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【研究メモ】きょうだいで事業承継を進める共有型リーダーシップチームを組成するとは!? ~ Cisneros et al.(2020) Successful family firm succession: Transferring external social capital to a shared-leadership team of siblings からの学び
Cisneros et al.(2020)は、ファミリービジネスにおいてきょうだいで共有型リーダーシップチームを組成し、先代経営者から、外部社会関係資本を引き続ぐとともに、社内でどのように共有していくかのプロセスを明らかにしました。
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先代経営者が1人で担っていた機能を、きょうだいで共有型(シェアド)リーダーシップチームを形成し、引き継いでいくという、きょうだいでの承継は、良好な関係性を保てていれば、意思疎通がしやすく、基盤を固めやすいのかも知れませんが、"ビジネス"だけでなく、”家族”という関係性からの影響も強く受ける分、簡単ではないのでは? という印象がありますが、論文中では、こうした形態がより一般的になってきているとの指摘もありました(Cater & Justis, 2010; Cisneros & Deschamps, 2015; Cater et al., 2016; Cater & Young, 2018)。
また、集団型リーダーシップを重視しして、チームとしての承継に取り組んでいくのも、ミレニアル世代なファミリーメンバーの一つの傾向との指摘もありました(Hidayati et al., 2020)。Cater & Justis(2010)がこうしたチームのことを、共有型リーダーシップ・チームと呼んでいます。
ファミリービジネスの事業承継においては、外部との社会関係資本を先代経営者から、後継者にどう引き継いでいけるか?というのは大きな課題になっているみたいです。
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本論文で面白いのは、ファミリービジネスにおける事業承継の状況を、きょうだいでの承継に絞り、しかも元々社内にいた承継者と、事業承継を機に社外から参画した後継者との間で、どのように社会関係資本の共有がなされているかを明らかにした点です。
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論文化を目指すためには、ここまで限定的なセッティングでの分析を進める必要があるのですね!
比較的規模が小さい企業が多いファミリービジネスにおいては社内のリソースはかならずしも潤沢とは言えない場合もあるかと思います。社外のネットワーク(社会関係資本)を通じて、リソースを得られるかどうかは、死活問題に繋がってくるところもあるかと。事業承継を機に、先代経営者が築いていた、外部との繋がりが断たれてしまうのも問題です・・・
先代からのESCを引き継ぎつつ、自身が持っているESCと統合し、強化・更新していくプロセスを、継続的に行っていけるファミリービジネス企業が、淘汰されずに残っていくのだなと感じました。
ファミリービジネスに限らないかもしれませんが、”承継の際にチームで先代経営者が担っていた機能を引き継いでいく”というのは大事な視点だなと思っていたので、共有型リーダーシップ・チームの視点は、とっても興味深かったです!