「知多に薔薇を咲かせた夏 2024」前篇 サヘル・ローズ講演より
生き残った“語り部”として
年がら年中、仕事に東奔西走して大忙しのサヘルさん。中でも、二十代からずっと続けている日本各地での講演活動は、今や彼女にとってかけがえのないライフワークとなっています。
毎回、“瘡蓋(かさぶた)を剝がすような痛み”を伴いながら自身の生い立ちを振り返り、戦争体験や孤児院での生活、来日してからの辛酸を語り続けるのは、ひとえに平和を願うメッセージを、一人でも多くの人々に届けるため。
今年の夏、そんなサヘルさんの想いに呼応して、愛知県立阿久比(あぐい)高等学校の有志が中心となり、講演&パネルディスカッション〈出会いこそ、生きる力——高校生と考える。人と人とのつながり〉を主催しました。その団体名も「知多に薔薇を咲かせる会」、なんとも詩的で美しいネーミングですね!
それでは、2024年8月16日(金)に東海市芸術劇場大ホールで行われ、サヘルさんと高校生たちが熱心に意見を交わしたディスカッションの模様を、前篇・後編を通してお伝えします。
次世代へ平和のタスキを渡すために
「この日のために、高校生たちが半年近く前から、入念に準備をしてくれました。細かいやりとりを重ねながら、Tシャツのオリジナルデザインを約50通りも一緒に考えたり、暑い中でも街中でチラシを配ったり、毎日SNSを工夫しながら発信したり……。未来を担う若い彼らが、それこそ全身全霊で、今日という一日を作ってくれたのです」
講演の冒頭で、まずサヘルさんが聴衆の方々に向かって語ったのは、高校生有志へのねぎらいの言葉。
「ここに集まってくださった皆さんの存在は、彼らにとっても大きな励みになっています。こうやって一つのアクションを具体的に起こすことで、ちゃんと社会に対してメッセージや想いを伝えられる場になった。開催までの道のりは大変だったでしょうが、これから先、自ら行動を起こす大きな勇気にもなったと思うんです」
「私がいつも考えているのは、『平和な未来をつくるために、次の世代を生きる若い人たちへ、どうタスキを渡せばいいのか』ということ。前半の講演では、自分の半生を通して皆さんに共有したい言葉を紡いでいきますが、後半では高校生とのディスカッションをします。『若いから何も考えていない』のではなくて、逆に『彼らがどんなことを考え、言葉にしていくのか』を見ていただけたら。そういう意味で、ぜひ皆さんも一員となり、ディスカッションに参加してほしいと願っています」
<後編へ続く>