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大嫌いで大好きな父の詩とは
神よ 夜ごとあなたへ向けて書くラヴレターのようなものが、ぼくの詩なのです。しかし、千年も待ったところで、あなたから色よい返事がもらえるとは思わない。そんなことは夙にわかってはいても、せっせとぼくは書く。この世にぼくが生まれ出た、証拠でもあるかのように。
私が小さな子どもの頃、父は、いつも夜遅くまで本を読んだり、詩を書いていました。幼いわたしたちが眠る時に昔話をひとつ聞かせてくれたあと、
タバコをくゆらせ、ウィスキーを飲みながら。
けれど私が思春期の頃には、そんな父が好きではありませんでした。
持病を持ちながら酒を飲み、タバコの量は減らず、生活に追われて詩集を作る余裕などなく、思うようにならないことを母に当たる、父の姿も見ていたからです。
四六時中 言葉の渦を巻こうとして 詩人はいつも懸命である
あなたがすでに成就している手本の 矛盾した意味に苦しみながら
父は本来、子どもが大好きな人でした。自分の子どもや孫はもちろんですが、年の離れた兄弟や甥っ子姪っ子たちを面白い話や怖い話をして、わくわくさせてくれるような人でした。
晩年、脳梗塞で倒れてから後の2年間、父は、本当に穏やかに暮らしました。かつての父が戻って来たかのようでした。
一時は娘の名前も忘れた父。言葉はもつれ、半身に麻痺が残る父でしたが、詩集を作りたいという思いは強いままでした。
いま頃こんなことを告白する奴の、馬鹿さ加減を臆面もなく披露する男の、なんという哀れさ。しかし、馬鹿な奴ほどひたすら、ひとすじの道以外に関わろうとはしないのだ。
「哀れな男の告白」を、お読みいただけると幸いです。
6月10日kindleにて初!電子書籍出版しました!!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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