運転の目的地
47歳まで、運転せずに暮らしてきたから、もうすっかり運転しない前提の生活様式が定着しているのである。いろんなところに行けるようになりたいと思って免許を取ったけれど、その様式は簡単には変わらないのである。休みの日のお出かけは電車で行けるところ、と決まっていたから、急に車という選択肢が現れても、駅のない場所に行くという感覚がどうも、つかみどころがない感じなのである。
だから、運転するために、無理やり目的地をひねり出すことになる。行きたいところに行くというより、行けそうなところを探す。日帰りならマックス片道2時間以内で、道の駅とか、アウトレットモールとか。なんだかとてもマテリアルな、お金を使う楽しみ方しかない場所に偏りがちなのが、しっくりこない。ま、どこに行ったってお金は使わざるを得ないのだけど。
夏の間はあまりに暑いので温泉という目的地を封じられていたのだが、そろそろ夫も温泉に付き合ってくれるようになった。行先の選択肢が少し増えてうれしい。
だが、別にどうしても行きたいわけでもない場所に、気が進まない夫を付き合わせている感じが否めなくて、なんだか誘うのも気おくれしてしまっていた。先日は日帰りで箱根に出かけたのだが、当日いきなり箱根に行くと言い出す妻に付き合いながら、めんどくさーという内心が隠し切れない様子が見て取れて、くそうこうなったらひとりでどこでも行けるようになって、休日には夫をぽつねんと家においてきぼりにしてやる!などと心の中で鼻息を荒くしていた。
さて、こないだの三連休の土曜日、わたしは特に予定もなく、家でのんびりしながらたまった細々しい用事を片付けようかと思っていた。熊谷まで電車でスポーツの試合を観に行く予定にしていた夫が、雨がひどいのでどうしようかと迷っていた。それなら車で送ろうかと言っても悪いからいい、という人なのだが、待っている間近くの日帰り温泉に行くから私も楽しいはずだと言うと、それならそうしようかということになった。
雨の中関越で熊谷に向かい、ラグビー場で夫を降ろしてさらに5分ほど、「花湯スパリゾート」へ。駐車場がいっぱいでびびりながら、しばらくぐるぐるさまよった。
男性は混雑しているらしく入館待ちだったが、意外にも女性は少ないようですんなり入れ、お風呂もすいていて快適だった。たくさんお風呂があって多くは源泉かけ流し、中でも加温なしのぬるめの源泉のお湯がとてもよかった。のんびり浸かってぼんやり考えごと(主に次の旅の行先など)。
試合が終わった夫と合流するころには、雨が激しくなっていた。夫が悪天候の中行列に並んでバスを待たずにすんで、よかった。地理音痴の私は熊谷の遠さに驚いたが、高速に乗ってしまえばあっという間で、ノンストップで帰宅。
今回は夫の行きたい場所に車で行き、私は私でやりたいことをして過ごす、win-winな休日が過ごせて、非常にありであった。数回に1回くらいはこういうお出かけができたらいいと思う。