【Collapse ~Lemuriaの記憶~】
楽園というに相応しい場所は、
海の中にも天空にも、
もちろん、地上にも沢山あり、
私も数え切れない程の癒やしを貰った。
ただ、私にとっての
地上の楽園「アテリプル」は、
別格であり、とても愛おしく尊いものだった。
私たちから始まり、
私たちから溢れたものが自由意思を持ち、
私たちがこの手で
たくさんの光を注いで育み、
暖かく見守ってきた場所であり、
共に葛藤や困難を乗り越え、
成長をしてきた場所であり、
それに関わる全ての人、事象、出来事が愛おしく
何にも変えがたい
かけがえのないものだった。
あなたから注がれ続ける
この尊い眼差しを
全身全霊で享受し、
溢れかえって仕方ないほどの
光として包まれ
輝きの中で瞳孔を開く。
そこから見る景色は
全ての輪郭がハッキリと存在しながら、
全てがただ輝く為だけに存在し、
全てを受け入れ包み調和していた。
注ぐとは、育むというのは、
こんなにも素晴らしく、
煌めきに満ち満ちた経験だったとは。
その頃の私にとっては、
そこが全てだったのかもしれない…。
*
私の海の仲間たちは、
多方面での広い範囲の
情報伝達を担っているだけあって、
とても早い段階で、
まだ、何も事象が起きてない
集合意識も固まっていない段階で、
その情報を伝えてくれていた。
「もう、壊れゆくしかない。
もう、決まってしまっている。
もう、後戻りは出来ない。」
それでも、
それまで希望に満ち溢れ、
本当の絶望というものを知らなかった私は
とても、楽天的だった。
全ての出来事は
光であると信じているし、
私がその光を見失う事は決してない。
継承したこの力があれば、
それぞれが強く立ってさえいれば、
みんなの集合意識が変わらなければ、
全ての問題は深刻にならず
すぐに解決すると思っていた。
だから、その情報が来ても
すぐに、楽園と共に地上に
残ることを選択した。
その情報は、
5次元から3次元に落ちていく過程で、
何度も、何度も
形を変えてやって来ていたが、
私の決心は揺らぐことはなかった。
「あなたが、この人たちが、この大地が
既にそちらを選択しているのであれば、
私は、何があっても最後まで共に在る。」
その時、
既に執着と依存になっていたこと、
心配しすぎて相手を信じ切れていないこと、
自分の力を過信しすぎていたこと、
に、すぐに気付いていれば…………
あんな事にはならず、
この深い闇は残らなかったのか…。
*
墜ちる途中で、
もちろん、戦争も起きた。
後にアトランティス戦争と名が付く。
その過程で
益々、過激になっていく
レムリア人狩りも
この世のものとは思えない程
酷いものだった。
レムリア人の
身体の中に埋め込まれている
蒼いクリスタルは、
高振動になると光が溢れて、
5次元や全てからの
凄まじい力のサポートを思い出し覚醒し、
全てへの影響力が拡大する。
でも、当時のレムリア人は、
周りの仲間のために、
自ら争うことを選ぼうとはせず、
居場所がバレないように、
蒼いクリスタルが光らないよう、
歓喜
表現
興奮
欲
生命力
などを解放することを
自分たちで一切禁じ、
暗く貧しく閉鎖的に過ごしていた。
中でも、人魚の涙はとても貴重で、
一口飲めば、人魚の力を丸ごと継承出来る為、
その力は絶大だったので、
相手は特に欲しがった。
人魚の力主に、
·不老不治
·水陸空両用を移動出来る自由自在な身体の変形
·広範囲に及ぶ高精度の情報伝達テレパシー
·感覚が流れ込んでくるトレース能力
·高振動の超音波による声の破壊力
·水のような意識の流れを繊細に読み穫る
サイキック能力
·種族としての高い誇りと自尊心からくる判断力
·ボーダレスで多方面に及ぶ
種族としての歴史ある信頼、繋がり、影響力
·無意識と深く繋がる覚醒能力と創造力、破壊力
などがある。
人魚が捕まると、
一滴残らず涙が絞り取れるよう、
その手段は、悲惨の限りを尽くしていた。
自尊心の強い人魚は、
自分だけの事では
大量の涙が流れない事を知っており、
相手は効率良く搾取するため、
周りの大切なものたちを広範囲で
追い込み、絡め取り、拷問し、
生きながらに絞り取られ、
限界を越えて絶望と虚無になり、
もう涙が搾取出来ないと判断した後に抹消され、
その色彩豊かな鱗や手、鋭い齒、柔軟性の高い美しい身体は高値で売買され、武器に再利用されていた。
仲間たちから耳にする
その話はどれも、
一気に恐怖が身体を大い尽くし、
生きた心地が全くしないものばかりだった。
気付いた頃には、
レムリア種族の3分の2以上の
仲間は既に選択済みで、
天からのサポート支援側に回っていた。
家族にも、友だちにも、仲間にも、
心配をかけたくない一心で、
私が、逆を選択している事は隠して、いた。
それでも、楽園とともにいる事を
ただひたすらに掴んで、
それが、何よりも正しいと思っていた。
ただの点だと思っていた
「恐怖」という漆黒は、
点が見えてしまった時点で、
世界中の見えない部分で
根深く溜め込んでいた闇の入口の証拠であり、
一瞬で、どんどん侵食し、錆び付いて
この地球の広範囲、最深部に染み渡り、
粘り強くこびり付き
もはや、収集も回収も元の感覚を思い出すことも
不可能だと思えた。
レムリア人も、
火星人も、
宇宙人も、
動植物も、
虫や微生物も、
空気や大気でさえも、
地球内生命体の全てが、
自分の種族の生命を、子孫を、
どうにか滅亡させないよう、
己の範囲を最小限に留め、
全てとの あの繋がりを一切忘れ去り、
ズブズブの恐怖に乗っ取られたまま…
不審
被害妄想
裏切り
逃亡
諦め
放棄
争い
暴力
強奪
略奪
強姦
畜生
飢餓
修羅
虚無
この、
とても生きた心地のない
生きる方が圧倒的に苦痛であろう
この地獄の惨劇を
みるみる拡大させていく。
自分の想像すべき範疇を
有に超えて
大いなる圧倒的な「恐怖」の力によって、
私はただただ、それに流されるだけだった。
ただ、目の前の大切なものたちと
身を寄せ合い、
隠れて震えて、
自ら運命を変えようとも
立ち上がることも戦うこともせず、
毎日、目の当たりにする
吐き気がするほどの惨劇に
ただただ、蹲って悲観していただけだった。
何が自分の力だ…。
観て見ぬふりをして、
すぐに諦め、責任を他人へ委ね、
勇気も出せず、決断もせず、
生死に関わるこんな時でも、
少しでも楽な方、弱い方へと流されていく。
そして、
あの絶望の日は、もうすぐ目の前に来ていた…。
続く…