6月 「PLAN 75」とシラスチャンネル〜来客用スリッパ購入顛末記どころではない一日となったから。
写真は零れ種からのマリーゴールド〜♪遥か遠い場所にいても 繋がっていたいなあ〜♫・・・亡き人と対話する大切な花壇
60歳を過ぎて、楽になったことの一つは買い物。歳をとる毎にそう思う。「また買い替えればいいや」という選択肢を消したのだ。
一度買ったら、もう死ぬまで買わないぞ!と思うと、品物を見る目が変わる。
基準が決まると、悩みは減るものだなあと実感。
いつ死ぬのかはもちろんわからないんだけれど。
例えば、来客用スリッパ。買い替え時期となって、私にとっては少々値は張るが、一生OKと思うものを購入。
あー、こうやって歳をとったなりの知恵も働くな〜、note日記に書き留めておこうと思って、ラジオを流しながら書きはじめていたら・・・映画「PLAN 75」早川千恵監督の対談番組が流れてきた。
「少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本が舞台。満75歳から生死の選択権を与える制度<プラン75>が国会で可決・施行される。様々な物議を醸していたが、超高齢化問題の解決策として、世間はすっかり受け入れムードとなる。高齢者の選択は・・・
施行の現場では・・・」そんな映画らしい。
「よし!来客用スリッパは、これで一生OKじゃん。いつ死ぬかは知らんけど〜」なんて、テキトーなこと言って浮かれてる場合ではないぞ。
「PLAN75で、1年後に尊厳死を選択してるから、この夏使えるだけのスリッパでいい。」となる訳だ。ゾーッ。
早川監督は、「『優しい顔をした暴力』は怖い」と語っていた。そして、「それでも映画の中に『希望』を持たせたい」とも。
たった今の現実だってそうではないか?だからどこか不安なんだよ、私。
冷徹な制度設計に優しい言葉を被せている現実を見抜く力が欲しい
合理的なシステムの中の暮らしにでも、余白を見つけそこに希望と名付ける思慮深さが欲しい
私は、そういう75歳になれたら幸せだ。次の世代の邪魔はしないが、彼らが幸せになるための役には立ちたい。PLAN75の選択ではなくて。
ふと、こんな記憶が蘇った。
「独立していない国立大学」というものが存在していた頃、文学部がなくなる!とマスコミが騒いだことがある。政府の予算分配の話だったと思う。「専門知」偏重が加速して、「人文知」は「すぐに結果が出ない」「お金にならない」学問としてぞんざいに扱われている感じだった。
学問が経済合理性だけで測られていいのかな、と、なんとなく不安を感じた。
「PLAN 75」の世界は、「人文知」が衰退した世界?なのかもしれない。
哲学者で批評家、そして株式会社ゲンロンの創業者である東浩紀さんが、「人文知の再興」を謳うプラットフォーム「シラス」を立ち上げたのは2年前。
1999年の出された二冊目のご著書「郵便的不安たち」の帯には「接続し、転送せよ」とある。
そして2020年「シラス開設」に至る。ブレずに貫かれている。
コロナの2年半。ネット上でいろんな講演会が開かれている。
自宅にいる時間が増えたので講演を通して「人文知」という世界に触れてみようと思った。
遅まきながらも自分の長年抱える不安の正体の解像度を上げる力をつけたいと思った。
出版社主催、大学主催、宗教団体主催、インターネットテレビ主催、いろんなプラットフォームが主催していたので、興味に任せて観た。無料も有料も。
中でも「シラス」の密度は凄い。何度も見ないと理解できないから何度も見るんだけど、「何度も見たい」と思う「希望を感じる番組」だから何度も見てしまう。
私なりにだが、耕されていっている嬉しさがあった。
そして、偶然にも「PLAN75」の早川監督の言葉と出会い、不安の正体を少しは具体的な言葉にすることができた気がする。
この瞬間の熱に任せて、何度も見たシラスの公開番組をご案内。
・2018年1月18日
中島隆博×東浩紀「カントと孟子が語り合うーー『道徳を基礎づける』講談社学術文庫版刊行記念トークイベント」
(シラス開設前なので、アーカイブ残っていませんが、単体で購入して何度もみてます。カントも孟子も、40数年前の高校時代の歴史と倫社でしか知らないけれど、ここでなら学べそう!と思った映像です。)
・2022年5月13日
中島隆博×東浩紀「中国において正しさとはなにか──『中国哲学史』刊行記念」
・2021年10月15日
鹿島茂×東浩紀「無料の誕生と19世紀パリの魅力」【『ゲンロン12』刊行記念】
・2021年11月25日
小川さやか×東浩紀 司会=福冨渉「生存と不確実性の経済——スケールしないお金の話」 (「人間らしく生きる」ってなんなんやろな)
・2022年6月1日
安田登 聞き手=山本貴光「心を楽にする古典講義──『古典を読んだら、悩みが消えた。』刊行記念」
・2020年11月24日
飯田泰之×井上智洋×東浩紀「無料は本当に世界をよくするのか? 貨幣と労働の謎に迫る新・経済哲学対話!」
アーカイブ期間が終わっているようです。残念。でもお二人の対談は定期的に開かれているようです。
・2022年5月17日
津野海太郎×宮田文久×仲俣暁生「時代を超える編集の夢――君は『津野海太郎』を知っているか」
・2022年6月20日
磯野真穂×筒井淳也 司会=石戸諭 「『数』から考える人類学と社会学――『他者と生きる』刊行記念」
こんなに分かりやすく専門分野をじっくり話してくださることに感動する。そして、専門分野からはみ出した対話は豊かだ。このような場のある世界は幸せだと思う。
要約できない非力な私だけど、宙に向けて接続の軌跡を記し、誰かに向けて転送してみる。