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新ホムンクルスから学ぶ本当の一次運動野

どうも、サギョウ先生です!

今回は、少し前に話題になりました、「新しいホムンクルス」についてです!

セラピストであれば一度は目にしたあのホムンクルスが、2023年に発表された論文で、生まれ変わったのです✨

てことで、今回は「 A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex」を読んで得られた知見や感想を書いていきたいと思います!

ちなみにFREE記事なので以下⬇️から読むことができますよ😆

本題に入る前に、僕の思いを聞いてください🙇‍♂️


僕は作業療法が大好きでして、特に対象者の「ひととなり(ナラティブ)」を意識して、心から身体を変えていくという点が好きです!

一方で、臨床や学校教育の中で、ナラティブに目が行きすぎてメカニズムやエビデンスに弱い部分も感じていました、、、

そこで、作業療法士がナラティブだけでなく、科学的なメカニズムやエビデンスを身につけるための一助となるように情報発信を始めました!

「自分の介入に自信がない」「他職種の話についていけない」「患者さんに説明できない」と感じてる作業療法士はぜひ僕と一緒に勉強していきましょう🦍🔥


では、本題にいきましょ〜う!


概要

リハビリテーションの現場で僕たち作業療法士・理学療法士は、脳損傷後の運動機能回復を支援する上で、脳の運動制御メカニズムを深く理解することが不可欠です☝️

これまで一次運動野(M1)の機能局在については、ペンフィールドのホムンクルスが広く知られてきました。しかし、近年の神経科学の進歩により、この古典的なモデルだけでは説明できないM1の複雑な機能が明らかになったようです✨

この論文では、最新の研究で示された「インターエフェクター領域:inter-effector regions」と「SCAN:somato-cognitive action network」という新しい概念などをもとに、運動野における「統合-分離モデル」について解説しています。

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

OT・PTであれば一度は聞いたことがある「あのホムンクルス」が、新しくなったと聞いて度肝を抜かれたというのが一番の理由です💦

「ホムンクルスが新しくなったってよ」と言われた時の僕の顔

そりゃ医療業界ですもん、常に新しくなりますよね(笑)

しかも、概要を読んだら、

え?インター・・・え?なんて?
SCAN?プリンターかなんかですか?

それはもう動揺が隠せませんでした🤯

これは、脳卒中専門でリハビリを行なっているセラピストであれば「知らねば!!!」と思い読むことを決意しました。
(論文のページ数が多くて避けてたことは秘密です🤫)

そしてこれだけは伝えたいのですが、最新の論文は画像がウルトラ綺麗🤩

この記事でも画像を多用するので綺麗さも合わせてご覧ください←誰(笑)

ホムンクルスとは?

元々のホムンクルスを知らない方もいるかと思いますので、簡単に説明します。

「ホムンクルス」とは、脳の一次運動野(M1)と一次体性感覚野(S1)における体部位のマッピングを示すモデルでして、1930年代に神経外科医ワイルダー・ペンフィールドが患者の脳を直接刺激することで作成しました🧠

(覚醒下で直接脳に刺激ですよ・・・)

このモデルは、脳の特定の部分が体の特定の部位の動きを制御していることを視覚的に示しており、脳の中に小さな人形が座っているようなイメージで描かれています。

この図は、長い間、神経科学や医学の基礎として広く認知されていますね🗺️

新旧ホムンクルスの違い

さて、新旧のホムンクルスを比較していきましょう!

旧ホムンクルス Ver.1948

ペンフィールドのホムンクルスでは、M1において各体部位の動きを司る領域が連続的に並んでいます🧠

例えば、顔、手、足などが脳内で順に並んでいるとされ、この連続的な配置が体部位のマッピングを示しています。

脳が各体部位を個別に制御していることを明確に示していて、特定の部位の損傷がどんな影響を及ぼすかを予測するのに役立ちますね👄🖐️🦶

というか今でもこの領域で、症状を予測するセラピストも多いのではないでしょうか🤔(僕もつい最近までそうでした)

新ホムンクルス Ver.2023

最近の研究で、高精度なfMRIを用いてM1の構造が再検証され、もっと複雑であることが明らかになりました!

いや、技術ってすっごい😳!!!

新ホムンクルスでは、これまでと同様の効果器特異的領域(手、足、口)と新たに発見された「インターエフェクター領域」が交互に配置されていることが示されています👀(上図の操り人形みたいなところです)

従来の連続的な体部位のマッピングとは異なり、より複雑で機能的な構造を持っているようです!(後程詳しく解説します)

新ホムンクルスによると、M1は単に各体部位を個別に制御するだけでなく、全身の協調運動や姿勢の調整にも関与していることが分かってきました☝️

次の項目で、新ホムンクルスで分かったM1の機能について解説していきます🫡

統合-分離モデル(M1の2つの機能)

新ホムンクルスは、「統合-分離モデル」という理論に基づいています!

これは、M1が異なる機能を持つ領域によって構成されていることを強調しています。簡単に言うと、体の動きを一緒にコントロールする「統合」と、特定の動きを細かくコントロールする「分離」があるということです👍

  • 分離:「効果器特異的領域」→特定の体の部位の細かい動きを専門的に制御

  • 統合:「インターエフェクター領域」→ 行動計画や全体的な運動制御に関与

ここでは、イメージがしやすい「分離」を解説しますね。

分離:効果器特異的領域とは?

分離は、特定の体部位の精密な運動を制御する機能、つまり、これまでのイメージ通りの機能ですね☝️

「効果器特異的領域」がこの役割を担っており、手、足、口などの特定の体部位に対応します🖐️🦶👄

関係ないけど、「領域展開」みたいでカッコいいですよね(笑)

さて、話を戻しまして(冷たい視線を感じます…)

効果器特異的領域は、それぞれの体部位の動きを細かく調整し、複雑な動作を可能にします。

具体的には、指の細かい動きや舌の動きなどが含まれまして、これらの領域は、高度に専門化されており、特定の効果器に対する細かい運動制御を行います。

例えば、手の効果器特異的領域は、手の微細な動きや力の調整を担当し、ピアノ演奏などの繊細な指の動きを可能にし🎹、口の効果器特異的領域は、舌の動きや発音を可能にします🗣️

名前はめちゃくちゃカッコいいですが、ここまでの内容に関しては今までとと同様なので、予想の範囲内だと思います!

さて、次の「統合:インターエフェクター領域」について解説していきます!

インターエフェクター領域とは?

インターエフェクター領域は、全身の協調運動や姿勢の調整を担っていて、これが「統合」ということになります!

例えば、歩くときに手と足をバランスよく動かすような全身の大きな動きをスムーズに行うための調整をしています。

このように、インターエフェクター領域は、全身の動きを統合して、複数の筋肉群が協調して働くようです。また、運動の計画段階から実行段階まで広く関与しており、全身の運動制御において重要な役割を果たしています🫡✨

このインターエフェクター領域は、新ホムンクルスの中心的な部分ですね!

効果器特異的領域の間に位置していて、細かな運動を必要としない粗大な運動時や運動計画の段階に活動が高かった(上図)とのことです💪

インターエフェクター領域は脳内の様々な関連領域と密接に関連しており、体性認知行動ネットワーク(SCAN)を構成しています🧠

これについて、次に解説していきますね!

SCANという新しい考え方

SCAN(体性認知行動ネットワーク)は、新ホムンクルスで重要な役割を果たすネットワークです🤝

SCANは、インタエフェクター領域を含む様々な領域から構成され、全身の運動制御と認知機能を統合する役割を果たし、複雑な動作や姿勢の調整を可能にします🏃‍♀️

SCANの構成領域

SCANは、インターエフェクター領域、補足運動野(SMA)、視床(特にVim、CM核)、後部被殻、小脳(虫部、外側小葉Ⅴ区、小葉Ⅶb、小葉Ⅷa)から構成されています🧠

CONとの結合

SCANは、帯状皮質-弁蓋部ネットワーク(CON)と強く結合しています🤝

CONは、目標志向的行動の計画やエラー処理、注意の維持、生理的制御に関与していて、SCANとCONが協調して働くことで、全身の運動制御が実現されています☝️

ちなみにCONは、以下の領域から構成されると示唆されます。

・背側前帯状皮質 (dACC)
・背内側前頭前皮質 (dmPFC)
・前部島 (aI)
・縁上回 (SMG)
・帯状回の辺縁部 (pars marginalis of the cingulate gyrus)
・前部前頭皮質 (aPFC)

SCANとCONが協力して働くことで、全身の運動制御と認知機能が統合され、複雑な動作や姿勢の調整が可能になります。

例えば、スポーツのプレイ中に、戦略的な判断を下しながら、全身の動きをスムーズに行うことができます🏃‍♀️💭

これにより、運動と認知の両方が連携して働くことが可能となります💡

SCANの役割

ここまでの解説のように、SCAN(特にインターエフェクター領域)はCONと連携することにより、運動の計画や実行に関与することが可能となります。

具体的には⬇️
・SMAは運動の計画や実行に関与
・視床は感覚情報の中継と運動制御に関与
・後部被殻は運動の調整と学習に関与
・小脳は運動のタイミングと精度の調整に関与

ここに加えて、CONから目標志向的行動の計画、エラー処理、注意の集中、生理的制御を受け取ることで、運動の計画(認知)と制御(体性・行動)の役割を担っているとうことになります!

これらの協働的な活動の間を取り持っているのが、今回の大発見であるインターエフェクター領域ということになります✨

これらの領域が協力して働くことで、全身の動きをスムーズに行うための調整が可能となります!!!

インターエフェクター領域と効果器特異的領域の違い

最後にインターエフェクター領域と効果器特異的領域の違いに触れて終わりたいと思います。

図のように効果器特異的領域(左図:図は手指の領域)はS1にまで及んでおり、巧緻動作の生成に重要な役割を果たしています!

例えば、手の領域は手指の細かい動作🖐️を、足の領域は歩行や足の動き🦵を、口の領域は顔や口の動き👄を制御しています☝️

一方で、インターエフェクター領域は、S1との結合が弱く、主に固有感覚に関連する中心溝の底(3a)に結合が見られますが、皮膚触覚刺激に関与する中心後回(3b、1、2)には及びません🙅

このことから、インターエフェクター領域は、個々の動作の生成よりも、複雑な運動計画や全身の調整に特化していることが分かりますね🤔

まとめと学び

はい、ということで今回は、新ホムンクルスを提唱した「A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex」を読んでまとめてみました!

いや〜改めて、最新の技術の発展に驚きつつ、常に新しい情報を入手していかないといけないということを痛感しました😅

個人的に驚いた内容としては、やはり「インターエフェクター領域」とそれが形成する「SCAN」です😳✨

まさか、M1は運動制御だけでなく、運動の計画(特に目標思考的行動の計画)にも関与していたなんて!

でも、今回の知見によって、「あれはやっぱりそうだったのか!」と思っていたことの辻褄が合う部分が出てきました。

例えば、「M1の損傷なのに巧緻動作がめっちゃ上手い」「M1で運動の発現ができなくなった(PMdのような症状)」「麻痺側と同側の体幹機能も低下した」などの症例です。

もちろん他の要因もとても多くありますが、一つ考察の可能性が広がったかと思います👍

知っているのと、知らないのとでは大きな差ができそうですね🤔

作業療法士は、これらの新しい知見をリハビリテーションの現場に統合していく必要がありまよね!

すぐに思いつく例としては、M1損傷だからといって、闇雲に随意運動(今回でいうところの分離:効果器特異的領域)に対するアプローチのみを提供するのは危険かもしれません😨

インターエフェクター領域やSCANの機能を考慮したアプローチも重要になる可能性がありますね💡

そして、読んでいて改めて感じたのは「課題指向型アプローチ」や「CI療法」ってそりゃ理にかなってるわ!!!!です。

効果器特異的領域だけでなく、インターエフェクター領域やSCAN(もっと言えばCON)の要素までカバーしてますやん!!!

CI療法ってなんそれ?って人はこちらをご覧ください⬇️

ふ〜
少し落ち着いたところで

長くなりましたが、今回の発見は神経リハビリテーションや運動障害の治療に新しい視点を提供し、運動皮質の機能に関する理解を深めるものです!

今後の研究でもまだまだ解明されていないことはたくさんさるとのことです(どれだけ深いねん脳って)ので、これらの領域の詳細な機能と相互作用がさらに解明されることが期待して待ちましょう😊

新しい知見を取り入れながら、患者様のより良い人生をサポート
していきましょう!

では、また!🦍


参考文献

Gordon, E. M., & Dosenbach, N. U. F. et al. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature, 2023, 617, 351-359.

後藤昇,後藤潤:脳機能局在.リハビリテーション医学,38(4):296-302,2001

D'Andrea, C. B., Gordon, E. M., et al.Substructure of the brain’s Cingulo-Opercular network. bioRxiv, 2023.

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