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死んだあとも心配だ。

わたしは自他ともに認めるお父さんっ子で、右か左か、はたまた止まれの判断に困ったときなど、「父ならどうするだろうか」と考えることが少なくありません。

学校が嫌なら辞めてもいいぞ。だけどな、辞める前に理由をちゃんと言葉にしてお父ちゃんを納得させてみろ。

あやが帰ってくるといつも二日酔いだ。また飲み過ぎだ。

もう大人なんだから、リュックを背負うのはやめろ。うしろからチャックを開けられて財布盗られても気づかねぇぞ。

アメリカに行きたいだぁ?相談めかして実はもう決まってんだろ。事後報告ばかりだと叱りつづけてきたからな。これは事後承諾っていうもんだべ。

今日は地下鉄に乗るな、バスに乗るか、歩けるなら会社から歩いて帰れ。今日だけはお父ちゃんの言うことを聞け!(地下鉄サリン事件当日に)

自分がそう思うなら、いつまでも給料取りじゃなく自分でやればいい。

これから自分で事業を興すなら、ペン1本、紙1枚を自分で買うことになるんだぞ。親を温泉に招待してる場合じゃねーぞ。頼まれても俺は行かんぞ。

金なら心配するな。病気の原因が過労とストレスっていうならゆっくり休め。東京のマンションの家賃はお父ちゃんが出しとくから心配するな。金もストレスのひとつになるぞ。こういう時は親に頼っていいぞ。

いいことも悪いこともぜんぶ報告してくれよ。嘘はつくな。

みんな仲良くやってくれ。和をもって尊しとなす、これが最後に伝えたいことだ。

もっともっと、父から授けられた言葉は山ほどたくさんあるけれど、その中で今もわたしの芯に一番残っているのは、結婚をしたいと夫を連れて帰郷した時のこと。

父も母も、夫のことをすぐに好ましく思い、どうぞよろしく、、、な感じだったけれど、翌日、母がこんなことを言うのでした。

お父さんね、すごく喜んでるけど、すごく心配もしてるのよ。東京の人で、しかも長男で、ご親戚がほぼ全員東京の人たちの中で、あやがうまくやっていけるのかな、って。おれが生きている間は、なにかあったら出ていけるけど、死んだらその先は何もしてやれない、って。

いやいやいや、お父さんったら死んだ先のことまで心配してるなんて、そんなのだいじょうぶだよ。うまくいかない時がきたら、その時はその時で考えて、自分で何とかするから大丈夫だよ。

そう笑うわたしに母はキッとして

笑うところじゃないでしょ。死んだ先まであやちゃんのことを心配しているお父さんの気持を思いなさい!

四半世紀以上経ったいまも、そのシーンを思い出す。わたしがグラつきそうになったとき、あのシーンを思い出すとたいていのことはクリアになる。

死んだ先もわたしのことを心配している父がいる。死んだあとからも、父はずっとわたしに応援を送り続けている。

そう思うと、がんばれるし、がんばらない日々なんてアホだと自分に発破をかけている。嫌なことや嫌の人を考えているほど、わたしはヒマではないのだと。

父からのエールに応えるように、今日も一日がんばりました。まる。



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