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精神と時の部屋を考えてみた
【第1章】時間の制約がない場所への憧れ
朝起きた瞬間から、何かに追われているような気がする。
スマホの通知は無限に増え続け、締め切りは迫り、
気づけば夜になっている。
せっかくの休日も「何かしなきゃ」と焦るうちに終わってしまう。
やりたいことは山ほどあるのに、時間が足りない。
このままでは一生、自分の本当にやりたいことをやる時間なんて、
訪れないのではないか──。
そんなことを考えながら布団の中で天井を見つめていると、
ふと、ある名作が頭をよぎる。
そう、漫画/アニメ『ドラゴンボール』の「精神と時の部屋」だ。
あそこに入れば、たった一日で一年分の時間を過ごすことができる。
時間の制約がない。
どれだけじっくり考え、練習し、創作し、勉強しても、
外の世界ではほんのわずかしか時間が流れていないのだ。
こんな都合のいい部屋がこの世にあったら、
どれだけのことができるだろうか?
思い描いてみる。
例えば、締め切りに追われる作家がこの部屋にこもれば、
優雅に紅茶を飲みながら構想を練り、執筆し、何度も推敲できるだろう。
学生は焦ることなく、じっくり教科書・参考書などを読み込み、
すべてを理解し尽くしてから試験に臨める。
映画好きは何百本もの作品を一気見して、
名作をすべて網羅することができる。
ダイエットだって一年かけてじっくり取り組めるのに、
現実世界ではたった一日しか経過していないのだから、
周囲から見れば「たった一日で別人のようにスリムになった人」として、
話題になるかもしれない。
なんという夢のような空間!
そう、私は求めているのだ。
時間の足かせから解放され、誰にも邪魔されず、
やりたいことに存分に没頭できる場所を。
外の世界の雑音を遮断し、ひたすら好きなことに向き合える空間を。
まさに「精神と時の部屋」のようなものを──。
しかし、冷静に考えてみると、
原作の「精神と時の部屋」は決して快適な場所ではなかった。
白い何もない空間。
気温や重力の変化も厳しく、食事も最低限。
あそこに一年もいたら、
精神がすり減るどころか、正気を保つのも難しいだろう。
あの部屋を活用できるのは、すでに鍛え上げられた戦士たちだけなのだ。
ならば、もっと快適で、誰にとっても使いやすい、
「改良版・精神と時の部屋」を考えればいい。
時間の流れを調整でき、環境もカスタマイズ可能。
学習用の本や動画、AI講師、VRバトルシミュレーション、
さらには好きな映画やアニメをすべて視聴できる、
シアター機能まで備わった、究極の空間。
そんな場所があったら、人生はどれほど充実したものになるだろう?
などと妄想しながら、
今日も限られた時間の中であたふたと生きるのであるが……。
【第2章】精神と時の部屋の魅力と過酷さ
『ドラゴンボール』という作品を知っている人なら、
「精神と時の部屋」に一度は憧れたことがあるだろう。
たった1日で1年分の時間を過ごせる、夢のような空間。
勉強も仕事も鍛錬も、現実世界では一瞬で終わったことになるのだから、
こんな便利な場所は他にない。
もしこの部屋が実在したら、
学生は悠々と全科目の復習を終え、
スポーツ選手は誰にも邪魔されずに限界まで鍛えられる。
さらには、締め切りに追われるクリエイターや、
読書を消化できない読書家たちにとっても、
まさに理想の空間と言えるだろう。
しかし、この「精神と時の部屋」、憧れるのは簡単だが、
実際に入るとなると話は別だ。
というのも、その環境があまりにも過酷すぎるからである。
まず、空間は白い無限の広がり。
何もない。ただただ白い。どこまで行っても白い。
大海原に浮かぶ無人島なら、せめてヤシの木や波の音があるが、
精神と時の部屋にはそんな情緒すらない。
おそらく、数時間もすれば、
視覚的な刺激のなさに耐えられなくなるだろう。
例えるなら、オシャレなカフェで作業しようと思って入ったら、
真っ白な無機質な部屋に通され、
BGMもなければWi-Fiもない状態で放り出されるようなものだ。
こんな環境で長時間過ごしたら、
下手をすると修行どころか精神が崩壊する。
次に、入口はたった一つしかなく、入れる人数にも制限がある。
そのため、「ちょっと休憩がてら外に出よう」と思っても、
それは許されない。
精神と時の部屋に入ったら、
基本的にはそこに滞在し続けることが前提となる。
さらに言えば、部屋の中で1年間過ごした場合、
現実世界では1日しか経っていないため、
感覚的には「長い間外に出ていない」というストレスが尋常ではない。
部屋にこもりっぱなしの生活が続くと、
普通の人間は「外の空気を吸いたい」「人と会話したい」と、
思うものだが、それができないのである。
そして、最大の問題は滞在期限が1年という制限。
この部屋には「1年以上経過すると、二度と出られなくなる」という、
致命的なデメリットがある。
つまり、「ちょっと長く滞在して、あとで出よう」という油断は、
命取りだ。
例えば、ゲームに夢中になって、
「あれ? いつの間にかこんな時間?」という経験は誰しもあるだろうが、
精神と時の部屋ではそれが致命傷になる可能性がある。
うっかり熱中しすぎて滞在期間をオーバーしたら、
現実世界には二度と戻れない。
これでは、夢のような空間どころか、地獄の隔離施設と化してしまう。
しかし、そんなリスクを抱えながらも、
「時間を自由に使える」という設定の魅力は計り知れない。
どんなに忙しい現代人も、
この部屋さえあれば時間に縛られずに物事に集中できるのだから、
理想の環境であることは間違いない。
ただ、環境の過酷さを考えると、
「本当にこの部屋で1年間過ごせるのか?」という問題が浮かび上がる。
戦闘力数万レベルのサイヤ人たちはともかく、
一般人がこの部屋に入った場合、
修行をするどころか、数日で発狂する可能性のほうが高い。
つまり、精神と時の部屋を活用するには、
相応の「精神力」と「忍耐力」が必要だということだ。
時間の制約がないのは魅力的だが、
それと引き換えに自由と快適さを犠牲にすることになるのだから、
慎重に考えなければならない。
と、ここまで考えてみると、
もっと快適で便利な精神と時の部屋を作ることはできないか?という、
アイデアが浮かんでくる。
確かに、時間を自由に使えるのは素晴らしいが、
それだけでは人間は耐えられない。
そこで、より理想的な「進化版・精神と時の部屋」について、
考えてみようではないか。
【第3章】精神と時の部屋の怖い落とし穴
「1日で1年分の時間を過ごせる? 最高じゃん!」と、
つい思ってしまう。
時間の足りない現代人にとって、これはまさに夢のような空間。
やりたいことを全部片付けて、
外の世界では「一晩寝ただけ」みたいな顔をして戻ってこられる。
まさに時間泥棒に対抗する究極の武器!……と思うのだが、
冷静に考えてみるとそんなに甘い話ではない。
この部屋、実は、
「入ったら出られなくなるトラップダンジョン」みたいな、
過酷な環境なのだ。
■(1)まず、温度と重力がおかしい
精神と時の部屋の最大の特徴は、時間の流れが違うことだけではない。
実は、内部の環境がえげつないレベルで厳しいのだ。
例えば、温度は極端に変化する。
めちゃくちゃ暑いか、めちゃくちゃ寒いかの二択。
快適な春や秋なんていうものは存在しない。
「今日はちょっと肌寒いな~」とか、
「エアコンをつければちょうどいい感じ」みたいな、
微妙な調整は一切なく、常にエクストリームな環境が待っている。
さらに、重力も変化する。
どの程度かは作品によって描写が変わるが、
修行向けに厳しく設定されていることは間違いない。
つまり、普通の人間がフラッと入って、
「よーし、1年間でスキルアップしよう!」なんて意気込んでも、
最初の数時間で動けなくなる可能性がある。
ヘタをすれば、
最初の一歩を踏み出した瞬間に「グシャッ」と膝をついて、
そのままうずくまるハメになるかもしれない。
■(2)食糧がヤバい(最低限はあるが、楽しくはない)
まあ、環境は厳しくても、
とりあえずご飯さえ食べられれば耐えられるんじゃ?と、
思うかもしれない。
だが、ここで次の問題が浮上する。
食事の選択肢が壊滅的に少ない。
一応、カプセルコーポレーションの技術のおかげで、
最低限の食糧は確保されているらしいが、
「最低限」とはつまり、
「生き延びるために必要な分しかない」ということだ。
つまり、「今日は気分を変えてパスタでも」とか、
「頑張ったご褒美にスイーツ♪」なんていう楽しみは一切ない。
せいぜい、乾燥した栄養食とか、
あまり味のしないサバイバル用の食品が与えられる程度だろう。
1年間もそんな食事を続けるとなると、
最初は修行を頑張る気満々だった人でも、次第にこう思い始める。
「俺は……何のために生きてるんだ?」と。
食の楽しみが奪われることで、精神的なダメージは想像以上に大きい。
そもそも「精神と時の部屋」という名前なのに、
精神がもたなくなる仕様なのはいかがなものか。
■(3)ひたすら広いだけで、何もない(修行以外の用途には不向き)
そして、もう一つの大きな問題がこれ。
この部屋、ひたすら広いだけで何もない。
「空間が広いなら、いろいろ活用できるじゃん!」と思うかもしれない。
確かに、トレーニングするには最適な環境かもしれない。
だが、それ以外の用途には致命的に向いていない。
例えば、もし「精神と時の部屋で1年かけて小説を書こう!」と、
意気込んだとしよう。
ところが、机も椅子もないし、紙とペンがある保証もない。
もちろんWi-Fiなんてあるわけがない。
つまり、何かをしようと思っても、道具がなければ何もできないのだ。
さらに、音がない。
何もない無音の世界で1年間過ごすとどうなるか?
答えは簡単、人間は発狂する。
部屋の隅っこで体育座りをして、
無意識に「ポポポポポポ……」とか言い始める未来が見える。
どんなに「時間が自由に使える!」と喜んでも、
それを快適に過ごすための設備がゼロでは、活用のしようがない。
■(4)使いこなすには条件が厳しすぎる!
結論として、「精神と時の部屋」を活用できるのは、
そもそも「強靭な精神力と肉体を持っている人間だけ」だ。
要するに、サイヤ人みたいな超人的な修行マニアじゃないと、
まともに使いこなせない仕様になっている。
普通の人間が「1年分の勉強ができるぞ!」と意気込んで入っても、
以下の流れで脱落する可能性が高い。
まず環境の過酷さに耐えられず、やる気が削がれる。
食糧が質素すぎて、テンションが下がる。
広いけど何もないので、結局何もできない。
孤独すぎて精神が崩壊する。
「もう……出してくれ……!」と泣きながら扉にしがみつく。
が、もしこの時すでに1年が経過していたら、ゲームオーバーである。
■(5)修行マニア以外にはオススメできません!
「精神と時の部屋」という名前のせいで、
どこか「落ち着いて、集中できる特別な空間」みたいなイメージを、
持ってしまうが、実態は真逆だ。
むしろ、ストイックすぎる人間用の地獄合宿場である。
つまり、一般人がこの部屋を使おうとすると、
ただの精神崩壊と空腹の地獄になる可能性が高い。
もし、「時間を自由に使える部屋が欲しい」というのであれば、
快適さと機能を大幅にアップグレードした、
「改良版・精神と時の部屋」を考える必要があるのだ──。
【第4章】理想の精神と時の部屋を考える
「精神と時の部屋」──名前はカッコいいが、
実際に入ってみると環境は地獄だった。
温度と重力は気まぐれに変わるし、食糧は最低限、
景色は真っ白で何の刺激もない。
そんな場所で1年も過ごせるのは、
サイヤ人か精神修行が趣味の仙人くらいだろう。
だが、もし、もっと快適で、誰にとっても便利な、
精神と時の部屋があったら、どうだろう?
時間の制約から解放され、好きなことに存分に没頭でき、
なおかつ過ごしやすい空間。
そんな夢のような場所を、今ここで考案してみることにした。
■(1)まずは、修行する人のための機能を強化しよう
精神と時の部屋は本来、戦士が己を鍛えるための場所だ。
だが、原作のようにただ広いだけでは、
初心者は何をすればいいのかわからない。
そこで、最新技術を駆使して、
「誰でも修行できるシステム」を導入する。
まずはAIロボットトレーナーの設置だ。
初心者向けに、ストレッチや基礎トレーニングの指導をしてくれる。
いきなり「さあ、1年間修行しろ!」と言われても、
何をすればいいのかわからず、初日で心が折れるのがオチだ。
そこで、個人のレベルに合わせた修行メニューを提案し、
進捗を管理してくれるAIトレーナーが必要なのだ。
そして、さらに上級者向けには仮想バトルシステムを導入。
「ドラゴンボールの重力室」と「マトリックスの仮想戦闘」を、
合体させた、夢のようなシミュレーション空間を作る。
好きな敵キャラを再現できるので、
「どうしてもセルと戦ってみたい!」とか、
「フリーザをボコボコにしたい!」という夢も叶う。
■(2)勉強・研究もできる環境に!
せっかく時間を自由に使えるのだから、
勉強したい人にも最適な空間にしよう。
精神と時の部屋の改良版には、
最新の知識が手に入る学習システムを完備する。
まず、全世界の書籍・動画・講義資料が揃ったデータベースを導入。
どんな分野の勉強でもすぐに開始できる。
物理学から語学、歴史、美術、プログラミングまで、
あらゆる知識がここで手に入る。
しかも、AI家庭教師が24時間対応可能!
こちらが「わからない!」と叫べば、
すぐに分かりやすく解説してくれるのだ。
もちろん、インターネットアクセスも自由自在。
Wikipediaはもちろん、
論文データベースや、YouTubeの講義動画までチェック可能。
「ちょっと調べものをしよう」と思ったら、
そのまま何時間もWikipediaのリンクを渡り歩いてしまう、
あの現象を存分に楽しめる。
学校の勉強だけでなく、
「ちょっと哲学を学びたい」とか「新しい楽器を習得したい」といった、
知的好奇心にも対応。
「1年の勉強をたった1日で終わらせる」なんて、
まるでドラえもんの秘密道具みたいなことができる空間になるのだ。
■(3)娯楽機能も充実! 勉強や修行だけでは精神が崩壊する
ここまで修行や勉強の話ばかりしてきたが、
ぶっちゃけ、それだけでは人間はやっていけない。
ずっと真面目に頑張るなんて、
余程のストイックな人間でもなければ無理な話だ。
そこで、精神と時の部屋には、最高の娯楽環境も搭載する。
・映画・アニメ・漫画・ゲームのアーカイブを完全完備!
・好きな作品のVR体験が可能!
たとえば、『ワンピース』の世界に入り込んで、
海賊として冒険することもできるし、
『ジブリ作品』の風景の中で暮らすことも可能。
・ゲームに至っては、「VR完全没入型」の最新技術で、
プレイヤー自身がゲームの世界に入り込める仕様!
「修行の合間にちょっとアニメでも……」という、
軽い気持ちで見始めたら、
気づいたら1年間ずっとアニメを観ていた、なんて事態も、
起こりそうだ。
■(4)快適な生活空間も確保!
原作の精神と時の部屋の最大の問題点は、「快適さゼロ」だったことだ。
そこで、改良版では好きな環境を自由に作れる機能を搭載する。
・景色のカスタマイズが可能!
真っ白な何もない空間はもう卒業。
リゾート風、和風庭園、未来都市など、好きな背景を設定できる。
まるで高級ホテルのスイートルームのような空間を作り出せる。
・好きな食事を無制限に!
もう最低限の栄養食なんていらない。
好きな食べ物を注文すれば、目の前に現れる。
「今日は寿司、明日は焼肉、その次はイタリアン!」なんて、
贅沢な生活も可能。
・人と会話もできる!
AI友人や、バーチャルペットを設定できるので、
「ひたすら孤独な1年」なんてことにはならない。
寂しくなったら、現実世界とつないで通話もできる。
■(5)この改良版なら、1年間どころか一生住める!
原作の精神と時の部屋は、戦士たちのための修行場だった。
しかし、私たちは「時間の制約なく、充実した人生を送りたい」のだ。
そこで誕生したのが、この改良版精神と時の部屋。
快適な生活空間、最高の学習環境、最先端の修行施設、
そして圧倒的な娯楽。
こんな場所が実現すれば、
もはや現実世界に戻る必要はないかもしれない。
だが、ここで一つの問題が浮上する。
「こんなに快適なら……一生出たくなくなるのでは?」
そう、この理想の空間は、
もしかすると「究極の楽園」ではなく「究極の沼」かもしれないのだ。
【第5章】似た概念は他の作品にもある!
「精神と時の部屋があったら……」と夢想するのは、
人間の性(さが)なのか、
時間や空間の制約を超える設定は、実は他の作品にも多く登場している。
時間を思いのままに使える空間、自分の望む世界を作れる場所、
現実と異なる時間の流れを持つ異次元──。
もし「精神と時の部屋」がしっくりこないなら、
別の作品の類似システムを活用するのもアリかもしれない。
それでは、他作品に登場する「時間と空間を超越するシステム」を、
いくつか見てみよう。
■(1)マトリックスの仮想空間──ホワイトルームは超便利!
『マトリックス』の世界には、
「ホワイトルーム」という便利な空間がある。
これは、プログラム次第で何でも作れる空間であり、
戦闘訓練や知識のインストールなど、
まるで精神と時の部屋のデジタル版のような場所だ。
特筆すべきは、知識をインストールできる点。
例えば、カンフーの達人になりたい場合、訓練する必要はない。
ただUSBのようにデータを流し込めば、
「お、俺、カンフーできる……!」と、一瞬で熟練者になれるのだ。
これは受験生や資格試験に挑む人にとって、
まさに理想的なシステムではないか?
たった数秒で、
「司法試験合格レベル」や「東大数学パーフェクト」になるのだから、
予備校ビジネスが崩壊する日も近い。
しかし、問題はこの空間が「ただの仮想現実」であることだ。
つまり、物理的な筋力アップや実際に肉体が強くなることはない。
つまり、ゲームのキャラメイク画面で、
「知力+10」みたいにボタンを押す感覚に近い。
ただし、現実世界に戻れば、やっぱりただの一般人。
戦えるのはあくまでマトリックスの中だけというのが惜しいところだ。
■(2)NARUTOの無限月読──極楽? それとも地獄?
『NARUTO』に登場する「無限月読」は、
精神と時の部屋のように「時間をコントロールする空間」というより、
「夢の中で自分の理想を生きられる」というシステムだ。
この技が発動すると、
人はそれぞれの「理想の人生」を生きられる世界に閉じ込められる。
つまり、望む人生が実現し、失敗もなく、
幸せな時間を永遠に過ごすことができる。
これは一見すると素晴らしいが、よく考えてみてほしい。
これは現実ではない。
もし、無限月読の世界で、
「超人気アイドルになった!」とか「魔法使いになった!」とか、
「異世界の英雄になった!」と思っていたとしても、それはすべて幻。
現実の自分は、
ただ目を閉じたまま木にくくりつけられているだけなのだ。
これって、よく考えると最強の引きこもりシステムでは?
「現実なんてもうどうでもいい!」と割り切れる人には、
向いているかもしれないが、
「いつか本当に何かを成し遂げたい!」と思う人には、
「終わらない夢オチ」のような恐ろしい空間に、
なってしまうかもしれない。
■(3)インセプションの夢の階層構造──時間操作の極致
『インセプション』の世界では、夢の中に入ることで、
現実とは異なる時間の流れを作ることができる。
しかも、夢の中の夢に入ることで、さらに時間を圧縮することも可能。
例えば、現実で10時間眠ると、夢の中では数日分の経験ができる。
そして、その夢の中でさらに眠れば、
さらに時間が伸び、夢の世界で数十年暮らすことすら可能。
これがあれば、
1日をフル活用して何十年分もの経験を積むことができる!
ただし、問題は、
「長く過ごしすぎると、現実と区別がつかなくなる」という点だ。
「あれ……俺、現実に戻ってるのか? それともまだ夢の中なのか?」と、
混乱し、最悪の場合、目覚めることができなくなる。
これは、精神と時の部屋で1年以上過ごしてしまい、
二度と現実に戻れなくなる恐怖と似ている。
つまり、インセプション式の時間操作も便利ではあるが、
「長くいすぎると、帰れなくなる」という致命的なリスクがあるのだ。
■(4)SF作品の「時間圧縮空間」──最速で経験値を稼ぐ方法
SF作品では、「時間の流れが速くなる空間」はよく登場する。
例えば、「1時間で何十年分もの経験を積める技術」があれば、
「一晩で歴史博士」「一週間で伝説のボクサー」みたいなことが、
可能になる。
この技術の最大のメリットは、
「実際に身体や脳の成長が反映される」こと。
つまり、仮想空間のような知識インストールではなく、
リアルに経験として身につくのだ。
もしこれが実現したら、
現代の教育やスポーツ界は根本的に変わることだろう。
ただし、これもまた、
「時間を速めすぎると、人生が一瞬で終わる」という問題を抱えている。
1時間のつもりがうっかりミスで100年経過したら、
「うわ、もう寿命だ!」という悲劇が待っているかもしれない。
■(5)ファンタジー作品の異世界転生・スキル習得空間
異世界転生ものでは、スキル習得のための修行空間がよく登場する。
例えば、「時間が止まる書斎」「異次元の修行場」
「死んでも復活できる特訓空間」など、
レベルアップに特化した空間が設定されることが多い。
この方式のメリットは、「強くなった状態で現実世界に戻れる」こと。
異世界転生系の主人公が無双する理由の大半は、
「こうした特殊空間でチートな修行を積んだから」に他ならない。
ただし、もしこれが現実にあったら、誰もが「最強」になってしまい、
世の中のバランスが崩壊するだろう。
考えてみてほしい。
もし全員が「精神と時の部屋」で最強になったら、
「最強」の基準そのものが変わるのだ。
■(6)どのシステムも一長一短!
時間の制約を超えるシステムは、どの作品にも登場するが、
すべてに「大きなリスク」がつきまとう。
やはり、「時間を自由に使える世界」は、
夢のようでありながら、深い罠があるのかもしれない……。
【第6章】もし精神と時の部屋があれば?
もし、本当に理想の「精神と時の部屋」があったら、
一体どんなことができるだろうか?
時間の制約なく、やりたいことを好きなだけできる空間。
これはまさに、人類の夢そのものだ。
想像してみてほしい。
ドアを開けて足を踏み入れた瞬間、
あなたはもう時間という束縛から解放される。
何をどれだけやっても、現実世界では1日しか経たない。
1年間のスキルアップ、1年間の修行、1年間の読書、1年間のゲーム、
すべてが可能なのだ!
■(1)やることが尽きない!
「時間が無限にあるなら、何をしよう?」と考えるのは、
楽しい妄想の時間だ。
普通の1年間では、
仕事や勉強、雑務に追われてあっという間に終わってしまう。
だが、この理想の部屋なら、
「1年間フルに使って、好きなことだけをやる」という、
夢のような生活が可能だ。
例えば、武道の修行を始めたとしよう。
初心者のうちはパンチやキックの基本すらままならないが、
この部屋なら、
「1年間みっちり鍛錬しても、現実世界では1日しか経っていない」のだ。
これなら、「1日で超人的な戦闘能力を手に入れた謎の人物」として、
世間をざわつかせること間違いなし。
勉強も同じだ。学生が、この部屋に入れば、1年間じっくり勉強できる。
1日で東大レベルの知識を網羅し、
「たった1日で天才になった学生」として話題になるだろう。
小説を書きたい人は、ここで1年間こもって執筆することも可能。
なんなら、1年間で50冊のベストセラーを書き上げ、
「あれ、この人、1日前までは作家じゃなかったのに?」と、
出版社を困惑させるのもアリだ。
ゲーム好きなら、
これまで積んできたゲームを全部クリアすることができる。
1年間、ひたすらRPGのレベル上げをしたり、
FPSのプロレベルまで鍛えたり、
レトロゲームから最新ゲームまで遊び尽くしたり……。
そして現実世界に戻ったら、
「え? 1日でゲーム100本クリア?」と、
ゲーム界を震撼させることになる。
このように、「1年間で何をする?」という問いには、
「なんでもできる!」という答えしかないのだ。
■(2)でも、ずっとそこにいたら?──浦島太郎問題
ここで、一つの問題が浮上する。
1年間も、この部屋で過ごしてしまったら、
現実世界に戻ったときに『浦島太郎状態』になってしまうのでは?
確かに、1年間もの間、外の世界の情報から隔離されていたら、
浦島太郎どころか、文明の進化についていけなくなる可能性すらある。
例えば、入る前は最新だったスマホが、
1年後には時代遅れになっていた、とか、
流行していたアニメが終わり、すでに続編が出ていた、とか、
色々な問題が出てくるかもしれない。
しかし、ここは理想の精神と時の部屋だ。
ただの修行場ではない。
だからこそ、この問題にも完璧な対策を用意する!
(あ) 現実世界の情報をリアルタイムでチェック可能!
この部屋には、インターネット完備。
現実世界のニュースをチェックしながら過ごせば、
1年間のブランクを感じることはない。
YouTubeもNetflixも見放題、SNSも利用可能なので、
流行の変化をリアルタイムで追いかけることができる。
(い) AIスタッフが毎日ニュースを要約して教えてくれる!
専属AIロボットが、毎日の出来事をニュース形式で報告。
「今日は○○がトレンドです」「新しいiPhoneが発売されました」
「世界の政治情勢はこう変わりました」と、
まるで新聞を読むように、重要な情報をサクッとインプットできる。
(う) 現実世界の家族や友人ともオンライン通話OK!
1年間も誰とも話さないと、
コミュニケーション能力が退化してしまうのでは?という心配も不要。
現実世界の人々と普通にビデオ通話やLINEができるので、
「今度みんなで焼肉行こうね!」なんて会話も普通にできる。
(え) 1年間過ごしても、現実では1日しか経っていないので問題なし!
そもそも、この部屋で1年間過ごしても、
現実世界では1日しか経過していないのだから、
浦島太郎になる心配はない。
極端な話、「昨日のトレンドが今日のトレンド」として、
続いているのだから、情報格差が生まれることはない。
■(3)これなら、1年間過ごしても安心!
この理想の精神と時の部屋があれば、
「やることが尽きない!」どころか、
むしろ「まだ時間が足りない!」と感じるレベルになるだろう。
1年間の間に、スキルを磨き、知識を深め、趣味に没頭し、
ゲームや映画を楽しみ尽くす──、
こんな完璧な空間が実現すれば、人生は劇的に変わる。
だが、ここで最大の問題がある。
「これ……楽しすぎて、ずっと出たくなくなるんじゃないか?」
1年後、ドアの前に立って「さあ、現実に戻るぞ!」と思った瞬間、
ふと考えてしまう。
「でも、あと1年だけ……」と。
そこから抜け出せなくなり、気づけば10年が経過……、
なんてことになったら、もはや「超・浦島太郎状態」である。
結局、「時間を自由にできる空間」というのは、
夢のようでありながら、
一歩間違えると現実世界との関係を切り離してしまう、
危険な場所なのかもしれない。
だからこそ、精神と時の部屋に入る際には、強い意志を持つことが大事!
さあ、あなたなら、この究極の部屋で何をする?
そして、本当に1年後、ちゃんと現実世界に戻れる自信はあるだろうか?
【第7章】理想の自由な空間を求めた結論
精神と時の部屋、この言葉を聞くと、誰もが一度は憧れる。
もしも時間を自由に使える空間があったら?、
そんな夢想を抱かずにはいられない。
締め切りまであと1日?
ならば、精神と時の部屋で1年間じっくり執筆を……!
勉強が間に合わない?
よし、この部屋で1年間こもって完璧に仕上げよう!
筋トレしたいけど時間がない?
ならば1年間みっちり鍛えて、現実世界に戻る頃にはムキムキの超人に!
夢は広がる。
だが、実際の「精神と時の部屋」は想像以上に過酷な環境だった。
真っ白な無限空間、極端な温度変化、重力の変動、最低限の食糧。
そして、何よりも致命的なのが、「娯楽がゼロ」であること。
これでは、精神と時の部屋というより、
「精神をすり減らす部屋」ではないか。
■(1)理想の部屋を作るなら、柔軟な機能が必要!
もし、本当に「完璧な時間無制限空間」を作るなら、
もっと快適で、誰にとっても便利な機能が必要になる。
まずは、環境のカスタマイズができる機能。
ただの白い部屋ではなく、好きな景色や背景を作れるようにしよう。
リゾート風、近未来都市、山奥の隠れ家、
あるいは「どこでもドア風に世界各地を旅できるモード」なんてのも、
面白い。
次に、学習や修行のための設備。
AIロボットによるパーソナルトレーニング、VR戦闘シミュレーション、
知識を瞬時にインストールできるマトリックス的なシステムがあれば、
最高のスキルアップ環境が整う。
そして、何より重要なのが娯楽機能だ。
ゲーム・映画・アニメ・漫画・VR体験、
何でも揃ったエンタメ環境があれば、
修行や勉強の合間にリフレッシュできる。
「1年間、娯楽なしで過ごしてください」と言われたら、
大抵の人は5日も耐えられない。
さらに、「浦島太郎にならないシステム」も必須だ。
現実世界の情報をリアルタイムでチェックできるモニター、
SNSやネットニュースを随時確認できるシステム、
定期的に現実世界の友人と通話できる機能があれば、
「え? 俺が部屋に入る前って、まだ昭和だったっけ?」なんて事態を、
避けることができる。・
■(2)結局のところ、時間の制約を超える技術は夢のままか?
だが、ここで現実的な問題が浮かび上がる。
「こんな部屋、本当に作れるのか?」
正直、現代の科学では、
「1日で1年分の時間を過ごせる空間」なんてものは存在しない。
時間の流れを遅くすることは相対性理論的に可能だが、
速めるのは難しい。
今のところ、我々は、
「時間は有限なもの」として生きていくしかないのだ。
それでも、技術の進歩は目覚ましい。
VRやARの進化によって、
「仮想空間で時間を自由にコントロールする」未来は、
案外近いのかもしれない。
いつか、
「今日はVRの精神と時の部屋で3年分のスキルを磨いてくるわ!」
なんて会話が、当たり前に交わされる日が来るのかもしれない。
だが、そうなるとまた一つの問題が出てくる。
そんな便利な部屋ができたら、
誰も現実世界に戻ってこなくなるのでは?
たとえば、ゲーム好きが、
「ちょっと1年間、精神と時の部屋でゲーム漬け生活するわ」と、
入ったら、そのまま戻ってこない可能性が高い。
小説家が「よし、ここで100冊書くぞ!」と意気込んで入ったら、
気づけば30年間こもりっぱなしになってしまうかもしれない。
最悪のケースでは、
「もう現実世界には戻らなくていいや」という人が大量発生し、
社会そのものが崩壊する危険すらある。
便利すぎる空間は、時に「終わらない牢獄」になってしまうのだ。
■(3)でも、いつか実現するかもしれない未来に思いを馳せながら・・・
結局のところ、私たちは「時間が足りない!」と嘆きながらも、
その限られた時間の中でどう生きるかを考えていくしかない。
精神と時の部屋は、確かに魅力的だ。
だが、実際にそんな空間ができたとしても、
それを使いこなせるかどうかは、結局「自分次第」なのだ。
時間が無限にあったとしても、何もしなければ意味がない。
1年間こもっても、ただボーッとしていたら「時間の無駄」になるだけ。
逆に、たった1日でも全力で取り組めば、
1年間分の価値を生み出せるかもしれない。
だからこそ、私たちは「精神と時の部屋」がなくても、
日々の時間を大切に使うべきなのではないか?
未来のどこかで、
本当に時間の流れを変えられる部屋が発明される日が来るかもしれない。
だが、その日が来るまでは、
限られた時間の中で最大限のことを成し遂げるしかない。
そう思いながら、今日もまた、「ああ、時間が足りない!」と嘆きつつ、
現実世界を生きるのであった。
完