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【ウーリーと黒い獣たち】#カイサーの三半規管
はぁ.…
私はなんでこんなことに巻き込まれてしまったんだろう。思い返せば、ただ、いつも通りにランニングをしていただけなのに。
あの日、いつものランニングコースで
「すみませ~ん!あなた清楚ね!お名前は?」
ラブコさんに突然声をかけられた。
ラブコさんはターリキィ王国で行商をしている。市場の露天で売っている商品はどれも質が高くて、すぐに売り切れてしまうと評判だ。
せ、せ、せ、せ、清楚ぉぉ??
「ごっつぁんです」
咄嗟にそう返事をしてしまった。
ある日、ラブコさんから
「お家でコーヒーを淹れる練習してるから、遊びに来て」とお誘いをうけた。走って行った私に、ラブコさんホットコーヒー淹れたくれたんだよね。ホットコーヒーのおかげで、滝汗かいてる私の前に、ビックリするぐらい毛量の多い男性が登場した。
それがウーリーだった。
「あなたのお悩みは汗っかきってことですか?」
初対面の私に突然そんな質問を投げかけてきた。
ちげーよ。ランニング直後にホットコーヒー飲んだからだよ。
舌打ちをしそうになってグッと堪えた瞬間、ウーリーの妹のユッキーと目が合った。
そうそう。あの瞬間にユッキーと私は「同類だ」って思ったんだよね。
そんな出会いだったけれど、ウーリーの傾聴スキルと優しい人柄に私もすぐに心を奪われてしまった。
私が手でパタパタと顔を仰ぐ仕草の演技にも「カイサーは清楚だね」と言い、前歯にビッチリついたタコ焼きの青のりをパスタのパセリだって言い張っても、いつも「そうなんや」とニッコリ笑ってくれた。
そしてみんなの祝福をうけて結婚。
連日ユッキーの店で深酒しちゃうものだから、いつしか喉も酒灼けしてしまって、芸人の椿鬼奴みたいになってしまったし、清楚の演技が続かなくてウーリーに「そんなんちごた!!」と叫ばれ、傾聴どころか日に日に私には傾いてくれなくなったけど。
それでも幸せな毎日だった。
ある日。私の元に1冊のnoteが届いた。
noteを開くと突然光り出し
これから起こることは
ウーリーには絶対に言わないこと
そう書かれていた。
突然耳にふわっと風を感じた。
「こんにちは。カイサー。私はフェアリーケイ」
それがフェアリーケイとの初めての出会いだった。
羽根をパタパタさせて語りかけてくる妖精。
私の目はどうにかしてしまったんだろうかと眩暈がした。
続けてフェアリーケイは私に言う。
このnoteは読む人によって内容が変わります。
今読んだものはカイサー、あなただけにしか読めません。
このnoteが光るとき。
必ず内容を確かめること。
困惑する私に「またすぐ会いにくるからね♪」
そう言ってフェアリーケイはふわっと姿を消した。
誰にも言ってはいけない..…
誰にも言ってはいけな..…
誰にも言ってはいけ..…
フェアリーケイと光るnote〜!!
何度か人気のない場所にある井戸に大声で叫んでみたっけ。
それからしばらく経ったある日、突然noteが光り出した。
「うそやん。ほんまに光ってるし」
自然と早くなる心臓の鼓動をおさえ、そっとnoteを開いてみる。
明朝、エタフスの丘に行くこと。
そこに置き去りにされている赤子を連れて帰ること。
名はリトルソー。
また眩暈がした。
次の日の早朝、誰にも気づかれないようにエタフスの丘に行くと、noteに記されていた通りそこには赤ちゃんが寝かされていた。
私はその子を家に連れ帰り、ウーリーに伝えた。
「コーノトーリが運んできたんやで」
その日からスタートした、ウーリーとリトルソーとの生活。いつしかエタフスの丘での出来事も忘れ、家族3人毎日幸せに暮らしてきたけれど、ウーリーは勇者に任命され、いよいよゲーン王国に旅にでる。
その間に、ウーリーはリトルソーがターリキィ語を話せないことも、私がボーチャからローンで購入したトゥボのことも、唆されるがままにボーチャから購入してしまったビリー・セイソ・キャンプのDVDのことも、きれいさっぱり忘れるに違いない。
そう。
ウーリーとっとと忘れなさい。
ウーリーが出発した日。
その姿をリトルソーと見送り、家の中に入った途端、私のnoteが光り出した。
noteをそっと開くと、隣にいたリトルソーが突然光に包まれた。
ドロン
リトルソーはフェアリーケイへと姿を変えた。
「言ったでしょ?また会えるって」
「大丈夫。私がウーリーを見守るから」
フェアリーケイはイタズラっぽくウインクをして、ふわりと羽ばたいて行ってしまった。
私の三半規管はぶっ壊れてしまったのかしら。
眩暈による千鳥足で、フェアリーケイの後を私は追った。いくら泥酔しても、ここまで千鳥足になることなんてないのに。
ずっとリトルソーの姿でウーリーを見守ってたってこと?だからターリキィ語を話せなかったの?
私は混乱し続けた。
追った先で、ウーリーは出発したにも関わらず、ヒヤトラーズや3人の巫女達、チョコリーやユッキーとタコパをしていた。
「まさかと思って来てみたら、まーだこんなとこにいて!!どうなってるの?」
フェアリーケイはにこにこ笑いながら、ウーリーの肩で佇んでいる。誰もフェアリーケイには気づいていない。
これは三半規管のバグが見せる幻なんだろうか。
私の頭の中は混乱しているけれど、とりあえず平静を装って、ユッキーから「食えよ!!ガハハハ」と渡されたタコ焼きを食べた。
ウーリーは私の顔を見て言う。
カイサー。
前歯、青のりだらけやで。
はよゲーン王国行かんかい。
おしまい
『全米が膝から崩れ落ちる』をコンセプトに、自由好き勝手に創作して繋いで行く物語。
あなたも #ウーリー に参加しましょ!
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