やさしい家の理由
一歩足を踏み入れると、やさしい空気に包まれるような家に出会った。
場所はロサンゼルス郊外のマリブ。
海辺に建つ元建築家の自邸は、最高の心地よさを追求したようにも思えて、
その理由はどこにあるのかと思いながら、じっくり見学させていただいた。
やさしい空気の理由は、カーペットにあった。
玄関ドアを開けると、半円を描いたような広いリビングが広がり、
一面にベージュのカーペットが敷き詰められていた。
海を眺める最高のロケーションと、心地よい自然光、そしてカーペット。
ふわっとした足裏からの感触が、靴を超えて伝わってくる。
心地よさや安心感、懐かしさ、床材の違いによる微妙な温度など、
私たちは多くの情報を足裏の感触で無意識に感じ取っている。
足裏の感覚神経は「体性感覚」といい、
皮膚・筋肉・腱・関節にある受容器からさまざまな感覚を脳に伝えている。
足を一歩踏み入れたとたん、やさしい空気に包まれたのは、
足裏に備わった空間を感じとるための重要なセンサーに触れたからだと思う。
カーペットは人にリラックスを与える、という研究もある。
これからの季節には、素足で過ごす寝室やリビングに、
ラグマットをプラスするだけでも良いと思う。
ちなみに、
カーペットのメンテナンス性が心配な方には「ウール」がおすすめ。
天然繊維であるウールの良さは、繊維表面で水分を弾く性質があるところ。
汚れが内部まで浸み込むのに時間がかかるため、他と比べて汚れがつきにくい。
土足文化であってもカーペット、という選択を可能にしたのは、
素材選びもその役割の一端を担っていたい違いない。
健康的な暮らしにとって、リラックスは重要だ。
元建築家が選んだ自宅の仕様に、
リラックスをもたらす、やさしい家のヒントを得たように思う。