先代経営者の”手放せない想い”が事業承継にもたらす影響とは?~Umans et al.(2018)「ファミリービジネスにおける後継者計画」からの学び
円滑な事業承継を進める上で、後継者の育成は重要なテーマですが、それと同時に、先代経営者(現経営者)が、自らの”経営者としての役割”を手放し、次の代に渡せるかどうか? ということも、とても大きな要素だと思います。
実際にインタビューをさせていただいたり、統計資料を見ても、先代経営者が、なかなか役割を手放せないことが、経営陣の平均年齢を押し上げ、事業承継を遅らせている側面もあると確認できています。
確かに、起業し、苦楽をともにした会社なので、”自分”と”会社”の境界が非常に曖昧になっていることは容易に理解できます。
ただ、企業体は、将来にわたって事業を継続していく(Going Concern)ことが前提になっているところもあるので、適切なタイミングで、後を託す決断ができるかどうか?は、ある意味で経営者としての最後の大きな意思決定なのかもしれません。基本的には、1回切りのことなので、経験学習が働かないですし、合理的に割り切れない、感情的な問題も大きいですし。
Umans et al.(2018) Succession planning in family firms:family governance practices, board of directors, and emotions
は、まさに先代経営者の感情が、事業承継プロセスに与える影響を、定量的に分析した研究です。
分析の結果、ガバナンス・メカニズム[ファミリーとビジネスの間をつなぎ、組織の利益を実現するような自発的な行動]の利用が後継者計画の質を高めるものの、CEOの会社[経営的な役割]についての手放しにくさが、このプラスの効果をある程度弱めていることを示している。つまり、CEOの手放したくないという感情が高ければ高いほど、取締役会の役割が後継者計画の質に及ぼすプラスの効果は低くなるとのことです。
「実践的示唆」のパートでも、CEOのネガティブな感情が事業承継計画の先延ばしに繋がるので、外部アドバイザーがCEOを支援する重要性について言及されています。
合理的に割り切れない、先代経営者の感情や意思決定への逡巡や、逆に、意思決定するときに何がトリガーになっているかについて、もう少し深めていきたいなと考えています!
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