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【北極冒険】Day22:2019.04.28

22日目。まずはいきなり写真から。

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この冒険中、唯一この写真だけかな?

”柏倉さん、お願いです、あれ撮ってください”

ってお願いしたの。プロになんて失礼なこと言ってるんだろうかとも思うが、この写真、この山、この模様、今見ても心がざわざわする。

おそらく世界中でただ俺一人が感情的になる写真だと思う。

今回の日記はとても大事な日です。めちゃめちゃ印象に残って、いまだにあの時の感情がよみがえってくる、そんな日の日記です。書きたくないです。

 歩き出して22日目、なんとか午前からいいペースを保てたので13時には1つ目の島に上陸できた。本当によかった。

 問題はそこからだった。上陸ポイントの河口は見つけたが、そこからのナビゲーションが全くわからなかった。確認しようとしたが、荻田さんに急かされ、見当違いなナビゲーションをみんなに伝えてしまった。

荻田さん
「まだわからないの?正解はこっち、自分たちが2日間も目標にしてた山が右にあってもわからないの?全然観察できてない。ぼーっとみてたからだ。」

西郷
「すみません、でもぼーっとみてたわけじゃないです。」

荻田さん
「みてねぇよ。じゃぁなんで分からないんだ。全く見れてない。」

西郷
「すみません」


キツかった。最初は納得できなかった。その後も。「西郷さん、どこ目指せばいいんですかね?」とメンバーに聞かれるが、全く自信がなかった。イラついたし、正直他責もした。けどなんで自分がナビゲーションできなかったのか。多分、「見てた」だけで「観察」と「想像」が全くできていなかった。(ホームベイ進行中)ずっと目標にしていた山がどの方角にあり、上陸するとどう見えるのか、どこに位置しているのか、次のナビゲーションに役立てられるのか、明日の進路への影響はあるのか、他の山との位置関係は。それを考え始め、理解し、自責した。1時間後には気持ちを切り替えた。休憩中、荻田さんがソリを引いて僕の真横に来た。

荻田さん
「そういや、もう日本は10連休だな」

西郷
「マジっすか!?完全に忘れてましたっww」

厳しくも、成長できる日々。さぁ明日も、頑張ろう。

みなさんがこれをどう読んだか、少し気になりますね。
最初の写真は、ずばり問題の「目標」になってた山々です。

当時もそうですが、僕にとってはものすごく大きな学びだったので、当時の思いも入れつつ、帰って来てから改めて感じたこととか学んだことを紐付けしてみたいと思います。

1.観察したか

まずは自分の失敗について振り返りたいと思います。現地では日記にある通り、気持ちを切り替えるために瞬間的にいろんなことを思考してたんですが、極論は自分の「みる」という行為が甘かったということです。

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この矢印で指しているところ、これが、ホームベイ進行中に目標にしていたポイントです。「この辺りを目指して歩こう」とみんなで共通認識持っていました。

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海上でも何度も確認しました。上陸ポイントがずれてしまうと、その後の行程に支障をきたすので。確かに僕は地図・自分たちの位置情報・方角・距離などから、「対象の目標」は把握していました。だからこそ、日程的にもルート的にもミスることなく、無事に目標日数でホームベイを抜けて島に上陸することができました。

しかし、それではまだまだたりませんでした。本当の意味で、目標物を捉える事ができていませんでした。日記にも書いた通りで対象物を全然観察できていませんでした。僕たちがやっていたのは、

「真っ直ぐ進むため目指して進む」ために「凝視」し、
「間違っていたら怖い」から「安心する」ために「確認」していた

だけでした。凝視する事、確認することは「観察」ではありません。凝視しているから、そこしか見えない、全体把握に努めていない。だから都度都度の対応になって行き当たりばったりしてエネルギーを使ってしまう。

目標の山は上陸するとどう見えるのか?
どこに位置しているのか?
次のナビゲーションに役立てられるのか?
明日の進路への影響はあるのか?
他の山との位置関係は?   ・・・etc

まだ見えていない、まだ分からない事に対して、自分なりに「問い」を立ててその目線でもう一度目の前にある「事実」を理解し、「検証」する。それでも分からないものは「仮説」として答えを持ち、より「事実」が近づいてきた段階で「再検証」して「仮説」を軌道修正する、そして進む。その繰り返し。

「観察」とは、そういう事で、凝視することとは全く違う。この思考法ができていなかったのが当時の僕の失敗です。情けない。


2.景色と情報の違い

メンバーのみんなと地図と目の前の山々の地形、太陽の位置、時間、方角を確認しながら、ひたすら進む日々は『ただ荻田さんに着いて行くだけではない冒険』になり、時間の経過が早く感じるようになってました。その頃、気づいたのは、

山々が景色ではなく、情報になっている

ということ。荻田さんの後をついて行っている時は、自分の目の前に「道」がはっきりとあり、迷うことなんてありません。しかし、いざ自分たちで「道をつくる」となると、全く今までと見えてくるものが変わります。

被写体だった山々は「位置情報」に、
「きれいだな」とみていたサスツルギは方角と角度の情報に、
「あと何時間だろう?」と眺めていた腕時計は、太陽と合わせてナビゲーションにとって最重要なコンパスに

この感度の高さを極めてるのが「プロ」ですよね。観察するセンサーの数、というか、項目の数というか。これが人より多いからわずかな情報から観察・推論ができるし、一般人よりも早くかつ確実に答えに近づける。みなさんの仕事でもこれは大いに当てはまるんじゃないでしょうか。勉強もそうだと思う。

観察する思考法と合わせて持たなきゃいけないのがこのセンサー

これも、圧倒的に足りてなかったのが、失敗の要因でもあります。


3.現実を突きつける勇気があるか

これは、帰国してから読んだとある本の内容です。

当時の宗教家たちが「心配しなくてもだいじょうぶ、だいじょうぶ。平和だ、平和だ。」と行っているけれど、「もう日々が入っている石垣を上手に漆喰で上塗りして『平和だ、平和だ。』と言ってるのと同じだよ」とイエスは言っている。だから逆に漆喰を剥がして、「あ、こことここ、もう壊れかけてるよ」と、それを明らかにする所から始めないと、いい加減な平和になってしまうから、長続きしない。だから分裂をもたらすためにきた、と。
            
                               『聖書と歎異抄』五木寛/本田哲郎(東京書籍)p54より

もう、本文そのままです。この日、あんだけ荻田さんに言われたのに、1時間くらいで自分が立ち直れたのは自分でもわかってたからだと思います。

「これじゃダメなんだろうな」って。

だけどその解決策がわからない、それでも進むしかない。”ナビゲーション”っていうそれっぽい言葉だけに囚われて”やったことないから”という言葉で誤魔化していたのがもろに出た。恥ずかしい限りです。改めて振り返ってみると、自分には「観察」スキルという一般的な力がなかっただけなのに。

11日目の日記にも書きましたが、僕は怒れない。目の前の人に面と向かって直接「これがダメだ」という勇気がなかった。だけど荻田さんはそれができた。これについてはこれ以上書くことはないです、みなさんも一度、自分自身の行動を振り返ってみてください。

※引用文献が宗教関連でしたが、僕はキリスト教信者でも仏教徒でもありません。本気の人が見ていたらもしかしたら怒られそうですが、許してください。宗教を学ぶのは好きです。ただ荻田さんのことを「神」や「仏」だと思ったことはありません。(笑)


長々と失礼いたしました。

ただ、この日のことは本当にいい学びになっています。自分の弱さを認識した日でもあったのでものすごく辛い日でしたが、やっぱこういう日のことほど記憶には残っています。人間よくできてるよな。楽しい時間は忘れても、辛かった時間は忘れない。そこから学んで次は失敗しないように、脳がそうさせてるんでしょうか。詳しくは知りませんが、なんかそんな気がします。

この日の夕方、柏倉さんにインタビューを受けました。
そのことは、明日の日記で触れることにします。


さぁいよいよ冒険も終盤、行程も残す所あと数日です。
しかしこっから、ここからが本番でした。このマガジンの説明欄に、

北極冒険した時の日記を公開します。僕のブレブレメンタルと暴言たちがついに世の中に放たれてしまいます。

と書いているのは『26日目』からの日記を指します。ここまでの日記はそのための序章です、前置きです。書きたくないです、書くけど。おそらく書いたら友達が減ります。


では、今回はこれで終わり。写真何枚か乗っけときます!


⬇️ 4月28日撮影の写真 ⬇️

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ナビゲーションがわからなくなってパニックの自分とその姿に不安を覚えるみんな。

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きつい島越えがスタート。「この道であってるんか・・・・」と超絶不安になりながらも歩く時間。冷や汗ダラダラ、心臓バクバク。

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もうこの写真見ただけでゾッとします。笑



終わり

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