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アグー 人を見初める

「アグー 見てごらん、今日も観音さんは人々の往来を見守ってるよ」
「紅葉に彩られて青空に映えとるな〜」
はて、琵琶の音は? 聴こえない。「オイラ、琵琶はベンベンかき鳴らすより、蝶が羽ばたくみたいんが好きさ」
「へえ〜、アグーがね〜」
「なんか響き合っとる感じするじゃん」

自然と 神仏と 森羅万象と 響き合うそんな音が琵琶で奏でられないか、そこに人の声が乗せられないか、
そんな想いを抱いて遊歩、
ほっつき歩いて人がいる。
「オイラ 会ったんだ!」
「誰に? どこで?」
「高野山で。あぐ〜が阿字観やってる時、すれ違ったんだ」
「なぜそれが琵琶唄の人だって?」
「匂いだよ、匂い、琵琶の香り」
「枇杷じゃあるまいし、匂いか?」
「オイラな〜、なんか後をついてきたくなっちゃった!」
「あぐ〜、オイラな、高野山のえらい坊さんみたいな肩肘張ったのはダメ、オイラにも分かる言葉で話してくれる…」
「それがその人だっていうんか?」「うん、オイラも阿字観修行したい。あぐ〜とは違ったやり方で」
「アグーが修行か」
「どうしたらまた会えるんだろ?」


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