時を刻むもの(完)
あーるくんの卒業試験は無事に終了した。
合格点を余裕で超え、クラスの中で4位という成績を納めた。
あの不安がっていた、あーるくんは、どこへやら。心配無用だった。
「4位!?私が言った通り、本当に心配なかったじゃない。よかった、おめでとうございます。」
あーるくんなら、大丈夫だと信じてはいたが、4位という成績を出すとは、そこには驚きを隠せなかった。
「そうなんだよ。えむのおかげ。ありがとうな。んでさ、お礼と言ってはあれだけど…」
あーるくんは、何やら自分のリュックを探り始めた。
「これ。えむにあげる。応援してくれたから、俺、頑張れた。感謝してる。ありがとうね。」
あーるくんの手の中にあったのは、なんと、以前、彼女になった人にあげたいと言っていた、腕時計だった。
この時はまだ、お互いの気持ちを探り合っていた時期で、正式に彼女になったわけではなかった。
それでも、確実にあーるくんが私を友達以上の、特別な仲だと思っていることは確実だった。でなければ、この腕時計をプレゼントしようとは思わないはずだ。
「え!この腕時計って…彼女にあげたいって言ってたやつ…。私にいいの?」
「それほど助かったってこと。ありがとうね。」
あーるくんは、私に一礼をしながら言った。
その後、この腕時計は私のお気に入りに。肌身離さずつけていた。
3,4年ほどは身につけており、電池が切れるまで使っていた。
変えられるフレーム部分は、雨風に晒されて錆だらけにもなった。
それほど私にとって、ものすごく嬉しいプレゼントだった。
そこまで使ったのだから…と今は、その腕時計とはお別れをした。
でも、お別れする勇気がなく、あーるくんに許可をとったほどだった。
2人の時間は今も、これから先もずっと刻まれ続けていく。きっと、濃い時間になっていくであろう。
今後もずっと一緒
そう、2人で誓いあっているから
失いたくない、大切な時間
完
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