基礎自治体訪問記3.熱海市〔令和2年4月10日(金)〕
伊豆半島東側付け根部分に位置し、相模湾に面し、神奈川県湯河原町と接する。ほとんどが丘陵で、急勾配の道路が多く、市街地中心部のほとんどは埋め立て地。別荘や住宅地が高台に建つ。人口3万6千人。
地形上、洪水リスクは小さく、冠水リスクはほぼゼロ。地盤は固く、大災害の経験はない。防災の焦点は土砂災害。
市庁舎の4階に、危機管理室、通信室、作戦室等がコンパクトにまとめられ、使いやすい配置になっている。
主として、市役所内での連携(業務実施要領)について、お話しを伺ったが、どこの役所や企業などにも通じる話であった。
市役所内の連携は、非常勤務態勢の配備計画に基づいて、部課長が任務を各人に付与し、更新時に自分の役割を確認する。一般職員は、年に1~2回の地域防災訓練に参加するだけで、危機管理に関する研修はなく、「マニュアルを読んでくれ」という程度。
3~5年ごとに人事異動があるので、役所内の業務を横断的に理解して連携するのは苦労するが、人事異動で理解が進むのも事実。他部署との連携が不可欠だが、危機管理の恒常業務は「お願いする業務だ」というのは、言い得て妙。
隣接する神奈川県湯河原町とは、消防、下水道、災害ゴミの処理等の部署毎、業務の必要に応じて、広域連携を図っている。
市民には7日分の食料や水の備蓄をお願いしていて、市は、個人用には備蓄しない。避難所用のアルファ米などは、不公平にならないよう同一のものを配布し、消費期限前に訓練で使用している。被災時のプッシュ型の追送に期待している。
要支援者は、民生委員を通じて把握している。熱海市の高齢化率は50%近くであり、正確な把握は課題。各避難所は、①自治会、②学校長、③班長(市職員)の三者で運営されている。バリアフリー化は、施設管理者である学校に任されていて、進んでいない。
定住者と別荘利用者の区別はせず、災害時、別荘に残る帰宅困難者を支援する。
今後、防災の施策上の重点は、83個の自主防災組織の訓練を充実し、自助と共助を普及することや避難レベルを周知することなどだが、最近は、マンション等、町内会に所属していない世帯が増えていて、自主防災組織の充実にも課題が出てきている。