ERB マンサ・ムーサ VS ジェフ・ベゾス の翻訳・解説
こんにちは、かいねっしゅです。今回はERB第六シーズンの「マンサ・ムーサ VS ジェフ・ベゾス」を翻訳し、解説を行います。
本編動画
まずはこちらの本編動画をご覧になったほうが、より楽しめると思います。とりあえずラップの雰囲気を感じ取ってみてください。翻訳と解説を見るのはその後で十分です。
https://www.youtube.com/watch?v=fCeUvPL9rMc
翻訳解説
それでは翻訳解説にまいりましょう。今回のラッパーを紹介します。
人物紹介
・マンサ・ムーサ(منسا موسى (Mansā Musā)):中世西アフリカで栄えたマリ王国の第九代国王。当時にしては信じられないほど裕福であり、1324年から翌年にかけての贅の限りを尽くしたメッカ巡礼で有名である。この巡礼では一万二千人以上の奴隷、80頭のラクダに大量の金を運ばせ、道中では貧民に金を与え、モスクを建て、カイロでは持ち込んだ金が多すぎてインフレが起こったという。没年不明。
・ジェフ・ベゾス(Jeffrey P. Bezos):アメリカの実業家、経営者。1964年ニューメキシコ州アルバカーキ生まれ。大学卒業後は金融業に携わっていたが、インターネットの可能性を確信し1994年に Amazon.com(アマゾン社)を設立。ITバブル崩壊をも乗り切って同社を世界有数の大企業に成長させた。2025年2月現在、世界有数の大富豪であり、その総資産は2000億ドル(約30兆円)を超える。
歌詞
原語での歌詞(リリック)の下に日本語訳を付し、さらにその下にかっこ書きで解説を付しました。
第一ヴァース:マンサ・ムーサ
Wallah, by the holy Quran I lay my hand upon
神に誓って、俺は聖なるクルアーンに手を置く
(wallah(والله) は「神に誓って」「本当に」という意味のアラビア語。)
I blaze Bezos, inflict inflammatory damage on
ベゾスに火を放ち、アマゾンを炎上させて
(下段参照。)
Amazon, burn it down like when they put the cattle on
牛を放牧したときみたいに焼き尽くしてやる
(森林のアマゾンは2010年代末から2020年にかけて大規模な火災に見舞われており、これは地元の畜産業が原因ではないかと考えられている。この火災をアマゾン社の創業者ベゾスにかけ、お前を焼き尽くすと挑発している。)
The hottest on the map since the Atlas of Catalan
カタルーニャ地図以来地図上で一番アツい男が俺だ
(カタルーニャ地図は1370年代に作成された世界地図で、マンサ・ムーサ統治下のマリ王国の裕福さが記述されている。)
The King of Mali, with gold bars you can't escape from
俺はマリの王、この黄金の檻からは逃れられねえぜ
(bars には「格子」の意味があり、またラップ用語で台詞を意味する。大量の黄金を有するムーサのラップスキルからは逃れられないのだと言っているのである。)
Lyrically I pack heat, you pack a tape gun
俺はリリックという武器を持ってる、けどお前はテープガンしか持ってない
(pack heat は武器を携帯するという意味。テープガンは梱包用の道具。ベゾスのラップは下手くそだろうと馬鹿にしている。後半の直訳は「お前はテープガンを携帯してる」だがニュアンスを考えて上のように訳した。)
I'm landing blows you can't dodge, this ain't sales tax
俺の打撃は避けられんぞ、何しろ消費税じゃあないからな
(アマゾン社は様々な手法を駆使して納税を回避しようとしていることで知られる。だがムーサは、納税とは違って俺の攻撃は逃れられないぞとさらに挑発をかけている。)
I left footprints in the Sahara, I know hot tracks
サハラに足跡を残した、アツい足跡を知ってるぜ
(hot tracks というのは文字通りサハラ砂漠に残した足跡と、素晴らしいラップというダブルミーニング。)
I bust dorks like dot-com bubbles when I hit 'em
ITバブルみたいに馬鹿オタクどもを崩壊させてやる
(ITバブルとは1990年代後半から2000年にかけて米国のネット企業の株価が急騰した現象のこと。2000年に崩壊した。)
Nah, you can't spit, you got that Al Gore rhythm (Ha-ha!)
お前に上手いラップなんかできねえ、アル"ゴミ"リズム使ってるもんな!
(spit は「唾を吐く」という意味だが「ラップをする」という意味でもある。Al Gore rhythm はアルゴリズム(algorithm)をもじったもので、ゆっくりした話し方がネタにされる元米副大統領アル・ゴア(Al Gore)氏とかけている。アマゾン社はアルゴリズムを活用して効率的な運営を行っている。)
Here's a nugget of advice to get your union problems handled
労組問題を解決するためのアドバイスを与えてやる
(アマゾン社は労働組合潰しを行ったと非難を受けている。なお、メッカ巡礼の道中で人々に金を与えたこととも関連があろう。)
Want workers that don’t piss? Hire some camels!
ションベンしない労働者が欲しいか? ラクダを雇いな!
(アマゾン社はその過酷な労働環境で批判されている。中には配送ドライバーがトイレ休憩を許されず飲料ボトルに排尿したという声さえある。ラクダは沙漠で生きるため排尿が極力少ないことから、こいつを雇えば? と言っているのである。また、piss は「不平を言う」という意味もあり、恐らくここでは「小便する」と「不平を言う」のダブルミーニングである。)
I expanded horizons with libraries and mosquеs
俺は図書館とモスクによって知識と理解を広めた
(ムーサは領土にアラビアの知識人を連れてきて図書館や大学を建て、知の涵養に努めたと言われている。彼の統治下で建てられたサンコレ・マドラサには100万冊の写本があったとされ、これは世界最大級だった。)
While you chopped off the top of all thе mom and pop shops
でもお前ときたら家族経営の店をぶっ潰してる
(アマゾン社の成功は結果として数々の中小小売業者の倒産を招いた。自分は人々を助けたのにお前は人々を窮地に追いやったと罵っている。)
All you widened was the gap between the haves and have-nots
お前が広めたのは持てる者と持たざる者の格差だけ
(ベゾスのような億万長者は、しばしば富裕層と貧困層の格差を大きくしていると批判される。)
Now they ordering or living in your cardboard box
今じゃあいつらお前の段ボールを注文したり住んでたりしてるぞ
(持たざる者は生活必需品をアマゾンで買っているか、もっと貧しければホームレスのように段ボールで作った「家」で生活していると言っている。段ボールはアマゾンの商品を梱包するのに使われる。)
第二ヴァース:ジェフ・ベゾス
At Amazon, our product research is phenomenal
アマゾンの製品調査力は驚異的だ
(後の文脈からして、おそらく research は「調べる」という意味。)
But I've never heard your story, and I own Audible! (Hahahaha!)
でも君の話は聞いたことがないね、Audible も持ってるのになあ!
(Audible はオーディオブックを提供しているアマゾンの子会社。その中には情報・教育関係のものも多くある。しかしその中にもマンサ・ムーサの話は見当たらないぞと言っている。)
So go dig some more gold, there, Kanye West Africa
だからもっと金を掘ってこい、西アフリカのカニエ・ウェストよ
(カニエ・ウェストはシカゴ出身のラッパー。また彼のラップの gold digger にもかかっているだろう。)
I'm hotter than the soundtrack to Battlestar Galactica!
俺は宇宙空母ギャラクティカの音楽よりもアツいぜ!
(『宇宙空母ギャラクティカ』は米国のSFドラマシリーズで、Amazon Prime で配信されており好評である。これを使って自分はイケてると主張している。)
Never trade blows with jazzy Jeff Bezos
ハデハデなジェフ・ベゾスと戦うとか絶対やめとけ
(自分の名前をDJジャジー・ジェフとかけている。DJジャジー・ジェフは米国のデュオ DJ Jazzy Jeff & the Fresh Prince のDJ役であり、彼の名声と同じく自分は力強いと誇示している。)
Egghead with a huge set of huevos
でっけえ"タマ"ゴを持ったハゲ頭エリートだぞ
(ベゾス氏の頭はハゲ頭であり卵に似ている。また egghead には知識人という意味がある、ベゾス氏の学歴もそうである。huevos はスペイン語で卵を意味するが、俗語では睾丸の意味もある。)
I serve more people on the web than Spider-Man
スパイダーマンよりも電"網"でサービスを提供してんだ
(蜘蛛の糸の力で人々を助けるスパイダーマンよりもウェブ(電「網」)でたくさんの人を助けていると自慢している。)
You rap like a soccer mom, that's why you roll with caravans
君のラップはまるで教育ママ、そりゃキャラバンで移動するわな
(soccer mom は子供にサッカーを習わせるような教育熱心な母親の意味で、キャラバン(※ミニバンの一種)で移動するイメージがある。またキャラバンは隊を組み沙漠を移動する人々の集団を意味し、メッカ巡礼で膨大な数の人々やラクダと移動をしたことにもかかっている。)
You're overrated like you leave economies inflated
君は過大評価されてる、君のせいでずっとインフレした経済みたいだ
(マンサ・ムーサがメッカ巡礼で大量の金を人々に配ったせいで、アフリカの経済はインフレーションを起こしたと伝えられている。)
You're about to taste some of that salt that you traded
今に君が交易した塩くらいしょっぱい目に遭うだろうな
(ムーサは旅の途中で数々の交易をおこない、塩を手に入れた。)
What's the long-term play in giving your wealth away, eh?
自分の富を捨てることの何が長期的利益になるんだよ、えぇ?
(ムーサがメッカ巡礼で人々に金を与えたり、モスクを建てたりして自分の富を手放したことを経営者目線で馬鹿にしている。)
'Cause now I feed your whole country for the price of a cup of coffee per day!
だって今じゃ一日一杯のコーヒー代で君の国全部養えるからな!
(ベゾスのような億万長者の持つ富をもってすれば、アフリカなどの貧困国を救済できるといわれる。ベゾスが手にする一日の収入だけでマリの人々を貧困から救えるのだと、自分の裕福さを豪語している。)
So bow to me like you did to the king of Cairo
だからカイロの王にやったみたいに俺に頭を垂れろ
(ムーサは巡礼中に寄ったカイロでマムルーク朝のスルタン(王)に会い、最初は躊躇したものの最終的には敬意を表し礼をしたという。だがこの時、彼はスルタンではなくアッラーフに敬意を示したのだと主張したとされる。)
You're 'bout as hack as Saudis tapping my iPhone
君は俺のiPhoneを盗聴するサウジ人くらいのハッカーだよ
(ジェフ・ベゾスの携帯電話は2018年にサウジアラビア皇太子のムハンマド・ビン・サルマンによって盗聴された。)
You'll be more ashamed than when you accidentally killed your mom
間違って母親を殺したときよりも恥ずかしい思いをするだろう
(西アフリカの年代記『タリク・アル・ファタシュ』によれば、マンサ・ムーサはメッカ巡礼の前に誤って母親を殺してしまったと書かれている。)
When I make you shit your pants worse than Diapers.com
君のパンツをオムツ.com よりも糞まみれにしてやったらな
(オムツ.com (Dipers.com)はアマゾン社が2017年まで保有していたドメイン。ムーサへの侮辱である。)
第三ヴァース:マンサ・ムーサ
Ayo, Lex Loser, you look like a villain at Comic-Con
ようレックス・ルーザー、コミコンじゃ悪役みたいだ
(レックス・ルーザーは漫画『スーパーマン』に登場する悪役。ベゾスはその外見や経営者としての面などから、よくレックス・ルーザーみたいだと言われる。コミコン(Comic-Con) は漫画や漫画関係のカルチャーについての大規模イベントである。)
You gettin' ate up, you should've battled me on Ramadan! (Woo!)
お前は喰い尽くされるぞ、ラマダン中に戦ったらよかったのにな!
(eat up は「食い尽くす」「使い尽くす」などの意味。ラマダンはイスラーム暦の9月で、ラマダン中は日中飲食をしない。ラマダンなら自分も空腹だったから、その状態で戦えばお前も勝てたかもなと挑発している。)
A harem of women is what I had on my staff
ハーレムの女たちは俺の部下だ
(イスラームは一夫多妻制を認めている。実際ムーサにも最大四人の妻がいて、巡礼の時にも連れて行った。)
You married one woman, Jeff, and she cut you in half (Shinck!)
ジェフ、お前は一人の女性と結婚して、んで半分にされちまったな!
(ムーサと違ってベゾスは一回につき一人としか結婚できない。1993年にマッケンジー・スコットと結婚した彼は、2019年に離婚し、彼女に380億ドルの和解金を支払うこととなった。)
David Pecker picked a pack of your peter pics
デビッド・ペッカーにチ〇コ写った写真を取られやがって
(タブロイド紙 National Enquirer の元発行人であるデビッド・ペッカーは、2019年にベゾスの性器の写った写真を含む様々な写真を使って脅迫されたとベゾスによって告発された。peter は隠語で男性器を意味する。)
Now your new girl got them "Feed me, Seymour" lips
今のお前の婚約相手はタラコ唇
(ベゾスの新しい交際相手であるローレン・サンチェスの外見を揶揄している。)
And it turns out, her own brother was the snitch
そして実は、裏切り者はそいつの兄弟だったんだよな
(National Enquirer にベゾスのプライベートなメッセージを売却したのは、実はサンチェスの兄弟のマイケルだった。)
He... woo! Fix your face, no wonder you bought Twitch (Woo!)
そいつは……うえぇ! 顔どうにかしろよ、お前が Twitch を買収したのも無理はねえ
(ムーサは上記の不祥事についてさらにディスを加えようとするが、ベゾスの顔を見て止めてしまう。fix face は「くたばれ」という意味の罵倒語でもあるが、ここではベゾスが不祥事の当事者となった不快感で表情を制御できなくなっていることを言っていると思われる。またアマゾン社は2014年に配信プラットフォームの Twitch を買収している。)
Now let me really break it down because there's more to him
砕いて説明させてくれ、まだまだこいつについて色々あるからな
(ディスを再開する。なお代名詞が him になっていることから、ここと以下三行はベゾスではなく視聴者に向けて喋っている。)
He ain't a Bezos, his real name is Jorgensen
名前ベゾスじゃないよな、本当はジョーゲンセンだ
(ベゾスの出生名はジェフ・プレストン・ジョーゲンセン(Jeff Preston Jorgensen) であり、苗字は「ベゾス」ではなかった。)
Hah, but daddy loved unicycles more than him
はは、でも親父はこいつより一輪車のほうが好きだった
(ベゾスの父は一輪車クラブの会長になるほど一輪車に熱中していた。息子よりも一輪車のほうが好きだったろうなとベゾスを侮辱している。)
So he rolled out, now that's a Blue Origin!
だからそいつは出ていった、それが今の「ブルー・オリジン」だな!
(ベゾスの父はアルコール依存症に悩み、ベゾスの世話をあまりしなかった。ムーサはこれを悲しい裏話とみなし、ベゾスが作った企業ブルーオリジンと、「ブルーな(悲しい)気分になる発端」という意味の blue origin をかけて揶揄している。)
Take one small step towards a different prophet
違う預言者に小さな一歩を踏み出せ
(ニール・アームストロング船長の「これは人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」を利用した部分。prophet(預言者) は同音語の profit(利益) にかかっており、お前も金稼ぎばっか考えずイスラームの教えを受け入れろと迫っているのだと思われる。)
'Cause these days you just as cocky as your rocket
このごろお前はロケット並みに生意気だからな
(ベゾスの立てた会社がロケット産業をやっていることにかけたディス。cock は男性器の意味があり、これはブルーオリジンの開発したとあるロケットが男根のような形をしていたことにもかかっている。)
I'm the cream of the crop, I'm on top, I'm ice cold
俺は最高、俺は頂点、冷たさは氷点
(cream of the crop は「最高」という意味。)
This Muslim just served you: Allah mode!
このムスリムが提供してやる――アッ・ラー・モードだ!
(デザートのア・ラ・モードとイスラームの唯一神アッラーを合わせた洒落。ア・ラ・モードには果物などの上にアイスクリームが乗っており、よって上の cream of the crop や ice cold にもかかっている。あるいは「唯一神モード」則ち今の俺は無敵状態だと勝ち誇っている意味合いも入っているかもしれない。)
第四ヴァース:ジェフ・ベゾス(&Alexa)
Musa, I'm lyrically lethal, I'm relentless, African verse immune
ムーサ、俺のリリックは致命的、俺は無慈悲でアフリカのヴァースには免疫があるぞ
(アフリカで様々な感染症が流行っていることを踏まえた表現。)
If I wanted to waste my life on desert spice, I'd watch Dune!
沙漠のスパイスで時間を無駄にしたけりゃデューンを見るさ!
(『デューン』は1965年発表の沙漠を舞台にしたSF小説で、二度映画化されている。ムーサに対し、何年もかけてスパイスを売買するくらいなら映画でも見てたほうが有意義だろと言っている。)
What did we give to MacKenzie, 40 billion? So what?
マッケンジーに何をあげたって? 400億ドル? だから何?
(元妻のマッケンジーに渡すこととなった400億ドルもの和解金も、自分にとっては はした金に過ぎないと自分の裕福さを自慢している。)
Earning every penny back only took me a month!
その金回収するのに一か月しかかからなかったぜ!
(マンサ・ムーサの離婚に関するディスに対し、払ったお金もすぐ取り戻せると自分の収入の多さを誇示している。)
I went from Hobbit dork to slick orc physique
俺はオタクのホビットからムキムキのオークになったんだ
(ベゾスはアマゾン創業時と比べればはるかに鍛えられた体格となっている。なお、ホビットの名前は過去のERB「ジョージ R. R. マーティン VS J. R. R. トールキン」にて登場している。)
Now I'm Lord of the Rings… Take a peek! (Haha!)
今じゃ俺は「ロード・オブ・ザ・リング」だ……ちょっと覗いてみろよ!
(トールキンの小説を原作とした大ヒット映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズにはホビット族やオーク族が出てくる。「リング」はアマゾン社の保有するドアベルブランドのリング(Ring)にもかかっている。実際このシーンではリングのドアベルの音が鳴る。)
Three years to trek to Mecca? Man, you must be trippin'
メッカに行くのに三年かかった? 頭狂ってるに違いないね
(tripping は「頭が狂っている」という意味がある。現代人でムスリムでもないベゾスからすれば、西アフリカのマリからわざわざメッカまで行くのは正気の沙汰ではないと嘲笑っているのである。また、trip には「こける」という意味もあるので、道中こけまくったから三年もかかったんだろと馬鹿にする意味合いもあるのだろう。)
One click, I'll get you there overnight with free shippin'!
ワンクリック、送料無料で君をメッカまで送り届けてやるさ!
(アマゾン社が特許を有する 1-Click サービスでは、Prime に加入していればボタンを一回押すだけで商品を注文でき、翌日配送される。)
I'm hard corporate, top tier of the Forbes list
俺は堅実な筋金入りの企業家だ、フォーブスリストの頂点にいる
(hard corporate は hard と hardcore と corporate をかけているものと思われる。フォーブスリストは米国の経済誌『フォーブス』が毎年発表している長者番付リスト。)
You couldn't even hit top tier in Civ VI!
君は Civ VI でもトップティアになれなかったよな!
(Civ VI (Civilization VI) は戦略ゲームの一つ。マンサ・ムーサを使用できるものの、トップティアではないというのが一般的な意見である。)
I'm schooling you like Timbuktu, eating you like Whole Foods
トンブクトゥみたいに君を教育し、ホールフーズみたいに喰らい尽くしてる
(トンブクトゥはムーサが教育拠点として発展させた街である。またホーフルーズはスーパーのチェーンで、2017年にアマゾン社が買収した。要するにベゾスはムーサのことを徹底的に教育し、打ちのめしてやると凄んでいるのである。)
Your ship has sailed just like the dude who came before you!
君の船は君の前に来た奴みたいにもう出航しちまった!
(The ship has sailed. で「時すでに遅し」という意味になる。これは、ムーサの前にマリを統治していた Mohammed ibn Gao が遠征中はムーサに統治を任せるとして出航し、そのまま帰ってこなかったためにムーサが王位を継いだことへの言及でもある。)
'Cause you ain't Fire, can't hold a Kindle to me
君のラップは俺の足元にも及ばん、Kindle にも載せらんねえ
(A can't hold a candle to Bで「AはBとは比べ物にならないくらい劣っている」という意味になる。ここでは candle を近音の Kindle で置き換えてある。ムーサのラップは全然イケてないと馬鹿にしている。)
I got the flywheel flows, I revolutionized delivery
俺はフライホイールのフロウを得て配送を革命した
(flywheel flows はアマゾン社の成長を促進したフライホイール効果と、歌い回しという意味のラップ用語フロウをかけたもの。自分のフロウはアマゾン社の成長のように躍動していると自慢しているのだろう。)
Your talent's oddly puny like my tax bills
君の才能は俺の納税額くらいヘンに小さいな
(先述したように、ベゾス氏はいろいろな手法を駆使して納税額を少なくし、莫大な富を蓄えている。ムーサの才能はベゾスの全財産に対する納税額くらい小さいと言っている。)
Alexa, what do we have that he lacks?
Alexa、俺らにあってあいつには無いのは?
(Alexa はアマゾンのスマートスピーカーに付随するAIアシスタント。)
Skills (Hahahaha!)
スキルです(ハハハハハハ!)
(skill は訓練して得られる能力。また Alexa には「スキル」という、自分好みにAlexa をカスタマイズできる機能がある。)
翻訳解説は以上です。お読みいただきありがとうございました。
文章に誤りがあれば、お知らせください。
参考
・歌詞:Genius - Jeff Bezos vs Mansa Musa
・解説:ERB Wiki - Jeff Bezos vs Mansa Musa/Rap Meanings
・元動画:https://www.youtube.com/watch?v=fCeUvPL9rMc