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We're only human〜八村の件で吾輩が思うこと〜

どうも、🐱(吾輩)である。

先週の八村による一連の動きは、日本バスケ界とバスケファンを大いにざわつかせた。

「八村が悪い」
「いやホーバスが悪い」
「いや悪いのは協会だ」

色々な視点から様々な意見がSNS上で飛び交った。

そして11月20日、この件について日本バスケ協会の渡辺事務総長が取材に答えた。

その内容には、八村の代理人事務所と話して確認した八村の批判の意図なども含まれているので、ここにきてようやく憶測ではない情報が出てきたということになる。


吾輩の話を進める前に、一連の騒動の流れを再確認したい。


1.試合後の会見で思いを吐露する八村


場面は日本時間11月14日に行われたグリズリーズ戦後の会見でのこと。

この試合は対戦相手チームに河村選手がいたとあって、日本人記者がその点を絡めて八村に日本語で質問をした。
特にどうということのない、無難な受け答えだ。

◯記者
八村選手、どうもお疲れ様です。

◯八村選手
はい。

◯記者
今日はプレイしませんでしたけれども河村選手が同じ場所にいて試合に臨んだという形なんですけども、やはり日本代表で一緒にプレイしていてそのときの思いが蘇ったりとか、そういったことはありましたか?

◯八村選手
そうですね、河村くんもこうやって今、ここまでこうやって来れて、僕とも日本代表のときに色々話せて、こうやって自分を出しながらNBAの舞台に立つってことがすごく大変だってことも教えてましたし、そのなかで良いチームに取ってもらって、チームでもいい雰囲気で…彼の性格もすごい好まれる性格だと思うので、そういうところでチームとのケミストリーを上げてどんどんプレイタイムもらって、NBAに出て欲しいなと思いますね。

問題はこのすぐ後だ。

◯記者
日本代表の思い出などは…?

◯八村選手
そうですね、あの…今回こうやって…まぁあの、僕としては言いたいことではないんですけど……日本代表として僕も今までずっとやってきてて今まで思ってる中でちょっと、その…日本代表のやり方というかそういうところがあまり僕としては嬉しくないところがあって、日本代表としてやってる中で、チームもそうですし、僕もNBAでやってる中で強化というか子どもたちのためとか、日本のバスケを強くしてくためにやってきてる感じは僕はあったんですけど、やっぱり日本代表の中で、その目的じゃなく、その…少し僕が思うには、お金の目的があるような気がするので、そういうところではやっぱりもうちょっと…まぁ僕もそういう話はしたんですけど。

あとコーチのことについても話したんですけど、コーチもやっぱり日本代表にふさわしいコーチ、えー…僕らは日本代表の男子のトッププレイヤーたちなので、男子のことをわかってる、プロとしてやってた、プロとしてもコーチでやったことのある、そういう人がコーチになってほしかったので、やっぱり今回こうやって、そういうふうになってしまったのは僕としても残念だと思ってますし、そういうのを日本代表に話した結果の、彼らが決めたことなんで、僕としてはそういう風に、あの…そういう姿勢でやってるんだなと思うので、まあその中で、やっぱこうやって、日本代表を子どもたちも観てるので、そういうとこでこう僕もNBAで頑張って、そういう日本の…バスケが強くなるように頑張っていきたいなと思いますね。

◯記者
八村選手、あの…今日の試合のことなんですけども…
(このあとは、グリズリーズ戦での八村自身のパフォーマンスに関する受け答え)

記者の質問が誘導的だとか、そういうことではない。

最初は話しにくそうに切り出したものの、かなり自発的に自分の胸の内を明かしていったという感じだ。

↓実際の映像はこちら↓


2.リポスト連打


会見の内容以上に物議を醸したのがこの動きだ。

この会見での発言についてSNS上で様々な意見が飛び交う中、八村のX公式アカウントが、以下のドギツイ内容のポストを、次々にリポストした。


「バスケブームは国内の代理店とテレビ局が作っただけ」

「八村から見ればホーバスは2流監督」

「日本バスケが強くなったのはいい選手が揃った世代だったから(ホーバスの成果ではない)」

といった内容を突然八村がリポストしたことで、いよいよ蜂の巣をつついたように様々な憶測を含んだ意見がSNS上を飛び交う地獄絵図と化した。


3.JBA渡辺事務総長による取材での受け答えでわかったこと


◯ 「お金の目的」の意味

八村が「日本代表はお金を目的にしている」という不満を持った一因が、7月に行われた韓国との壮行試合だったというのは、SNSで多く予想されていたとおりだった。

八村が代表に合流する前から、JBAは八村がこの試合に出場できないということを知っていたにも関わらず、欠場発表を試合当日まで先延ばしにした。

渡辺事務総長は「商業的な理由でそのようにしたわけではない」と言いつつも、次のようにも話している。

「現場の方としては日本に来てから彼のコンディショニングについてもう1回話して、もし可能だったらでていただけるんじゃないかなと、希望的な観測をしていた

 出典:中日スポーツ

渡辺事務総長はJBA側の「ミスコミュニケーション」により八村に負担をかけてしまったと、この件を総括している。

◯ 強化試合への不満

代理人経由でJBAが確認したところによれば、八村は強化試合のあり方にも不満を持っており、もっと日本代表にとっての強化になるような対戦相手と戦うべきという意見を持っているようだった。

これは、新たに見えてきた八村の不満内容だ。


◯ホーバス続投は堅持

渡辺事務総長は「八村選手の発言は本当に重い」としつつも、「ロス五輪に向けてはホーバスHCのもとで進んでいく決定に変わりはない」と揺るがない姿勢を見せた。


4.吾輩が感じたこと


今回の一連の件について、結局悪いのは誰だったのかという談義はすでにSNSで語り尽くされているし、具体的にどの部分にフォーカスするかによっても答えが変わってくるので、この記事ではそこに焦点を当てるつもりはない。

吾輩はいくつかの点について「好き・嫌い」レベルで話を整理したのち、最後に今回の記事タイトルにもしている"We're only human"の意図とともに、今回の記事で吾輩が伝えたいことを紹介したい。


◯ リポストのくだりは大嫌い

たとえ批判であろうとネガティブな内容であろうと、人が自分の意見を主張するというのはすごく健全なことだと吾輩は思っている(当然、人を傷つけたりする目的での誹謗中傷をも是とするものではないのは言うまでもないが)。

ただ、自分の意見は自分の言葉で語ってくれと言いたい。

リポストが同意を示すものだったとしても、同意している内容がリポスト元の文章全体か?一部か?一部だとすればどの部分なのか?が全く分からない。

解釈の余地を受け手に委ねる情報発信のあり方は、あまりいい結果を生まないと吾輩は思う。


◯ 八村のホーバス批判について

吾輩は、記者会見で八村がホーバスHCを批判したのは全然アリというか、むしろ「何がダメなの?」という感覚でいる。

日本代表って、あえて我々と同じレベル感で例えるとするなら会社が社運を賭けたコンペに参加するために各部署のエース社員を集めて発足させたプロジェクトチームに近いと思う。

今回の件は、特に競争激しい海外支店で実績を上げてきた社員が、プロジェクトリーダーに対して不満をあらわにしているという状況だ。普段の職場環境が違えば、その中で育まれる意識や意見も大きく変わるのも当然で、チームが成功にたどり着くためにはこのリーダーじゃダメだという意見に辿り着くことだって当然あり得る。

人がモチベーションを保つためには「納得」というのは大事な要素だ。特に結果を求められる現場なら、不満を溜め込んだまま表面上取り繕って仕事を続けてもいいパフォーマンスは望めない。


◯ 男子のHC経験云々の切り口について

SNSでは「今の時代に『男子のことをわかってるコーチ』とか、男子・女子のくくりでコーチ経験を批判するのはいかがなものか」という意見がいくつか見られたが、吾輩はアレルギー反応的な意見だなと思っている。

トップチームに近くなればなるほど、男子と女子のフィジカル(身長、体重、ウイングスパン、手の大きさ、筋力、敏捷性、跳躍力などなど)には顕著な差が出てくる。

そして、フィジカルのベース上に積み上げられる選手個人の技術やスキルの差も大きくなる。

そして、選手個人の技術やスキルの差は、チームとしての戦術や戦略にも大きく影響する。

だから、女子チームを成功に導いた戦術やメソッドをそのまま男子に適用して上手くいくかと言うと、そうではないはずだ。

フィジカルおばけのトップ集団であるNBAで生き抜いている八村が、ホーバスHCのもとで日本代表経験を積む中で「男子のプロHC経験者を招聘すべきなのでは」と考えたとしても、頷ける。

逆に「男子、女子」というキーワードが出てきた瞬間に拒否反応的な意見が出てしまうのは、この件においては少し過敏すぎる気がしている。



◯ ホーバスHC継続を明言したJBAのスタンス自体は好き

自力オリンピック出場という実績を作ったHCと、過去最強の巨大戦力の間に大きな亀裂が入ってしまった状況の中で、JBAが「ホーバスHCのもとでロス五輪を目指す」という姿勢を明らかにしたのは、組織として正しい意見だと吾輩は思う。

八村が個の戦力としてどれだけ突出しているかどうかはあまり問題ではなく、個人の意見で組織がスタンスを曲げるというのは、あるべき姿ではないからだ。

しかし一方、限られた期間で成果をあげることを求められている状況の中で圧倒的戦力の選手にそっぽを向かれているという状況が致命的だというのもまた事実だ。

だからこそ、あらゆるところでコミュニケーションが円滑に機能しなかったということが、吾輩は残念でならない。これこそが、今回吾輩が記事の中で主張したいことなのだ。



5."We’re only human"


我々は所詮、人間なのだ。

例えプロバスケのトップチームとそれを取り巻く組織であろうと、つまりは感情で動く人間の集合体なのだ。

そして、コミュニケーションの取り方(コミュニケーションをとろうとする姿勢を持つかどうかも含めてだが)ひとつで、人の感情は穏やかにもなれば波風に揺れまくることもある。

吾輩もまた人間になりたい一匹の猫として、今回の事件から学ぶべきコミュニケーションの教訓を確認していきたい。

言葉一つで失敗やうまくいかなくなることがあるのも、そこから学んで次につなげることができるのもまた、人間なればこそなのだ。


教訓①:大事なことの説明は、言葉を尽くして。

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