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発達段階に適した育成グルーピングの重要性#7

「バレーボーラーの一貫育成メソッド」 制作の第7回です。

前章では、育成カテゴリーにおける『日常』の活動において『暦年齢』と『生物学的年齢』の良いとこどりができる方法について事例を交えながら考えていきました。本章では『非日常』の活動において『暦年齢』と『生物学的年齢』の良いとこどりができる方法を事例を交えながら考えていきます。

まず『非日常』ですが、これは具体的に言うならば「試合(ゲーム)」と言えます。『非日常』の時間は活動全体の割合から見れば、1割〜2割となることが多いのではないでしょうか。

ただ、活動全体の割合から見るとその比率は低いと言えますが、実際のところプレーヤーが最大の学びを得たり、成長の機会となったりするのはこの『非日常』であることも決して忘れてはいけません。

『非日常』である「試合(ゲーム)」を『暦年齢』と『生物学的年齢』という視点からどのようにデザインをすることができるでしょうか。実際の取り組み事例を参考にしながら『非日常』のデザインの可能性を探っていきましょう。

日本初、U15バレーボールリーグという挑戦

まず、『非日常』の好事例として紹介したいのが、宮城県仙台市を拠点に活動している特定非営利活動法人TEAM iが主催するTOHOKU i.Leagueです。

日本初の中学生女子年代のプレーヤーを対象としたリーグ戦形式の大会となります。2023年度は6チームが9月から12月にかけて、4ヶ月間(全8日程)のリーグ戦を戦いました。

この取り組みは非常にユニークな点が多々ありますが、まずはそれらのユニークさの根源である大会運営における哲学について見ていきたいと思います。

下記をご覧ください。至る所に「育成」というキーワードが散りばめられています。育成カテゴリーの環境を改善・向上、そして改革していこうという理念が至るところから感じられます。

さて、この大会がどのようにしてデザインされているのか全て隅々まで本記事で記載すると大変なボリュームになるのと、本記事では『暦年齢』と『生物学的年齢』がテーマとなりますので、あくまで『暦年齢』と『生物学的年齢』いう視点に絞って、TOHOKU i.Leagueの特徴について見ていきたいと思います。

『暦年齢』においての下限を設定しない

TOHOKU i.Leagueについてまず、特筆すべきは『暦年齢』においての下限をあえて設定していないというところが挙げられるかと思います。先述した通り、競技者間の公平性の観点から「U15=15歳以下」のリーグ方式となっており、16歳以上、つまり高校生年代のプレーヤーは本大会に参加することはできません。しかし、『暦年齢』の下限は設定されておらず、15歳以下であれば誰でも参加することが可能となります。実際に過去の事例として小学6年生がリーグに参加している実績もあります。

身体の発達が相対的に早いプレーヤーが『暦年齢』的には「上」のカテゴリーの試合を経験することができるということは、そのプレーヤーの成長を促進する上でのメリットになることもあるでしょう。

『暦年齢』においての上限のみを設定することで、競技性は担保しつつも『暦年齢』だけに縛られることのない大会運営をしていると言えるでしょう。

相手チームの戦力に合わせたメンバー構成が可能

次に、対戦方式や大会独自ルールのデザインによって、実質的に『生物学的年齢』を考慮したマッチアップを実現することが可能になるという点が挙げられます。

まず、TOHOKU i.Leagueというネーミングにある通り、対戦方式が「リーグ戦方式」となっています。リーグ戦方式を採用することによって、同チームとの複数回の対戦が前提となります。それによって、相手チームの戦力を図ることができるため、対戦相手によってマッチアップするメンバー構成のバランスを調整することが可能となります。つまり、自チームプレーヤーの『生物学的年齢』やスキルレベルを考慮しながら、プレーヤーに適した試合経験を多く積んでもらうことができるということです。

また、大会独自ルールとして、25点の3セットマッチを行うとしています。2セットを先取し勝敗が確定したとしても、3セットを必ず行うというルールです。このルール設定の目的は「少しでもプレーヤーが多く試合を経験する機会を確保したい」というものです。この独自ルールの設定によって、チーム監督も試合に勝利することを目指しつつも、プレーヤーの『生物学的年齢』やスキルレベルなどを考慮しながらセット毎のメンバー構成を決定することができると言えます。

さらに、TOHOKU i.Leagueでは「登録メンバー全員が必ず試合にでなければならない」という独自ルールが設けられています。このルール設定は、チーム監督にある意味で強制的に「試合に勝利することだけではなく、全員のプレーヤーにとっての最適な学習環境を確保すること」を考えさせることとなります。監督は、ただ試合に勝利することだけを考えるのではなく、勝利を目指しつつ、それぞれのプレーヤーの成長にとってプラスになるメンバー構成を熟考して、試合毎、セット毎、メンバーチェンジ毎に考えなければならないのです。まさに「勝利と育成の両立」が求められるのです。

本記事の事例で触れてきた通り、大会方式や独自ルールといった視点から大会をうまくデザインすること(制約をつくること)によって『暦年齢』と『生物学的年齢』のいいとこどりをするということは決して不可能ではないと言えるでしょう。

TOHOKU i.Leagueのようなチャレンジングな『非日常』の場が増えていくことが育成カテゴリーの環境を改善・向上、そして改革していくことになるのだと思います。

▶︎雑賀雄太のプロフィール

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。