ありがとうの行ったり来たり。
横断歩道で待っている人がいれば、必ず止まる。
対向車が止まらずギクシャクする時もあるけれど、だいじょうぶ。何台か通り過ぎたあとには止まる車がやって来るから。自分のうしろでプチ渋滞が起きても、だいじょうぶ。次に来る対向車が止まれば一気に解消するから。
そうして、歩行者と何台目かの対向車とわたしが、それぞれ目で「ありがとう」を交わす時が好き。
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コンビニのレジで
東京のバスを降りる時とか
顔なじみのラーメン屋さんでも
ありがとう
ごちそうさまを伝える。
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もうずっとずっと前のこと。もう時効だから言ってもいいと思うけど。出張で京都に行ったとき、のちに夫が合流して、それから先はさしずめ観光旅行と化したあの日のこと。夫のリクエストで仁和寺を回り、市内バス周遊券を使って鞍馬まで行った時のこと。
ら。
鞍馬は市内バス周遊券の範囲外で、追加料金を払わねばならなかった。降りる寸前にそのことに気付き、夫とふたり財布を出すなどまごまごしてたら運転手さんが「ご乗車ありがとうございます。今日はいい天気ですね」とニッコリ笑って、追加料金は要りませんと... 。
バスの運行状況が遅れるほどのまごまごっぷりではなかったし、金欠気味のバックパッカーには見えなかったと思うけど、運転手さんはまるで「鞍馬を、京都を楽しんで」と言わんばかりに、追加料金を取らずわたしたちを降ろした。
バスに向かい腰を折ってお辞儀をするわたしに、パォーン♪と高い音を鳴らしながら去っていった。いまでもその音を覚えてる。
ありがとうっていいな。