B.PREMIERドラフト制度に愛はあるんかえ?🤔
どうも、🐱(吾輩)である。
日本バスケファンの誰もが動向に注目しているB.PREMIERは、初シーズンの参入が26チームで確定した。思ったより多くてプレミア感なくない?
12月には大学インカレや高校ウィンターカップで将来を嘱望される多数の若手選手の活躍があり、B.PREMIERで導入されるドラフト制度にも注目が集まるわけだが…
これについてはXなどで否定的な意見が目立っており、「そこまでNBAの模倣する必要ある?」、「時期尚早では?」といったコメントが多いように感じている。
そこで今回の記事では、吾輩自身がB.PREMIERドラフト制度について調べながら感じたことなどをつらつらと書いてみる。
(1)「B.革新」のスタンス自体は大歓迎
大前提として吾輩は、「B.PREMIER」、「B.LEAGUE ONE」、「B.LEAGUE NEXT」の3階層からなる日本バスケトップリーグのリブランディングを大筋で歓迎している。
これまでは、B.LEAGUEというプラットフォーム上で「各チームが地域の中での価値と貢献を高めていく」という過程にいた。
そして、嬉しいことに我らが千葉ジェッツを含め多くのチームが、集客・収益・地域活性化を高い水準で実現するなど十分な成長を遂げるにいたった。
「B革新」とは、こうして十分に成熟を遂げたと判断されるチームで編成したリーグをトップリーグに位置づけて興行を行うことで、世間に対するバスケそのものの存在価値を高めていくプロセスだと理解している。
だからこそ集客力・経営力・地域との連携力などといった、いわば「長期的にバスケットボール興行の価値を高める運営ができるか」という切り口でPREMIER参入チームが選定されることや、競技成績を度外視することは納得性が高いと思っている。
ストレートに言うなら後から集客やスポンサーがついてくることを期待して見切り発車の大補強をした挙げ句、経営に行き詰まるような界王拳的ビジネスでは、チームひいてはリーグの長期的な価値の創造など望むべくもないのだ。
我々は和歌山トライアンズを忘れてはならない。
高いレベルで条件を満たしたチームだけが参入できるリーグ内で、試合の価値を高めるために戦力の均衡をはかり1つ1つのゲームをより見応えのあるものにしようという姿勢は説得力があるし、そのための仕掛けの1つであるサラリーキャップ導入も腑に落ちる。
こうした一連の制度改革の中で、チーム間の戦力均衡を目的としてプレミアに導入されるのがドラフト制度だ。
(2)「ドラフト」ってなんですか?
①つまりこういうこと
昔はプロ野球のドラフト会議の様子がテレビ中継されていたりもしたものだ。
ホテルの宴会場みたいなところで各チームの首脳陣がそれぞれ円卓に座り、正面の大モニターに「読売ジャイアンツ 第2巡目選択希望選手 ◯◯(●●高校)」みたいのが映し出されると、それをみた本人がガッツポーズして周りの友人達が胴上げする…みたいなアレだ。
要は「プロになりたいです」って手を上げてくれた人たちの中から、各チームがクジを引き合って交渉権を奪いあう大人たちの花いちもんめと思えば間違いない。
②ドラフトの種類
B.PREMIERでは「ウェーバー方式」を採用することがアナウンスされている。ウェーバー方式とは前シーズン下位のチームから順に希望選手を指名していく方法だ。
戦力均衡のための方策と考えると、このウェーバー方式は単純だが理にかなった方法と言える。
③ウェーバー方式の欠点(タンキング)と対策
指名順位が前シーズンの順位のみで決まる「完全ウェーバー制」を採用してしまうと、リーグとして看過できない致命的な欠陥が生じるリスクがある。
「次シーズンで高位のドラフト指名順位を獲得するために、現在のシーズンであえて積極的に勝ちにいかない」というチーム判断、いわゆるタンク行為が横行する可能性があるのだ。
例えばシーズン中盤で全26チーム中16位くらいの位置にいるチームがいたとしよう。どんなに頑張ったところでPO圏内に食い込むのは現実的でないとなれば、そのチームは、次シーズンに高位のドラフト指名順を得られるよう、積極的に勝とうとせず負けてOKという姿勢(あえて主力を休ませたり、プレイタイムを著しく減らしたりするなど)で試合に臨んでくる可能性があるということだ。
日本バスケ全体の価値を高めようという大前提の「B.革新」にあって、このタンク行為のリスクは絶対に避けたいところ。試合がWINNERSクジの対象になっていることを考えれば尚更あってはならない。
なので、現在発表されている情報では、B.PREMIERのドラフトはウェーバー制としつつも、最終的な指名順は抽選で決定する方式(前シーズンの下位チームほど上位指名順を獲得する確率が高くなる方式の抽選)をとることが発表されている。
ふーむ、なるほど。
④あくまで「交渉権」を得るだけ
ドラフトで選手を指名したチームは、その選手との「交渉権」を得るに過ぎない。
選手側が「やめときます!!」と拒否すればそれまでなのだ。
そして、ここがドラフトで最重要ポイントなのだが、交渉権を得たチームと契約しないことを決めた場合、その選手は同シーズン中は同一リーグ内の他のどの球団とも契約することができない。
たまーにプロ野球のドラフト会議で、明らかに自分が希望していた球団以外のチームが交渉権を獲得したと知ったとき、なんとも言えない表情をした選手の顔がカメラに抜かれたりするのはそれが原因だ。
⑤法的にアリなの?
吾輩は若いころ、このドラフト制度なるものが何故世間でまかりとおっているのか全く理解できなかった。
それは、こういう考え方が吾輩にあったからだ。
⑥スポーツ興行におけるリーグとチームの関係性
ここで少し見方を変えてみたい。
例えばBリーグの中にチームが千葉ジェッツしかなくなってしまったならどうなる?当然、どれだけ大人気チームだろうが1チームだけでは試合が成立しない以上、スポーツ興行として破綻している。
同様に、リーグに2チームしかいなかったら?試合はなんとか成立するだろうが、リーグとしてはクッソつまらなくなって興行の価値はダダ下がりするだろう。
何が言いたいかというと、スポーツ興行というのは複数のチームが参入するリーグというバックボーンがあって初めて安定的に成立すると言える(ここ大事)。プロスポーツチームにとって同一リーグ内の他チームというのは共に興行を安定化かつ活性化させる仲間であって、競合相手ではないのだ。
ここを踏まえて⑤の例え話に立ち戻ったとき、世間一般でいうところの会社にあたるのはリーグであり、その傘下にいるチームというのは会社の部署に近い性質といえる。
とするならば、ドラフト会議とは「会社に入社希望を出してくれた新人たちをどこの部署で預かるかを話し合う会議」というほうが実態に近い。
その中で相手方の希望ももちろん聞くが、部署の選り好みをされると会社の組織運営がままならないので、交渉権をもつ部署への配属を拒否するのであれば、その年度はもう入社はできない…というロジックに近いのがドラフト会議なのだ。
⑦選手は個人事業主
さらに加えて言うなら、バスケに限らず基本的にプロスポーツ選手というのはフリーランスの個人事業主だ。チームと契約できるかどうかはお互いの交渉次第だし、仮にどこのチームと契約できなくても、自分がフリーランスのバスケットボール選手であることには代わりはない。
「ドラフトのせいで希望するチームとの交渉の場に立つこともできないのはおかしい」という意見もあるだろうが、戦力均衡を図ることでリーグとしての興行価値を高めること、交渉相手が同一リーグ内のどのチームであろうともプロバスケットボール選手として契約交渉であることに変わりはないことなどを考えれば、職業選択の自由云々は問題にならない。
※ちなみにドラフト制度そのものではないが、スポーツ興行におけるリーグ内の選手の移籍制限ルール等についてはややグレーな部分があるらしく、公正取引委員会が見解を示している。気になる方は以下リンクを見てみて欲しい。
https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/sports_files/sports.pdf
(3)プレミアのドラフトでわかっていること
プレミアで導入されるドラフト制度の詳細は近日公開とされているが、現時点で分かっている内容を整理すると次のようになる。
①指名人数
まず下の記事を見てほしい。
ドラフトエントリー選手の人数が充足している限り、全てのチームが2巡目までは絶対に誰かしらを指名するというシステムのようだ。
そうなると、毎年少なくとも2人×26チーム=52人以上の新人選手が新たにプロ契約選手としてリーグに登録される計算だ。
プレミアでの日本人枠は基本的に10人(1チームあたり上限の14人から外国籍と帰化・アジア枠の人数を除いた人数)×26チーム=260人であることを考えると、毎年50人以上の新人選手を迎え入れるというのは相当なボリュームのように見える。
②契約年数
ドラフトで指名された選手には、「3年契約」か「2年契約+PO※」のいずれかが保証されるとされている。
③ドラフト指名選手の契約金額
これについては明確に数値が示されている。
NCAA(D1)以上の経歴をもつドラフト選手はかなり数が限られてくると思うので、基本的にはドラフトにかかるであろう選手の90%以上は上の表に当てはまる形で契約をすることになると思われる。
例えば日本の大学卒の1巡目指名選手は、3年契約の場合、契約金3000万円+(800万円×3年)=5400万円を3年間で得ることになる計算だ。
これが2巡目指名の場合、3年間での金額は4200万円となる。
④育成選手契約制度
ドラフトと同時にスタートするのが「育成選手契約制度」だ。
これは、新生Bの中で選手の行き来が活発に行われることを期待しての制度だと思う。特に「選手の同意なく」期限付き移籍させることが可能という点と、適用できるのが「25歳以下の選手」という2点がポイントだ。
おそらくこれは、ドラフトで指名されたもののプレイタイムをロクに得られないまま3年間塩漬けにされるようなケースを避け、プレミアの入口で受け入れた新人を「Bワン」や「B次」に行き渡らせるのが目的なんだと思う。
※一応、選手の合意があれば、育成選手契約制度を使ってのプレミアチームから「B次」チームへの期限付き移籍もできる。
(4)このドラフト制度に吾輩が思うこと。
①人数が多すぎない?
正直、即戦力が期待されるドラフトの目玉は上位15人位がいいところだと思う。必ず52人以上の選手がリーグに参入してくるというのは単純に供給過多だ。失礼なのを承知で言うが、各チームがきちんと「この選手は欲しいよね」と納得できるような選手が52人も揃うとは思えない。
かなりの確信をもって言うが、怪我人続出とか余程のスクランブルケースでない限り指名元チームが新人選手(特にドラ15位あたり以降の指名選手)に一定のプレイタイムを安定して与えるケースはほぼないと思う。おそらくほとんどのチームが「育成契約選手制度」フルに活用して、「Bワン」以下のカテゴリのチームに移籍させて成長させるという手法を取ると思う。
そうして広く新B各チームの選手新陳代謝を活性化させて競技レベルの底上げを図ろうというのが、「ドラフト」と「育成契約選手制度」の意図なんだと吾輩は理解している。
それはわかるんだが、全体の受け皿の枠が決まっている以上、リーグとして新たに受け入れる選手の数が多ければ、その影で消えていく選手の数もまた増えるということになりはしないか。
②想定される懸念
そもそもの一般論に立ち返るが、プロの選手が契約を更新(または新たなチームと契約)できるかどうかは、ひとえに前シーズンまでの自分自身のパフォーマンスにかかっている。
そして、個人のバスケットボールの実力が必ずそのままプレイタイムに直結するとは限らないのが難しいところだ。ヘッドコーチの方針やチーム内のロスターとの兼ね合いやチーム成績その他様々な要素が絡みあってくる。
育成選手契約制度によって他チームに期限付き移籍したところで、自分が望むようなプレイタイムを得られないことも充分に想定される。
そのへんを考慮すると、ドラフト指名された選手が新人契約期間の3年を終えた時、まともなプレイタイムの実績がないというケースが相当な数に登ると思う。
そのような選手は、なお将来性やチーム方針との相性を買われてどこかのチームと再契約できればラッキーで、そうでなければ無職だ。
吾輩は、この部分をなによりも懸念している。
例えばドラ2巡目選手が3年間の契約期間を終えて、次のシーズンにどことも契約できないとしたら。3年間で4200万円を稼ぎはしたものの、バスケットボールしか知らない25歳くらいの青年が職探しの入口に立つんだぞ。
そこまでの稼ぎの元手はあっても、新たなビジネスを始めるノウハウはあるのか?
また、たった3年で数千万円もの金を稼いだなかで、年数百万円しか稼げない一般企業に再就職先を求めることにモチベーションは上がるのか?
もちろん、その状態になる前に本人が自分自身のキャリアと人生設計についてきちんと考えているかどうかというだけの話と言ってしまえばそれまでだ。
しかし、リーグにはドラフトの時点でその部分を考えさせるための情報を与える責任があると吾輩は考える。
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