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読後に残る、涼やかな余韻。そんな言葉選びも、父の詩集の魅力です。
首里城の、とある坂道の露店でわたしは夏帽子を買った。
暑さもさることながら、余命を思えばさして長からずとふんだわたしは、この世で今まさにわたしの手をひく幼い系累 孫娘との記念写真を撮りたかったからだ。ハイビスカスやブーゲンビリアの藪にふさわしいのはやはり植物繊維でできたメッシュの白い夏帽子だ。
亡くなる3年ほど前に、姉妹家族で父を沖縄旅行へ連れて行ったことがありました。父の、最初で最後の飛行機体験でした。
旅行のあいだ中、父は本当に子どものようでした。
白いメッシュの帽子を斜めに被り、首里城の土産物屋が続く木陰の道を、幼い孫娘たちと手を繋いでとても楽しそうでした。
「やがて浮輪に身をあずけて波にほんろうされている間に、ひょっとして神よ、わたしはあなたの本当の舞台をかいま見たかもしれない」
父は沖縄の海も満喫していたのでしょうね。私たちは、幼い娘たちの着替えを用意したり、ビデオ撮影に翻弄していて、父が浮き輪で海をぷかぷか浮かんでいたなんて、よく覚えていませんでしたが。
そんな時も、父は、ずっと神様(この世界を作り、生命を授けてくれた)の存在を感じながら、青い空や水平線や珊瑚の砂浜や風を見つめていたのだなあと、今になって思いながらこのエッセイを読みました。
夜ごとリゾートホテル・ラグナガーデンの十階の窓に 巨大な月が昇り、紗のカーテン越しに それを見つけた彼女らは「ムーン」「ムーン」と覚えたての言葉を発し、フロアーを飛び跳ねる。明日はどこかの舞台で 沖縄の歌い手「寧々」たちに逢える筈だ。
わたしは独り深夜のバルコニーに出て、孫娘たちが見残した名残りの月を眺める。 国境の酒「舞富名」のグラスを片手に、時間にも場所にもかかわりのない、いつもの月を。
「孫娘たちが見残した名残りの月」
「時間にも場所にもかかわりのない、いつもの月」
読み手に涼やかな余韻を残す、父の言葉選び。
父・佐佐木政治の世界観を、感じていただければと思います。
何度も読み返してみたくなる詩集。
ぜひ、全編通して読んでいただきたいです。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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