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【こだわりの習慣】
何年もまえの夏休みのことでした。
先に帰省していた家族を迎えに妻の実家に行きました。妻と夏休みが合わず、その年も金曜日の仕事終りから夜の北陸道を金沢まで走りました。
土曜日は義父母と家族5人でご馳走を食べ、日曜日のお昼前にお土産をたくさん頂いて家に帰る。そんな何度も繰り返してきた帰省のはずでした。
「ぼくはひとりで残る」
小2の息子のひとことにおじいちゃんおばあちゃんは大喜びし、「1週間後に迎えに来るよ」と言って私と妻は自宅に向けて車を走らせました。
焼き肉屋でゆっくり晩ごはんを食べて、自宅に着いた報告の電話を掛けた妻が困った顔をしてこっちを見た。
「やっぱり無理だって」
磁器の人形が怖くなって家に帰りたいと言ってきかないという。
目が光って睨むと言う
わかる。
確かに目が光りそうな人形はたくさんいた。
わかるが金沢は遠い。
妻は仕事を休めそうになかったので、私ひとりで妻の実家に迎えに行くことにした。
車の運転も飽きてきたので「特急はくたか」で日帰りすることになった。
1日ぶりに妻の実家にひとりで着いた。
特に新しい話題もなく、長居する時間もなく、お茶をのみお礼とお詫びをしてタクシーを呼んで貰った。玄関先でお別れの挨拶をした。
何故かタクシーは2台来た。
あぁ駅まで見送ってくれるのかな?
駅について改札前でお礼とお別れをした。
すでに入場券を買っていた義父母はまだ発車まで時間が有るからと一緒に待合室に入り、5分前だからとホームでお別れを言ったが一緒に車内に乗り込んできた。
「さびしいさびしい」と言い続けた義父母は、電車が発車してもホームを追いかけてきて手を振ってくれた。
衝撃だった。
なにしろ初めてだった。
車内に乗り込んできてお見送りされるなんて思いもしなかった。
もちろん孫を見送るおじいちゃんおばあちゃんなので私は添え物なのだが、恥ずかしかったし嬉しかった。
恐る恐る息子に「いつも見送りは車内まで来てくれるの?」と訊くと「いつもだよ」と返事があった。
去年の夏、義母が亡くなった。
義父の三回忌のあとみんなで温泉に行く約束をした次の週だった。
葬儀のあと息子は先に帰ると言い始めた。
何かと過敏な息子を送って駅まで一緒に行った。
入場券を買って待合室に入って北陸新幹線の入線をまった。指定席に座った息子に妻といっしょにホームから手を振った。