ある会話
「なんてことをしてくれたんだ。お前は本当に人間か」
「本当にすまない。もうしわけない。お気の毒に」
「同情するなら金をくれ」
「なら金をやろう」
「金で解決できると思っているのか」
「じゃあどうすればいいんだ。俺はお前の言ったとおりにしただけだ」
「誠意が感じられないじゃないか」
「誠意って何だ」
「申し訳ないとか、そういったことだよ。そんなこともわからないのか」
「さっきから言ってるじゃないか、本当にすまなかった、と」
「言ってるだけか。そこに本心はあるのか」
「ああ、本心から言っている。本当にすまなかった」
「じゃあそれを行動で見せてくれ」
「わかった。どうすればいいんだ」
「弁償しろ」
「わかった。これだけを出せばいいのか」
「もっとだ」
「これでいいのか」
「そうだ。それと、一生謝り続けろ。弁償はしても、心は治せないんだからな」
「わかった。一生謝り続けよう」
「そうだ、元々あの時にお前がいなければ、こんなことにはならなかったんだ」
「それもそうだ」
「やっぱり許せない。許せない」
「どうすればいいんだ。俺はお前の言うとおりに何でもしたじゃないか」
「もういい。最初からこうすればよかったんだ」
「ねえねえ」
「なんだい」
「さっきからあそこの会話を見ていたんだけどさ」
「ああ、謝り続けていた男と、それを殺してしまった男の会話か」
「結局、あの二人のどっちが悪いんだろうね」
「さあね」