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■考察 東京リベンジャーズ——世界の歯車を回しているのは誰か


おもしろすぎるだろ!!!


さいしょ、「タケミチ(中学時代)の髪型、ダッセェ……」としか思ってなかったですけど、観てみたらめちゃくちゃ夢中になってしまった。なんだこの時をかけるザコヤンキーは。そして周りを取り囲むヤンたちのカッコよさ&東京CITYの美描写。
コミックス大人買いした。あとヒナが鬼のようにかわいい。

考察せずにいられない、エンタメな~~~

※「進撃の巨人」すら単行本まで我慢したのに、こっちはもう我慢をやめたので、22巻の続き、最新話213話まで読んで書いてます。鬼のようにネタバレします。

■そもそもどういう、何の話なのか

まず、主要なヤンキーさんたちがかなり洗練された見た目なのがいい。ドラケンとかは置いといて、前下がりマイキーや三ツ谷くん、イザナ、瓦城など、ヤンキーっぽさはあるけどだいぶスカした人たちが多い。だからいわゆる〜なヤンヤンしている見た目に抵抗あっても、目立つ役はみんなただのイケメンだから、中身に入って行きやすい。

話の方は、なりあがりヤンキー漫画っぽさを装いつつも、筋は別にある。「見えすいた未来や、確定した運命にあらがい、それを変えていく」話だと思う。

タケミチの戦闘力はほぼコラッタで、ぜんぜん勝てない。勝てないのに、諦めずにゾンビ状態で目的を遂行しようとする姿勢、その姿勢から溢れ出る熱気がみんなを動かし、結果的に運命を書き換えていく。

で、それにタイムリープとかいうド直球SF要素が混ざったのが面白い。素材は直球なのに組み合わせ方がすごくて全然普通に見えない。

「どうせこうなるからどうでもいいや」みたいな現代の傍観者的アティチュードに対するアンチテーゼとも言えて、タケミチはダサカッコいい。主人公のそういう内面を、ヒナというスーパー前向きヒロインが気に入ってくれるのが余計うれしい。

■だれが「リベンジャー」なのか

ずっと読んできて、タイトルが「リベンジャーズ」ということにふと思い当たる。複数形なのだ。

過去へのリベンジを果たそうとしている人間は、タケミチだけでなく、複数いるということになる。

当然、真っ先に思い当たるのは直人。

直人が「姉を救う」という同じ目的のもと、タケミチとタッグ組んでんだから、そこですでに複数いるじゃん、とはなるのだけど、直人だけで充分なのか? 

直人は、ヒナを救うためになくてはならない存在だった。

しかし、ヒナを救うための物語は、22巻いったん峠を越しているように見える。ヒナとタケミチはゴールイン寸前で、マイキーが深い闇に堕ちている点をのぞけば、これ以上の未来はない。直人も重要な役割をすでに果たし終えている。

彼らが今後、引き続き重要なキャラクターであり、おそらく新しいかかわり方をしてくるとは思うが、それを効果的に魅せるためにも、新しいリベンジャーの存在が必要だ。

ヒナの奪還ではなく、新たなリベンジの軸が生まれてくるはずだ。

その軸にふさわしい物語を持ちうる人物が、おそらくマイキーであり、ヒナであり、半間なのではないか。(個人的にはヒナのパパまで疑ってますが……)。

なぜこのメンツを挙げたのかは、……別稿で(マイキーとヒナはいいとして、半間もだいぶ疑ってたんだけど、最近疑いが薄れてきてちょっと考え直してます)。

この「リベンジャー誰なのか問題」は、似たようなこと考察してる動画あって、なんかよかった。

■運命との向き合い方

先も言ったとおり、この漫画は「見えすいた未来や運命を変える」主人公を見守っていく漫画だと思う。

運命を変えられるのは、もちろん、どこをどういじれば未来がよくなるか分かっているタイムリーパーなわけで、つまりタケミチになる。

しかし、タイムリーパーでないにもかかわらず、運命を変えまくったツワモノがもう一人いる。

稀咲鉄太だ。

稀咲はタケミチの活躍によって変更が加えられ続ける状況の中でも、「日本一の不良になる(そしてヒナをゲットする)」目的を達成するために、臨機応変に人を動かしまくった。トラックに轢かれる世界線になるまでは、ほぼ100%、「日本一の不良になる」とこまでは達成できていた。

稀咲は、タケミチのせいで自分にとって負の方向に傾く運命を、何度も自分の力だけで書き換えたわけだ(根源的に悪なので、最終的にヒナと添い遂げることは、まずムリだったわけだが)。

なぜこの視点で稀咲に着目するかというと、そもそもこの漫画には、「運命を変えようと努力する」人間が、思いのほか少ないという特徴があるからだ。

あっくん、ドラケン、千冬、三ツ谷、その他主要キャラの言動を思い返して欲しい。

あ「(東卍を辞めるのは)無理だよ。稀咲が怖いんだ。俺は稀咲の兵隊だ」

ド「俺らはアイツらとは決別したんだ。千冬にも口裏を合わせてもらった。だからお前ももうマイキーにかかわるな」

三「生まれた環境を恨むな」

彼らは運命に対して、非常に従順だ。進み出した運命を下手に変えることが正義だとは思っていない。

最初の方では、タクヤだって、死ぬと分かっていて喧嘩賭博に突っ込んだ。無理な話と分かっていても、断らない。よくないと思っていても、従う。

単にヤンキー界のルールでは? というのもちょっと思ったけど、そうだと言い切れる感じがしない。これが一般的な感覚として描かれ、登場人物の基本的な人物像になっている(令和の人間像を炙り出しているとも思う)。

それに対し、タケミチはタイムリープ能力によって、稀咲はその頭脳によって、運命を変えまくったのだ。

「東京リベンジャーズ」は、彼らのような気合の入った連中が、シラけた運命の糸をどう張りなおすか? という点が物語の根幹をなしている。

運命に従順なほかのキャラクターたちも、奮闘する彼らの熱意にほだされ、動きが良くなっていくのがおもしろい。動く人には、わりとみんなついてくるのだ。

まあ、タイムリープでもできない限りは、タケミチだってダラダラ生きてたし、稀咲はそもそもの動機が不純すぎた。運命なんて、傍観するように生きていくのが普通なのかもしれない。

■能力はタイムリープだけではない?

もちろん、タケミチや稀咲とは別に、運命に対して別の向き合い方をしているキャラクターが何人かいると思う。

まずはマイキー。

端的に言って、この人には人を見抜く力未来を感知する力があるんじゃないか、という気がする。

なぜか。

まずはマイキーの過去の言動から思い出したい。

ドラケンに初めて会った日のマイキーはこう言っている。

「四十八手って、いくつか被ってると思わない?」

小五の子どもが、四十八手を知っていることは今どきおかしくないと思うし、まして歳上の兄がいたマイキーだからそんなのよっぽどだが、それを初対面のヤツにいきなりふっかけることには、違和感がある。いくらマイキーがぶっとんでいるとしても。

直接本人に言われなくても、マイキーにはドラケンが風俗店で暮らしていることがわかったから、こんなセリフを叩き込めた、と考えられないだろうか。

最終章に入る前、タイムカプセルに入れた手紙に書かれていたことも、この考え方を補強してくれているような気がする。

マイキーは、みんなの12年後の姿をほとんど言い当てているのだ。

その場にいた元東卍の面々は、「当たってるよマイキー、すげえな」的な、のほほんとしたコメントに終始していたが、そんな風に当てられたのはただ単にまぐれが成功したからではなく、そもそもマイキーが彼らの未来を知っているからだ。

「ワールドトリガー」を引き合いに出せば、迅さんのサイドエフェクトに近いものを持ってるんじゃないか。

しかし、マイキーが未来を見通すことができるなら、なぜ解決するための前向きな行動ではなく、破滅的な行動をとってしまうのか、という疑問が出てくる。

おそらく、マイキーの「黒い衝動」は、未来を感知する能力をも押さえつけてしまうほど強烈なものなんじゃないか。

未来を見通すことは、人を虚無に落とし込んでしまうはずだ。どうなるかわかっている未来に時間を進めていくだけの日々なんて、あまりに退屈すぎる。

「黒い衝動」がマイキーのなかに生まれてしまった原因が、今後、作中でどれくらい詳しく語られるかはわからない。

しかし、未来感知能力のみについて言えば、マイキーにとっては、決まりきった未来を過ごすだけの日々が、どうでもよくなってしまうことがあったのではないかと想像する。

気がかりなのは、マイキーのタケミチに対する態度だけ、やや異なる感じがあることだ。そんなの当たり前だが、改めて見返すとやっぱり気になる。初めて会ったときのマイキーはこう言った。

お前、本当に中学生?

なぜ、喧嘩でもやられっぱなしのコラッタタケミチの正体を、ただの中学生ではなさそうだと、いきなり見抜くことができたのか。

その後も、83抗争後のタケミチとの会話で、改めて「お前は何者だ?」と、誰よりも早く東卍内の異変に気づいていた(ぶっちゃけ知っていた)タケミチに疑念を向ける。

タケミチはタイムリープでやってきた存在で、マイキーが感知できる未来からすれば異質な存在だったはずだ。

なにか、ほかの人物のことを見抜く時とは異なる、おかしな反応を感知した、というのが真相なのではないだろうか。

タケミチのタイムリープは突然始まったから、当初のマイキーにとって、タケミチが未来からやってくることは、予知できないことだったのではないか。だからこそタケミチに興味が沸いて、「おれたちダチな」的な展開になったのだと考えれば、収まりは悪くない。

ちなみに、タケミチがマイキーとサシで、自分がこれまでみてきた未来のことを語る場面で、マイキーは、キヨマサの喧嘩賭博にあくせくしていた時のタケミチが、「背負っているものが違うように見えた」と、当時の印象を明かしている。だから中学生に見えなかったんだ、と。

この、タケミチが背負ってきたものを感じた、というのも、マイキーの未来感知能力の一部だと言えるのではないだろうか。溝中5人衆をはじめ、タケミチにもっと近い存在も含めて、他の誰しも、そんな指摘はできていなかったのだから。

続く場面では、「ときどきうなずくくらい」で未来の話の傾聴に徹している。彼らしいタケミチへの接し方ではあるが、すでに彼をタイムリーパーと認識したこの段階では、自分の知っている未来との答え合わせをしていたという可能性もある。

なお、タイムカプセルの手紙の中で、マイキーはタケミチだけは明確な未来を言い当てず、「ヒナちゃんを幸せにしろ」と書いている。タケミチが踏ん張らなければ、ヒナは幸せにならない。つまり、今後、またヒナに危機が訪れるのだ。

ヒナについては、さいきん、絶対あいつもタイムリーパーだろ説がけっこう目立つので、あらためて別途言及したい。

(それから、半間にもマイキーと同じ未来を見とおす力があると思って、すこし似たような文章書いたんだけど、さいきん自信無くなってきたので、また書き直そう。これが序盤の方で書いたこと。)

注意したいのは、マイキーは未来や人を見通すことができるが、運命に変更を加えることはできない、と思われることだ。

「黒い衝動」の存在からも明らかなように、マイキーはその能力ゆえに強い虚無感に取り憑かれている。

虚無にさいなまれた彼にとって、運命がこの先どうなるか、という不安や心配に対して、自ら手を加えようという発想はないのだ。

そもそも、マイキーもそんなことできるとは思っていないだろう。他人に手をさしのべられるとは思っていない。一寸先の闇を嗅ぎ分け、それをただ、じっと見ている。

だからこそ、「一寸先の闇」を体当たりで解決しようと奮闘するタケミチや稀咲は、彼らの薄暗い未来を、新しい未来に変えてくれる存在だった。あまりに貴重で、大切にしたい、代えがたい存在なのだ。

■黒幕はいるのか

ヒナが何度も殺され続けている以上、黒幕がいるという説がある。

しかしこれは、ヒナ殺害にもっともわかりやすい動機をもっていた稀咲がタイムリーパーでなかったこと、稀咲が事故死してしまったことで、もうこの「ヒナ殺しの犯人=東リベ最凶の首謀者」的な考え方はナシになっている気がする

もし、ほんとうに「あなたの番です」的な感じで「ワシが犯人じゃ!」っていう暴露が最後に用意されているとしても、それがすなわちヒナ殺害の犯人とは限らない。

だっておかしいと思う。タイムリープをめぐって、幾重にも交錯する複雑な物語が、中坊の恋愛がらみのいざこざで終わるか、というと、そんなレベルで終わる気がしない。タイムリープをめぐって、もっと大きな謎の首謀者が用意されていないとおかしい。

そしてその謎が、「タイムリープってけっきょく何?」という話になるはずだと思う。

おそらく、これまで(多くの読者が稀咲を疑っていたのと同じやり方で)黒幕を疑うべき段階は過ぎ去っていて、いまは「タイムリープはなぜできるのか、それは何の目的で誰がタケミチに付与したのか」という謎に迫るべき段階になっている気がする。

誰なんだろうね。

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トピックがバラバラだけど、こんなことを考えてみた。

週間できちんと漫画を追うなんてほんといつぶり、ていうかもはや初めての経験な気さえする。

考察考察っていう、問題に対して正解を導き出そうとするだけの、謎解き的な読み方ばっかり横行しちゃうと、作品本来の味わいから遠のいてしまいそうなので、それは嫌なんだけど、こうやって、色んな人が考察して、描かれていることに対して自分の解釈を広げていくっていうこと自体は、フィクションの理想的なありかたなんじゃなかろうか。

考察動画オモロいの多いので拝見しつつなんかまた考えたこと書きたいです。

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