【速報版】オーストラリア議会で可決された青少年のSNS禁止法案のポイント
オンライン安全法の改正法案2024が可決
オーストラリア議会上院は28日、16歳未満の子どもがSNSを利用することを禁止する法案である「オンライン安全法改正法案2024:Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Bill 2024」が可決されました。
この法案は、現行法である「オンライン安全法2021(Online Safety Act 2021)」の改正を目指すものです。
この法案は、SNSから生じるデジタル・リスク(いじめ、性的搾取、自傷誘導など)から青少年を保護するための法的アクションであり、力強い実行力を持って彼らを保護することを目指すものです。
罰則規定を含む強制力のある法規制の施行により、青少年対するデジタル・リスクを軽減することが可能となるでしょう。しかし、彼らがSNSを介して築き上げた友人とのつながりや有益な情報さえも遮断される恐れは否定できません。
この法案では、年齢認証により、16歳以下の青少年のSNS利用を禁止しています。この、年齢認証の動きは、国際的な青少年保護政策の潮流となっており、年齢に適したデジタル利用環境を整備するための取組が国際機関や諸外国により検討されています。
しかし、国の法律として、禁止を決定したケースは、オーストラリアが初です。
子どもの保護と子どもの権利
筆者は、経済協力開発機構(OECD)の「デジタル環境の子どもの保護に関する勧告(Recommendation of the Council on Children in the Digital Environment)」の策定に向けた専門家委員会の委員を務め、各国の研究者や政府関係者などと共に本勧告文の策定に関与しました。
OECD勧告では、「デザインによる年齢に適した子どもの安全(age appropriate child safety by design)」を提供するための技術的措置を勧告しております。
しかし、OECD勧告は、国際連合子どもの権利条約(Convention on the Rights of the Child)を前提とした上での子どもの保護を規定しています。
この子どもの権利条約では、「守られる権利」だけにとどまらず「参加する権利」をも定めています。
「守られる権利」と「参加する権利」
本法案は、デジタル・リスクから「守られる権利」に注力が注がれていますが、デジタル社会に「参加する権利」がその引き換えとなってしまっていると言えるでしょう。
オーストラリアも子どもの権利条約の締約国でありますし、OECD加盟国です。
デジタル社会に「参加する権利」がないがしろにされるのであれば、青少年のデジタル・ウェルビーイングが軽視されてしまうという恐れも生ずるでしょう。
SNS事業者の自主的取組の必要性
その一方で、SNS事業者においては、「デザインによる年齢に適した子どもの安全」への取組が不十分だったのかも知れません。
OECD勧告が制定されたのは、2021年5月です。それから国際社会において、SNS事業者に対して、青少年のデジタル環境の安全環境整備への働きかけがなされてきました。
もし、SNS事業者が、青少年の安全利用のための自主的取組を積極的に講じていれば、今回の法案は制定されなかったのかもしれません。
「オンライン安全改正法案2024」の概要
以下に、「オンライン安全改正法案2024:Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Bill 2024」の要点をまとめます。
「オンライン安全改正法案2024:Online Safety Amendment (Social Media Minimum Age) Bill 2024」
主要な内容
最低年齢要件の導入
年齢制限付きソーシャルメディアプラットフォームにおいて、16歳未満のユーザー(年齢制限対象ユーザー)がアカウントを作成できないよう、合理的な措置を講じる必要。
罰則
最低年齢規定に違反した場合、プラットフォーム提供者には最大30,000ペナルティユニットの民事罰則が科される。
情報収集とプライバシー保護
年齢制限の遵守を目的として収集された個人情報には厳格なプライバシー保護が適用され、不適切な使用や開示があった場合にはプライバシー侵害とみなされる。
必要がなくなった情報は速やかに破棄されるべきであり、破棄しなかった場合もプライバシー侵害と見なされる。
監督および執行
オンライン安全コミッショナーが、プラットフォームのコンプライアンスを監視し、必要に応じて情報を収集する権限を持つ。
違反が確認された場合、コミッショナーはプラットフォーム提供者に通知を行い、公表することも可能。
移行期間
法案成立から少なくとも12か月後に開始。
この期間中に、事業者は規定を遵守するための準備を整えることが求められる。
レビューと見直し
最低年齢要件の導入後2年以内に独立したレビューが行われ、その結果が議会に報告される。