テントでイチゴ狩りを許可したら、もれなくパン祭りも始まった話
ちょうど去年の春、得体の知れぬ未知のウイルスに右往左往していた頃の話です。
1年後は変異ウイルスに右往左往なわけですが。
折角の春休みも家に缶詰の日々。
あの頃はもっとピリピリした緊張感が街中に漂っていて、家族の命が大事なら家にいるしかないっしょみたいな覚悟もありました。学校だって呑気に行ってる場合じゃない。休校措置も致し方ない。
ただ、娘だけは、突然言い放たれたエンドレス休日宣言に、ワクワクが隠せないようでした。
もう身体から
「学校休みだ、やったー!!」
がダダ漏れ。
親としては、いつ学校が再開しても問題ないよう時間割と睨めっこしながら、もしも学校行ってたらシリーズで曜日毎にやる事リストを作成してみたり。神経質になっている娘をどうにか玄関先に連れ出し、今から体育の授業だと共に縄跳びを飛んでいた時間もありました。
ああ疲れた。
はい、休み時間。(ゼーハーゼーハー、二重跳びはきつい)
パソコンを開いて急ぎの仕事をしようかと思えば、「見て見てー」と完成ほやほやの作品が持ち込まれ工夫した点の発表が始まり、批評を迫られる。
そして昼時になれば必ず「お腹空いた」コール。
限られた労働時間の大半を娘のもしも学校だったらシリーズに費やし、そろそろゴールかと期待を匂わせては都度裏切られる。
手作りのホームスクールや塾のオンライン授業も毎日8時間びっちりって訳にもいかず、GW過ぎた辺りから完全にネタは切れるは、仕事は溜まるやらでにっちもさっちも行き詰まっていました。
で、徐々に娘のYouTube解放タイムが増していたころ、娘から
「イチゴ狩りしよ~」
との提案。
「えーコロナできっと何処もやってないよー」
と諭すと
「違うよ、家でやるよ、テントで。だからイチゴ買ってきて。」
え??家でやんの??
「そーよ、みんなやってる。」(それは言い過ぎだろうけどよ)
証拠の動画を見せられた後、娘は出店準備にそそくさと取りかかってた。宿題はなかなか始めないが、こうゆう準備はマッハで始まる。
とにかくイチゴは、買いに行くしか無いらしい。
どうせ買い出しに行かねばならないし、イチゴ狩りに連れて行くより安上がりでもある。私の自由時間も増えそうだし、お財布にも優しいWINWINな提案であった。
帰宅後、テントが設置された部屋の扉には手作り看板が掲げられ、利用方法も制定され受付コーナーも準備されていた。
よく見ると、イチゴ以外の文字に目が止まる。
③イチゴ、パンをとる。
「いちごがり」
春と言えば、パン祭りの季節。
陽気に歌う女優さんのCMが良く流れている。
朝はパン、パンパパン。
昼もパン、パンパパン。
コロナでわたしたちは、テントでパン、パンパパン。
「パンがり」
吊されたパンが並ぶとちょっとシュールである。
お気に入りのパン屋の母チョイスのオススメパン達が狩られ待ちだ。
パンがこんがり。略して、パンがり。
というひねりを効かせたネーミングでは無いらしい。
ただただ平仮名なだけ。
と、イチゴ狩りを許可したら、パン狩りも同時開催だったという話。
この後、テントはしばらくの間常設され、日々色々な催し会場となっていった。しまいには中で寝泊まりが始まり、リアルすみっコぐらしの体験会場にもなっていた。大人は腰がやられるのでお勧めできない。
でもまあ家の中で、ミニテントを立て、陽気に家族でイチゴを食べる機会もそうあることでは無いだろう。
パンも。こんな感じで食べたのは初めてだったし。
出来ないなら、出来ないなりに、出来ることをやる。
子どもの発想は実に自由で自在。
日中は仕事をするのを諦め、彼女の自由自在な企画に付き合うことにした方が気も楽だったし、互いのイライラも減った。
やることが終われば、あとは自由時間。
自由時間の間、母は仕事をさせてもらえる。
コロナ渦で過ごした、不思議な時間でした。
おしまい。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?