「レ・ミゼラブル」かなり良くてウケる
最近アニメを見ることができず、これは「生涯オタクだと思っていたけど加齢とともにオタク文化から卒業する時」のやつだ!と思い興奮していたのですが、直近の作品が好みじゃないだけでまだまだオタクなのだと分かる作品がありました。
この作品です。
「レ・ミゼラブル 少女コゼット」
「レ・ミゼラブル」はもちろんタイトルくらいは聞いたことがあるものの「なんかヨーロッパの、ミュージカルとかそういう感じ!」というあいまいな認識でいました。なので原作には全然興味がなかったのですが、キャラデザが可愛いから視聴決定して全52話を一週間で見てしまいました。
感想➤面白いジャン……。
飽き性なので絶対に途中で脱落すると思っていたのですが、意外や意外、引き付けられて見れてしまいました。
大まかなあらすじは、帝政崩壊後のぐちゃぐちゃフランスを舞台とする、里子に出された先で強制労働をさせられる少女と前科を持つ善者おじさんの人生頑張りドラマです。
この序盤の児童労働描写がエグくて、3歳児が裸足のまま雑務や家事のすべてを押し付けられているさまが13話かけて描かれるのですが、正気?と思って何度も目を覆いたくなりました。里子に出した母親側の苦行ぶりも描かれるのですが、これもイジメや理不尽の連続でユゴーの馬鹿!もう知らない!と叫びたくなるくらいでした。
なんだよこの話…これが名作なのかよ…と思ってwikiを見たら、
原作にはない、またはほとんど記述されていないアニメオリジナルのストーリーもある。2 - 11話のコゼット側のエピソードの大部分や20話の修道院生活(序盤を除く)はほとんどが原作の僅かな記述を膨らませたエピソードとなっている。[出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』]
脚本の意向なんかい…ということで、いわれのない罵倒をしてしまったユゴー(原作者)には陳謝しておきました。ごめんねユゴちん。
ただそこまで徹底的に叩き潰されてから、徐々に幸せになっていくさまが描かれていって、最後にはみんなHAPPY END…となるので後味は最高です。
全体の構成としては、主人公の被虐少女コゼットいじめパート➤前科者おじさんと逃亡パート➤コゼット恋しちゃう?パート➤6月暴動とフランス動乱パート➤HAPPY END…パートとなっています。
貧困や格差という問題が主人公コゼットの視点から生々しく描写されることで、時代も国も大きく離れた問題でありながら視聴者には身近に感じられ、そこから蜂起した市民が時の為政者に迫る革命を起こす流れをすんなりと受け入れることができました。コゼットのような迫害を受ける少年少女は掃いて捨てるほどにいて、その子供たちを救うためには国の構造から変えねばならぬと義憤に駆られる気持ちもよく分かります。
するとそういう政治的なメッセージが強いのかというと、そうではなくて、より根源的な人間を描いているように感じました。「うわべの言葉ではなく行動から人を判断すること」「目の前で人が困っているのであれば助けること」「受けた恩義には恩義を持って返すこと」「人は変われると信じること」と、言われれば確かに大事だけど実際ムズくね?ということをまっとうに行い事態が好転していくので脳汁が出ます。ドミノが全部倒れる快感。
こういうメッセージを押しつけがましく主張されるとウザ…と思ってしまうのですが、そういう心配もなく、うわべの言葉で人を判断する人もいますし、全然変わらずにずっと悪党の奴もいますし、全く助けてくれないやつもいますし、あくまでも様々な人間がいることも描いている点が偉いです。主張のための物語ではなく歴史の中で主張を抽出するように描かれていて、そこには作劇上のウソを感じづらいために鼻につく感じはありませんでした。
主人公コゼットはとにかく善性の塊で、ひたむきに努力するしめげないし意志が強いし100点満点の超絶完璧ヒロインなのですが、一方で前科者おじさんジャン・バルジャンの苦悩が人間らしくて実によいなと思います。富も力もある上に性格が温厚で慈善家という超人でありながらも、常に「これでいいのだろうか」と悩ましげなのが完璧人間の描写として完成されていると思いました。現状に満足した超人などいないので。
コゼットの完璧さはある種キャラクター的と言いますか、漫画のヒロイン的な隙のなさなのですが、ジャン・バルジャンは逆に隙があることによってそれが完璧さを補填している形になっていて、その違いが二人の関係の歪さにも一役買っており、人間臭さというのは隙から匂ってくるのだなと感じたものです。
魂の形が違うので、いかにパラメータが完璧に見える二人であろうとも分かり合うためには言葉が必要で、しかし言葉だけでは伝えることができない気持ちがあり、行動によってそれが感じられるようになる、と相互理解の前提も描かれているように感じました。ジャン・バルジャンからコゼットにプレゼントを贈る際にコゼットの好きな色すら把握していなかったと気づくシーンや、6月暴動の中で敵方の仏軍が暴動を起こした学生たちを慮るシーンでは、行動によってはじめて自覚する体験が描かれていたように思います。
最終的には思いが伝わって、それをさらにつないでいく…という心のバトンが渡されるものですから、下記ツイートのような総評になるのです。
真面目なお題目でありながらも、それを決して押しつけがましくなく、時代の動乱の中の一幕として心の機微を描きながらエピソードで示すという技術的にも素晴らしい作品だったわけです。もしアニメベスト10を選ぶならば、自分なら入れたいと思う作品でした。
そのため、いま見たいアニメがない人にはおすすめしたいと思います。
でもね。
HAPPY END…はどうやらアニオリっぽいんです。原作だともっと主要人物が死にまくるし、エグキツ描写もたくさんあって、悪い奴がのさばり続ける話みたいなので、原作にあたる場合は気を付けてください。これは仕方ない。だって現実は終わらなくて今に至るまで続いているので仕方ないです。が、さっき送った陳謝は返せよユゴー!お前はやはり鬼畜小説家だ!
あと、コゼットの声優さんが名塚佳織さんのためアマガミで育った感性を持つ自分に刺さり、劇伴が松尾早人さんで「神のみ」でオタクに成った自分を奮い立たせ、キャラソンの特殊EDもあり、オタクへのサービスあってワロタになっていました。
名作ってマジ名作。
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