【研究メモ】 創業者の引退に対する恐れや不安にどう寄り添い、乗り越えるのか? 解まではなし・・・なかなかにハードル高し・・・ ~Ibrahim et al.(2001) 大規模なファミリービジネス企業における事業承継の研究 からの学び vol.02
前回に続き、Ibrahim et al.(2001) 大規模なファミリービジネス企業における事業承継の研究 からの学びの整理です。
ファミリービジネス企業の創業者が、引退期にさしかかったとき、事業承継において、経営のコントロールを手放すことに躊躇するメカニズムを、ケースヒストリーという手法を用いて、公開情報に基づき明らかにしました。こういう形での実証的な研究も成り立つのですね。調査対象となっているのが、有名企業だからこそというのはあると思いますが・・・
概要的な部分は、前回お伝えしましたが、今回は、事業承継を進める上での阻害要因についてまとめてみたいと思います(論文で挙げられているポイントを再構成して、端的に整理してみました)。
本論文で扱われた、Quebecor 社のケースでは、事業承継の阻害要因として、特に重要だと感じた6点をピックアップしてみました。制度的な影響や、後継者(子)側から起点となる原因もありますが、少なくとも本件については、創業者のキャラクターや想いからの影響が大きそうです(そして、多くの会社さんでも程度の差はあれ、同様の状況はありそうです)
引退期において、創業者がいかに経営を手放すことへの恐怖や不安を乗り越えることができるかが大きいのだと思いますが、そこへの打ち手については、本論文の中でも具体的に言及されていなかったかなと思います。
課題として指摘するのは簡単ですが、自らが創業し、長く経営した会社は、まさに自分自身と同一化している創業者も少なくないのではと思います。そのような中で、どうトランジションを進めていけるのか?進めてみようかなというモチベーションが高まってくるのか?
ある程度の年齢になったときに、創業者が事業承継に対して前向きに臨むようになったケースでは、どのようなメカニズムが働いているのか? 先行研究や、実際の現場インタビューを通じて、深堀りしていきたいなと思います。