたではありませんか? 先生の現状分析はあまりに常識的すぎます。
◇2 126代の皇統はなぜ男系主義なのか?
池上先生の現状認識と問題意識が常識的なら、その対策も常識的なものとならざるを得ません。それが「女性宮家」創設です。
いわく、皇位の安定的な継承のためには、女性宮家の創設や男系女子の皇位継承を認めることが有力な対応策とされている。現在の皇室典範では、宮家は男系男子に限られており、これを改正することで愛子さまや眞子さま、佳子さまが皇位継承権を持つことが可能になる。歴史的には女性天皇も存在しており、最近の世論調査でも女性天皇に賛成する意見が多い。しかし、男系女子の皇位継承を認めても、その子供は女系となるため、将来的には悠仁さまの子供が男の子でなければ皇位が途絶える可能性がある。その場合、女系天皇を認めるかどうかの議論が必要になる。2005年には有識者会議が設置され、女子や女系の皇族に皇位継承資格を拡大することが適当であるとの報告があったが、その後、悠仁さまが誕生したため、法案の提出は見送られた。
池上先生が政府・宮内庁の広報マンだとするなら、同じ論理が展開されるのは致し方ありませんが、問題は「皇位の安定性」とは何か、そして「皇位」とは何か、です。
政府・宮内庁が平成になって、女帝・女系継承容認に舵を切ったのは、池上先生の発想も同様でしょうが、天皇は憲法が定める「国事行為」をなさる「象徴天皇」=特別公務員であるという前提にあります。つまり、女系容認の目的は、正確にいえば、「皇位の安定」ではなくて、「国事行為の安定」なのです。
「国事行為」をなさる天皇が不在になれば、国会さえ開けません。たとえそうなったとしても、憲法を変えることもできません。国家は機能不全に陥ります。しかし「国事行為」をなさる「特別公務員」が天皇なら、男女の別は問いませんから、皇室典範第1条の「男系男子」を廃止しさえすれば、「皇位継承の有資格者」は一気に増えます。「女系」容認に傾くのは理の当然です。容認論者たちはそれを「皇位の安定性」と称しているわけです。
しかし「国事行為」天皇がすなわち天皇なのか、です。国民の多くは「象徴天皇」を支持していることになっていますが、「国事行為」をなさる天皇を支持しているということなのでしょうか? 見きわめなければなりません。
2.5代「象徴天皇」が「天皇」だと考えるのなら、いざ知らず、そうではなくて、126代続く天皇こそが「天皇」だと考えるなら、話はまったく変わります。126代天皇は間違いなく「男系」だからです。それならなぜ、男系なのか、そこが重要なのに、政府・宮内庁の広報官を自認しているらしい池上先生は探究しようともしません。
なぜでしょうか? なぜ政府・宮内庁の尻馬に乗って、歴史にない女系継承容認論、「女性宮家」創設論を展開しなければならないのでしょうか? 近代の終身在位制のもとで女系継承を認めれば、万世一系の皇統は保てません。それでもなお女系を容認するのは、皇室の歴史に終止符を打つことになりませんか? それは「皇位継承の安定化」といえますか? 枝を矯めて花を散らすの喩えそのものではありませんか?
危機を言いつのって、女系継承を容認する対策ではなく、男系の絶えない「制度の見直し」を、なぜ考えようとしないのでしょうか? 池上先生ともあろうものが、ジャーナリストとして、政府・宮内庁に対して、なぜそう指摘しないのでしょうか?
また長くなってしまいました。今回はこの辺で。(つづく)
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