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【気になった論文】止まらない下痢が続く(Gastroenterology 2025年2月号)

消化器系の雑誌を読みながら、気になった論文、面白いと思った論文を備忘録がてらに記載しておきます。

Gastroenterology 2月号から

https://www.gastrojournal.org/issue/S0016-5085(24)X0002-5#closeFullCover


The Mysterious Cause of Refractory Diarrhea and Weight Loss in a Young Woman

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(24)05206-5/fulltext

ChatGPT要約

背景 22歳の女性が8か月間、1日7~8回の水様性下痢と25kgの体重減少を経験しました。既存の治療(抗生物質、酸抑制療法、電解質補正など)では効果がなく、症状は悪化し1日の便量が最大10,000mLに達しました。

臨床所見と検査結果

  • 身体検査:栄養状態不良で痩せ衰えていたが、腹部は平坦で異常所見なし。

  • 実施された検査

    • 大腸内視鏡検査で末端回腸と直腸に潰瘍を確認。

    • 小腸粘膜の生検で中~重度の絨毛萎縮、局所的な化膿性炎症、肉芽腫を確認。

    • 通常の細菌培養や病原体検査では原因不明。

診断

次世代シークエンシング(NGS)を用いた病原体解析で、Stenotrophomonas maltophilia(S. maltophilia)による感染性腸炎と診断。


S. maltophilia の特徴

  • 病原性:免疫低下患者で日和見感染を引き起こす条件付き病原体。

  • 耐性:多剤耐性を持ち、特にβラクタム系抗生物質やカルバペネムに高い耐性を示す。

  • 治療法:第一選択薬として**トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)**を推奨。


治療と経過

  • 治療内容:TMP-SMX 960mgを1日2回服用。

  • 治療効果

    • 下痢が1日1回に減少。

    • 体重が35kgから48kgに回復。

    • 絨毛萎縮や炎症が改善。

コメント

Stenotrophomonas maltophiliaについては寡聞にして知りませんでしたが、非常に興味深い経過でした。また、電顕や次世代シークエンスを使って診断に至る熱量がすごいと思えた症例報告でした。似たような症例を経験したこともあったので、参考になります。

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