SNS時代の今見たい映画「トゥルーマン・ショー」
「トゥルーマン・ショー(The Truman Show)」(1998年 アメリカ 103分)
監督:ピーター・ウィアー
出演:ジム・キャリー、ローラ・リニー
SNSが全盛の時代。
今、誰からも注目されたいという人であふれかえっています。
そんなネットがまだ普及していない1998年に公開されたトゥルーマン・ショーは現代にも通じる何かを感じる作品になっています。
あらすじ
すべてが作り物、という世界観
そこにあるものすべてが、作り物、テレビのセットだったという世界観は当時、とても斬新でした。
これは、神からみたら人類、地球はすべて自分が作った作り物というユダヤ教の教えにも似たものとなっていますが、それと異なるのはそれを見て楽しむテレビ視聴者がいるというところです。
SNSがいろんな人が見るために自分が発信し、本当はそんなことを言いたくはないが注目されたいがために行う、といったことが行われている現代ではありますが、トゥルーマンは生まれながらにして大スターです。
彼の言動すべてが全米が注目するというものです。
これは今、SNSで注目されたいという人の欲望を生まれながらにして持ち合わせていると言えるでしょう。
徐々に気づく違和感
献身的な妻もいて、仕事も順調に進み、日常に満足しながら自分の人生を歩んでいくように見えますが、徐々にその日常に違和感を抱いていきます。
しかし、トゥルーマンの周囲の人たちは、そのことを話すトゥルーマンに考えすぎだというように諭すのですが、彼らはもちろん俳優です。
彼らの言葉を信じたいトゥルーマンですが、自分の感じた違和感に正直に従いたい気持ちは徐々に強くなっていきます。
すべてのことを信じられなくなり、いろいろなものが作り物なのではないかと思ってしまう心境は、よく精神的に弱っているときに起きてしまいますが、トゥルーマンもそういった類のものではないかと周囲から言われて、考え直す日々が続きます。
もしかしたら、島全体がセットなのではないか、周囲の人は俳優で自分だけが何も知らないのでは、と気が付くときは、どうしても信じたくない真実が残りました。
それは、自分のことを一番に考えてくれる妻も役者で、妻という役を演じていただけなのでは、ということでした。
これにはトゥルーマンも真実と信じたくないという気持ちになり、人間不信のような状態になってしまいます。
ここはちょっとかわいそうで見ていられませんでした。
ここにいれば安全で安定した生活が送れる
だいぶ古い映画のため、ネタバレをしてしまいますが、トゥルーマンは島全体がセットで島民もすべてエキストラだということに気が付き、島を脱出しようとします。
その時に、遠隔で見ていたプロデューサーがトゥルーマンに島に居続けさえいれば、安全な生活が保障されるのになぜ、外の世界に出ようとするのか?と問いかけます。
しかし、トゥルーマンは外の世界へと飛び出す選択をします。
人間は、安全なところにいることを好みますが、その違和感に気づいてしまった以上、そこにはいられなくなってしまう生き物なのでしょう。
親の希望する人生を歩み続けた子供も、いづれその限界と時代に合っていない状態を感じ、その道をそれる選択をする人もいます。
これは、その選択と共通するのではないかと考えます。
結局、トゥルーマンも島に居続けたとしても、番組の人気は未来永劫続くとは考えにくいです。
当時からだいぶ時間がたっていますが、コンテンツとして残っているものがどれだけ少ないかがそれを物語っています。
損得で言えば、トゥルーマンはその時は損をする選択をしたのですが、長期的に見れば自分の人生を歩み、しっかりと前を向くことができたのでしょう。
SNSも所詮誰かが作ったプラットフォーム
SNSのいいねやコメントをもらうことにすべてを捧げるような生活を送っている人もいますが、SNSも結局は誰かが作った世界です。
トゥルーマンのいる島と同じで、すべてがセットという特殊な世界と言えます。
noteでいうのも変ですが、SNSは所詮誰かが作った世界で、そこで何者になろうと自分という個人はどこまで行っても自分でしかないということでしょう。もしかしたら、その世界はすべて作られたものかもしれません。
いいねの数を買うことができる、コメントをいくらで買えるなどという話も聞きますので、本当にトゥルーマン・ショーの世界がSNSでは繰り広げられているのかもしれません。
SNSで受ける生活をする、映える写真を投稿する、こうしたことをすることで、遠くで見ているプロデューサーを喜ばせているだけのトゥルーマンになっていないでしょうか?
この映画の最後に、子供が「次の番組は?」と聞くシーンがあります。
結局、トゥルーマンが図らずも人生を捧げたショーはトゥルーマンが辞めたことで終了しましたが、視聴者にとって大した影響がないと言いたかったのでしょう。
ジム・キャリーの代表作
マスクやライアー・ライアーなど、コメディ俳優のイメージが強いジム・キャリーですが、この作品は高く評価され、彼の代表作となりました。
この映画も普段の生活のシーンではコメディ要素が強いのですが、それだけではない彼の俳優としての魅力が詰まった不朽の名作です。
20年以上前の作品ですが、SNS全盛の現代にも通じる価値観は見るに値するでしょう。
映画中毒者から一言
セサミストリートにジム・キャリーが出ていて
「おお、ジム・キャリーだ」
となったのですが、アメリカの子供は何人そうなっていたのでしょうか。