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コロナ禍における「音楽」

コロナ禍に散々振り回された2020年における現代社会を背景に溜まる一方の心理的ストレス。こんな状況の中、私達に「今、出来ること。」はあるのかー。京都精華大学教授で環境音楽、サウンドスケープ論の権威である小松正史氏へのインタビューを筆頭に「音」の知られざる「可能性」に迫る。

画像提供:小松正史氏

[「四面楚歌」?]

 2019年年末に中国の武漢にて発生したとされる新型コロナウイルス、通称「COVIDー19」は今や世界に広まり、感染者76,289,042人死者1,685,526人となり我が国日本でも22万人の感染者と2916人の死者を出している。[2020年12月21日現在]こんな状況の中私達にも悪影響がないわけが無く、長期間に渡り外出自粛を余儀なくされた人もいるだろう。
 このような環境に長期間おかれると様々な心理的ストレスを負う人もいるかも知れない。私達に何か出来ることがあるのか。
 心理的ストレスの抑制法としてもよく用いられる「サウンドスケープ」について書いていきたい。
 

[「サウンドスケープ論」とは]

まず始めに、「サウンドスケープ論」とは具体的にどんなことなのか伺ってみた。


ーー:「サウンドスケープ論」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

小松正史氏:サウンドスケープ論ってと言うのは日本語では音の風景と呼ばれています。音を聞くときには自然と目も動いてるし匂いも感じてるので、五感の一つで音を聞いている訳ですよね。音を取り上げると言うよりも、音と視覚とか音と匂いとか音と記憶とか、音と何かを合わせることを意識して音を感じて発信したりするような活動をサウンドスケープって言います。

ーー:環境音楽という言い方もすると思うのですがサウンドスケープとの違いは何でしょうか。

小松正史氏:サウンドスケープの中のに環境音楽あると言う認識がですね。と言うのはサウンドスケープとはジャンルとか音楽の種類とかって言う物じゃ無くて、音と視覚などをセットで捉えるだけと言うことです。つまりサウンドスケープという概念を使って環境音楽という音楽を使っているん制作していると言う認識ですね。

ーー:ヒーリングミュージックというモノもあると聞いたことがあるのですが。

小松正史氏:サウンドスケープというのは概念に過ぎないですね。

ーー:と言うことはサウンドスケープと言う概念を応用して実用化したのがヒーリングミュージックと言うことでしょうか?

小松正史氏:そうですね。


 「環境音楽」と言うものも聞き覚えが無い読者のため「ヒーリングミュージック」を含めた関係図を下に載せておく。

インタビューを元に筆者作成


[コロナ禍における「サウンドスケープ論」]
 精神的ストレスに対し治癒効果のあるとされるヒーリングミュージックについても聞いてみた。


ーーコロナ禍においてヒーリングミュージックはどれほど通用するのでしょうか。

小松正史:音って聞こえたらすぐに気持ち良くなったりすると言う心理現象が発生するので、ネガティブな状態が続いた時に自分の好きな曲とか、音楽とかを事前に選んでおいて気分を変えると言うやり方はあるのかなと思いますね。しかもサウンドスケープで話を言うと、音だけで終わるんじゃなくて音を聞くと風景が見えてきたり、昔の記憶が蘇ったりと言うことはありますよね。そして映り込んでくる音が脳に入り込んでくる現象のは絶対的ではなく、その人それぞれです。なので、この曲を聞いたらこれが映り込んでくる思い出されるパターンを仕込んでおい、、使っていくとサウンドスケープのあり方と言うのがコロナ禍でも利用できるのでは無いだろうかと思います。

ーー:医療従事者の方々のリフレッシュにも使えるでしょうか。

小松正史氏:医療系って凄く神経を使って、呼吸が浅くなることも多いと思うんですよ。その時大事なのは自分の呼吸を感じることとか、この辺りを意識できる曲の聞き方をすればリフレッシュと言うか、ネガティブ感はある程度無くなるんじゃ無いですかね。


 此処まで聞いてみて「サウンドスケープ」と言うものに更に興味が湧いた筆者はもう少し深堀りして尋ねてみることにした。


[これだけでない!「サウンドスケープ」の世界]
サウンドスケープに限界は存在するのか。思い切って聞いてみた。


ーー:精神医療の現場にてサウンドスケープを利用出来たりしますか?

小松正史氏:例をあげるならば、認知療法と言うのが心療内科にありますね。認知療法って言うのは何かしらの影響を本人に与えて自分の状況を確認させるという治療法で、これにサウンドスケープが利用されることがありますね。精神的につらい目に遭った人に、その人が安らげる音を聞かせることによって、心理的なネガティブ感を少しずつ改良していった例が多くあります。荒療治になりすぎるのはよくないですが、ほどよいタイミングでその人にマッチする音を提供することは、効果が期待できると思います。


 状況さえ合えばどんなことでも出来てしまうとのこと。これはとんでもなく凄いことではないだろうか。

[「今、出来ること」とは]
 新型コロナウイルス発生から1年が経とうとしているが、未だウイルスの脅威は増すばかりだ。そんな中私達に出来ることは何かあるのか。勿論自分の好きな音楽を聴くことで精神的ストレスが緩和されることもあるだろう。だがそれは本当に効果的なのだろうか。

 実のところ、筆者も試してみるまでは本当に半信半疑だった。しかしいざヒーリングミュージックを聴いてみると、驚くほどに安らいでしまう。そして、眠くなってしまう。しかし、ここで一つだけ注意していただきたいことがある。ケーブル付きイヤホン使って聴きながら眠ってしまうとケーブルが首にかまり付いて窒息してしまう危険があるということだ。筆者も昨晩ケーブル付きイヤホンでヒーリングミュージックを聴きながら眠ってしまったのだが今朝目が覚めるとケーブルが首にかまりついていたので背筋がゾッとした。なのでイヤホンを使って聴く際はケーブルが無いワイヤレスタイプのイヤホンを使用することをオススメする。

 我らが人類に、小さき安寧のあらんことを。


[参考文献]

小松正史著『人と空間が生きる音デザイン

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