サイバニーのさめほし先生の「羽化」に対する考え
これは僕が友達の元カノから聞いた言葉で、彼女が浮気をした理由を正当化するためのものだった。
彼女がその文脈で何を言いたかったのかは理解できないが、その言葉はそれ以来僕の心に引っかかっている。
羽化
今回のさめほし先生の個展のテーマは「うまれかわり」。文字通りの意味ではなく、肉体を変えて再出発する、つまり変身して生まれ変わるという意味だと思う。
6枚の絵はどれもこのテーマを鮮やかに伝えているが、その中でも特に印象に残った3枚についてお話したい。
羽化
展覧会のタイトルにもなっているこの絵は、6点の中で最も大きい。
この絵で目を引いたのは、手の存在だ。さめほし先生の作品に手が描かれているのはかなり珍しい。
知り合いの画家から、手を描くのに苦労したと聞いたことがある。「"手"は関節が狭い範囲に集中しているだけでなく、表情も豊かだ。手の描き方でイラストの意味がまったく変わってしまう」と言われた。
とはいえ、さめほし先生の手の描き方は、対象がサナギから出たばかりであることをはっきりと示している。呼吸をはっきりさせるために、オリフィスからネバネバを取り除く。
羽化___2
右側の色違いの物体は、おそらく前の絵と同じ対象の羽のようだ。タイトルがそう言っていないかのように、この絵は直接の続編である。
翅はまだ濡れているようで、サナギから出てきたばかりのような感じをさらに喚起させる。
絵のタイトルを見なくても気づくような、連続性のある感覚が好きだ。
夜明け
この絵は今回の個展の中で一番好きだ。
淡い色の対象と暗い背景のコントラストが際立っている。さめほし先生の絵は、背景が暗いことはほとんどない。でも、一番目立つのは被写体の目だ。綺麗なオレンジ色に輝いている。
この2つを合わせると、この絵の時間軸は夜明けの薄明かりの中ということになる。
でもそれがまさにタイトル通りですね。
この場合の夜明けは、対象の新しい人生の夜明けとも解釈できる。翼を広げ、変身後の新しい人生を飛翔し始める準備をしているこの絵からは、希望に満ちたメッセージが感じられるだろう。
後書き
この個展は2024年10月5日から10月25日まで銀座 蔦屋書店で開催された。
これを掲載している時点では、本日が最終日です。まだご覧になっていない方は、ぜひご覧ください。
いつ、どのようにしてさめほし先生の作品を知ったのかはよく覚えていないけど、大学で「芸術鑑賞」という科目を履修していた頃に見つけたことは覚えている。
選択科目で、それほど重要なものではなかったが、数少ない真面目に取り組んでいた学生の一人だった。
もちろん、以前からアートは好きだった。でも、その授業を受けて初めてアートをじっくりと見るようになった。美術分析の専門家とはほど遠いことも自覚しているけど、なんかをじっくりと吟味し、考えすぎるのもまた楽しい趣味なのかもしれない。
さめほし先生の絵は、いつも息が詰まりそうになる。一言で言えば、息をのむほど美しい。
あるインタビューでさめほし先生がおっしゃった「可愛いものは壊れようが崩れようがバラバラになろうが可愛い」という言葉が、僕の芯に響き、潜在意識に刻み込まれているのだと思う。
つまり、サイバニーはさめほし先生が大好きだ。