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【お知らせ】信州木曽谷で21年間埋もれていた、亡き父の詩集を電子書籍出版しました。
たった十四行の畝を持つ一枚の畑の上で わたしはしばしば立ち往生する
しかし仕掛けられたあなたの美しいわなにはたえず言葉のかげろうが揺らめき 仄見える幻の色彩や薫煙の筋が血走っている
現在生きていたら、九十一歳となる昭和の文学青年だった父が、亡くなる少し前まで書き溜めていた詩を、娘である私が掘り起こして77の詩と7つのエッセイにまとめました。
ソネットとは、14行詩の事で、父の晩年のライフワークでした。
父にとって詩とは、この世界を想像した神への賞賛、絶望、空虚、悲哀を綴った手紙のようなものです。厳しい自然環境の木曽谷にインスパイアされた父の言葉をぜひとも感じていただけたらと思います。
6月10日kindleにて初!電子書籍出版しました!!
神よ 同時に二つの場所でぼくらの存在は成立しない
無数の空席はあるけれど 同じ時間の中でだれもがひとりぼっちだ
ぼくらの新種発見は あくまであなたの書物のなかで輝く
巻きとられる書物は そのままひもとかれ
ぼくらはたえず あなたの書物の途上にある
果肉をひき裂けば時間が破れ
しぶきとまごう黄金の霧が
たちまち芳香の宇宙に巻きこむ
生きている限り 詩はぼくらを手放しはしないだろう
詩はだれかに読まれるためのものであるよりも
むしろ あなたへの献花である方へより比重がかかっているからだ
四六時中 言葉の渦を巻こうとして 詩人はいつも懸命である
あなたがすでに成就している手本の 矛盾した意味に苦しみながら
ぼくらはときとして 過去を目指している
過去から呼ばれている
神よ あなたの声に呼ばれている
言葉はおそらく
書きつけられると同時に仮死状態となる
インクがつづる時間の道が
可能性の空間で 枯死してしまっている
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