【第19回】 日本再生医療学会が出した「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」について(前編)
2024年4月30日予定通りに日本再生医療学会が声明・ガイドライン等として「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」を発表しました。
(出展:https://www.jsrm.jp/news/news-14993/)
エクソソームや上清液の問題点その他の話はこのブログで散々書いてきたので割愛させていただきます。
まず第一に今回の発表では、
・エクソソーム治療は今後対象となる分野・疾患の範囲が多岐にわたる可能性を秘めた分野である
・一方で現在までエクソソームを有効成分とする医薬品に薬事上の販売承認を与えた国はない
・日本細胞外小胞学会(ISEV)や各国にてガイドラインの策定が十分ではない
という現状に触れながら、エクソソームの品質の向上に向けた品質管理ガイドラインを掲げています。
これは皆さんご存じの通り、薬事未承認の粗悪なエクソソーム製品、調整物の投与がクリニックで横行している現状を危惧してのことです。
しかしながら、当機構が今回の発表で懸念しているのは、こういったガイドラインを利用した広告・宣伝が出てきてしまうことです。
例えば「わが社の製品は日本再生医療学会の発表するガイドラインに書かれている製造工程をクリアしたエクソソームなので、安全で安心で効果があります」
といった広告を目にしたら一般消費者はその情報を鵜呑みにして妄信してしまうのではないでしょうか?
たしかに日本再生医療学会はアカデミアの方や行政に携わって再生医療の法改正に関わっておられる有識者の方々がとても多い学会です。
しかし大前提として、日本再生医療学会は行政ではありません。厚生労働省医政局でもAEMDでもない、言ってしまえば一般社団法人の一つでしかないのです。
「ただの一般社団法人からの発信であればそこまで憂慮する必要はないのでは?」
と感じる読者もいらっしゃるかと思いますので、なぜ当機構がこの内容を懸念するか少し説明させていただきます。
令和 6 年 4 月 15 日「再生医療等安全性確保法における細胞保管に関する考え方」公開についてという、ニュースが日本再生医療学会から発表されました。(出展:https://www.jsrm.jp/news/news-14628/)
このニュースは色々なメディアにも取り上げられました。
この発表の中で
"第 1 版 令和 6 年 4 月 15 日 公開 再生医療等安全性確保法における細胞保管に関する考え方(以下「本考え方」という。)は、 AMED 事業「再生医療実用化基盤整備促進事業」(課題名:再生医療等安全性確保法に従い実施される再生医療等臨床研究および再生医療等製品等の開発を目指す医師主導治験等を支援する再生医療ナショナルコンソーシアムの実現)の支援を受けて作成しました。"
とあり、同日、再生医療を行っている医療機関に厚生労働省より下記の資料が届きました。(出展:https://www.mhlw.go.jp/content/001245723.pdf)
リンク先を見ていただければわかりますが、日本再生医療学会の名前で発表した資料がそのまま添付されております。
この発信は日本の再生医療の法律やルールを作成しているのが一般社団法人の「日本再生医療学会」という誤解を招きませんでしょうか?
実際に某厚生局の再生医療の窓口の方が仰ってましたが、医療機関・医師から「日本再生医療学会が出しているやり方でやれば、やっていいんですよね?」とよく問い合わせがあるそうです。
こんな背景があっての今回の「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス」ですから、間違いなく今後「日本再生医療学会が発表したこの内容でエクソソームを製造・管理したら臨床していいんだ」と考える医療機関がでてきます。
そうなるとこの業界に跳梁跋扈する倫理観のないビジネス重視の医療機関はなくせないでしょう。
次回につづきます。
(注:細胞外小胞=エクソソームとさせていただきます。)