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記号で描けば劣化がはじまる!(9月14日刊行漫画演出技法書『カタルシスプラン』外伝118)
実際の人間はもっとややこしいから複雑にしたいと思いがちだけど、キャラクターを創る時には外見も内面も個性をデフォルメするべきです。物語上ではシンプルでなければ伝わらないから。
…と、言うとキャラは記号化しなきゃって誤解する人がいるけれど、実は漫画やイラストで必要とされるのは記号とは似て異なるものです。
デフォルメは個性を尖らせて「鋭角にすることで読者のハートを刺し貫く」もので…記号にして単純化するためだけのものじゃないのです。わかりやすくすることは大事だけどそれだけじゃ駄目なのです。線は減らさなくても個性を強調することはできるし、実際線の多い傑作も存在するはずです。結果だけ見ると記号化して描いているように見えるかもしれませんが、それを生み出した人がやったことは記号化ではなくデフォルメなはずです。
手足を長く描いたり短く描いたり、目力強くするため瞳や瞼を太い線で描いたり、簡略化して点にしたり…これは表現したいことをより伝えやすくするためのデフォルメです。結果として目が真っ黒な楕円になっていたとしても描き手が目指したものはそこじゃないはずです。
形だけの真似は文化の劣化に繋がります。根っこを大切に考えましょう。
絵だけでなく、人間的個性も極端であれば物語を面白くする要素です。
単純化するだけでなく尖っていて引っかかりがなければ面白くないし、面白くなければ読みやすくだってなりません。読みやすさの原動力はキャラの魅力によるところが大きいのです。だから魅力の部分は本物以上に深く描いてクローズアップで魅せていいのです。目指すべきは単純化じゃなく魅力のアップです。
内面の尖りがドラマの本懐となるのです!
※本来のデフォルメという言葉は絵画や彫刻などで、対象を変形・歪曲して表現するという意味しかないのですが、ここでの意味は日本語化されたデフォルメ…「人物を誇張して変形・歪曲する」という意味です。