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ゲームで学び、ゲームを学ぶ(16)-「4対4」のゲーム①

はじめに

3対3まではルールによるプレーの制約がほとんどありませんでした。バレーボールで自由度が高すぎると、役割が固定されて、同じ選手が同じプレーを繰り返し求められるようなある意味で単調なゲームになる可能性があります。バレーボールの性質としては、ある程度の人数以上では、ルールや制限があった方がより駆け引きがより複雑化し、奥深いものになります。バレーボールでは「ローテーション」のルールがゲームの奥深さを引き立てています。今回はローテーションの「意味」とローテーションを踏まえたゲーム作りの話をします。

「4対4」の特徴

3対3に比べて、人数が1人増えるということは、ボールを持たない選手が1人増えるということです。つまり、攻めでも守りでも選択肢が1つ増えることになります。そのため、基本的な考え方として、前回までに解説してきた通り、攻めにおいてはいかに攻撃参加人数を増やせるか、守りにおいてはいかに相手の攻撃参加人数(十分な状態での)を減らすか、が大きな課題となることは変わりません。

一方で「4対4」でこそ学びたいことは、ローテーションの「意味」です。なぜなら、「4対4」では人数が偶数かつ前後左右の関係が成立し、ローテーションを導入するにあたっての絶好の機会となるからです。なお、「意味」とはローテーションのルールを単に覚えるだけなく、ローテーションがゲームに及ぼす影響などを指します。

ローテーションとは

ローテーションとは、サイドアウト時にコート・ポジションを反時計回りに移動することです。ラリー開始(サーブヒット)時はローテーション上の位置関係を維持する必要があり、主にレセプション時のフォーメーションに影響します。また、前衛プレーヤーと後衛プレーヤーが区別され、後衛プレーヤーにプレーの制限があり、プレーヤーの配置に影響します。具体的には後衛プレーヤーの制限はアタックがバックアタックのみ、ブロックは参加できない等です。

6人制におけるローテーション

ローテーションがもたらすこと

ローテーションを導入することによって、さまざまな工夫が求められるようになります。ここでは6人制について説明します。

1.自チームに関する工夫の幅

(ア)選手の特性による配置
  ①身長のバランスや経験歴などを踏まえた工夫
(イ)選手のポジションを踏まえた上での配置
  ①セッター以外でレセプションに対応する工夫
(ウ)チームの戦術を踏まえた上での配置
  ①レセプションをさせない工夫(ミドルブロッカーやオポジットなど)
  ②フロントオーダー、バックオーダーなどの工夫

2.相手チームとの関係

(ア)マッチアップする相手が変わる不確定性
  ①ネット越しのマッチアップの組み合わせは6通り

ローテーションを学ぶ

ゲームを通じて自然と身につけていくアプローチを提案したいと思います。ローテーションを 知らないプレーヤーがローテーションを理解していくのは難しいと思われがちですが、そんなことはありません。理解することの難しさの原因はローテーションの仕組みを経験することが少ないことと、チームのレセプション・フォーメーションが初心者にとっては複雑なことが原因と考えられます。それを解消するには段階を追って、ゲームを経験していくことをお勧めします。

「4対4」におけるローテーション

具体的なゲーム

1.ローテーションを知る段階

サーブのルールを工夫するとローテーションの頻度を高めることができます。具体的には1人あたりのサーブは最大2回(ブレイクは2回まで、2回ブレイクした場合は得点は入って、サーブ権だけは相手に移るルール)とします。特定のローテーションが長くなることなく、ローテーションが定期的に行われ、自然とローテーションのタイミングや順番が身に付きます。

2.ローテーションに慣れる段階

コート・ポジションごとに、役割を与えることによって、ローテーションをしながら、いろいろな役割を経験することができます。具体的には、後衛の①と④はレシーブ、前衛の③はアタッカー、②はセッターなどです。前衛はブロックもできます。様々なポジション(役割)を経験でき、いろいろなバレーボールへのかかわり方や、お互いの理解を育めるので、プレーの相互理解にもつながります。

3.ローテーションを理解する段階

プレーヤー・ポジションを決めて、ローテーションをすることで6対6の実際のゲームに近い要素を経験できます。セッターが後衛の場合に、セッターのペネトレーション(攻撃の局面で後衛のセッターがセットアップのためにネット際に移動すること)を前提としたレセプション・フォーメーションや、ミドルブロッカーのレセプションを免除して攻撃に専念させるなども意図的に工夫することができます。また、複雑性の原因となる、ラリー開始時までに保っていなければいけないローテーションの前後・左右の関係も実践的に確認できます。

ローテーションの知る過程を大切に

このような順番を踏まえた上で、子どもたちがゲームの中で試行錯誤しながら、ローテーションを理解していくことを期待したいものです。最終的には3の前提にあるようにポジションを与える場合でも、特に何も教えずに、ローテーションという制限の中で、子どもたちなりに考え、解決策を見出そうとすることを期待したいものです。その結果、セッターのペネトレーションやアタッカーのレセプション免除のような分業をアイデアとして具現化していくことが起こり、それが、ローテーションの意味を自ら解釈して、バレーボールの面白さ(制限の中での工夫)を味わうことに繋がると思います。

この過程をなくして、セッターのペネトレーションやアタッカーのレセプション免除などを教えられてプレーするのでは、ローテーションの意味の理解がまるで異なります。それはバレーボールそのものの面白さを、子どもが今後自分なりに解釈していく上で、大きな差となっていくような気がしています。バレーボールの面白さを感じられるセンサーを養っておきたいものです。

▶︎縄田亮太のプロフィール

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。